4話
私は子供の頃から何故か霊感があり、いろんな経験をして来ましたが、皆のいる前でこういう現象が起こったのは初めてでした。
葉山さんの腕を思いっきり引っ張っている山村さん‥‥‥
恨みというものは、こうも人を変えてしまうのかと思うくらい、山村さんは凄い形相をしています。
葉山さんをあの世に連れて行こうとしてるんだな――
私はそう思いました。
正直、私もここまでのポルターガイスト、皆の前であの世に連れて行こうとする幽霊は初めて出会ったので、やはり怖かったです。
怯えて泣き叫ぶ葉山さん‥‥‥
「ごめんなさい。ごめんなさい」
何度も謝っていました。
―――私は山村さんに向かって声をかけてみました。
「山村さん、そんな事をしちゃダメ!生きている間、辛かった事や苦しかった事、私はその気持ちわかりますよ。でも、人を憎んだままだったら天国に行けない。それに葉山さんを連れて行ったりしたら、葉山さんを殺してしまう事になる。そんな事、山村さんの奥さんとお子さんが望んでいますか? 葉山さんも今回の事で十分反省していると思います。お願いです。止めて下さい」
そう言っている間、他の看護婦、看護士たちは―――
「橘さん、何を言ってるの? そこにいるって事!?」
「嘘でしょ?…」
すっかり怯えて腰を抜かして座り込んでしまっている人。
泣きわめいている人‥‥‥
皆、パニック状態でした。
後から聞いたのですが、私にだけ山村さんの姿が見えていたみたいで、葉山さんには山村さんの腕だ けが見えていたそうです。他の皆は、恐ろしさに驚愕して震えていました。
私に霊感がある事は誰にも話してなかったので、山村さんに向かって話しかけている姿を見て、尚更恐ろしかったと思います。
そして―――山村さんは私の言葉を聞いて、静かに消えていきました。