表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『レインメーカー』  作者: 新開 水留
8/9

[8]

『拝み屋集団・天正堂三神派、三神三歳の日記』


 

 某月某日、雨。

 昨晩は一睡もできず、昔のよしみを頼んで本部団体(おそらく天正堂本部)から人を派遣してもらった。もちろん、私にではなくUの家にである。ひとまずUにも断りを入れて監視を付け、こちらの体調を整え次第、事にあたりたいと思う。

 実を言えば「振動する家」には以前にも遭遇した事がある。二十年近く前の事だと記憶しているが、その時は、信州信濃の山奥にある古式ゆかしい地元の大地主が住まうお屋敷だった。結論から言えば、その家に生まれ、当時十一歳となったばかりの当主の孫が原因だった。

 今風に言えば共感覚とでも呼ぶのか、その子は周囲から自閉症と見なされほとんど感情を表現することが出来ないとされていた。が、実際には外部からの刺激を受けて的確な感情表現が行えたばかりか、周囲からもたらされるストレスに対する適応処理の段階で、家全体が軋み鳴く程激しく家屋を振動させていたのである。つまり言葉を受けて言葉で返すのではなく、感情の揺らぎをそのまま霊能力として発動させて返していたのだ。その子にとってはそれが普通のことであり、決して喋れないわけでも感情がないわけでもなかった。霊感を持たない人間にはおよそ理解出来ない事態ではあったが、その家に問題があったわけでも、その孫に問題があったわけでもなかった。

 だが、おそらくUの家で起きている今回の事象は、それとは根本的に違う。私が見た限りでは、Uには霊感も霊能力も備わっていないからだ。何かを見落としている、としか思えない。初めてこの家に訪れ祓いを行った時も、それらしい反応はなにも返ってこなかったはずだ。しかし現状Uの身体に発現している頭痛などの症状も含めて、赤い痣、振動する家、それら一切に霊障以外の原因は考え辛い。

 こういう時。現世か、幽世か、その狭間を行ったり来たりするような事象を前にした時、私はいつも彼女を頼って来た。知識量や経験ではない。彼女と話をすることで、自分の内にある答えを指し示してもらっていたように思うのだ。よき相談相手であった。あれから十年が過ぎ去った今も、それは変わらない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ