1話
これは筆者である私ー架空名「橘 美里」の体験したお話です。
私が20歳位の頃、小さな町のとある精神科で働いていました。
その病院は病棟数が5つに分けられており、普通病棟3棟、症状が重い患者さん用の病棟1棟、部屋がコンクリートで囲まれた保護室があり、結構な大きさの病院でした。
私は今まで働いていた個人病院を辞め、友達の誘いでここで働く事になったのです。
患者さんとのコミュミケーションも楽しく、毎日が充実していました。
働いている看護婦、看護士(男性)30人くらい。
あとで気づいたのですが、仕事に慣れて来た頃、この30人が2つに分かれ、対立していた事に気付いたのです。
その2つの派閥にはそれぞれリーダー的な存在がおり、Aのリーダーが葉山さん、Bのリーダーが小島さん。
私が仕事を覚えた頃にBのリーダー小島さんから、こちらの派閥に入らないか? と誘われました。
どういう経緯で2つに分かれて派閥争いになったかはわかりません。
私は、葉山さんからも小島さんからも良くしてもらっていたので、困ってしまいました。
なので、私は――
「争い事は嫌いなので、どちらにも着きません」とはっきり断ったのです。
すると、小島さんは――
「葉山さんと葉山に着いてる人達がどういう人間か、わかるようになるよ!自然とこちらに着く事になるから」
――と告げられたのです。
私は思った事ははっきりと言うタイプの人でした。
「そうですか」
そう言い、その場はしのげたのですが……
それからしばらくしてからの事です。
小島さんの派閥にいた山村さんが――
夜勤の時に普通病棟で窓の檻に長い紐を括り付けて、〝首つり自殺”をしていたのです。