怪奇・幻想・ゴシック・オカルト小説家としての芥川龍之介。 偏愛的 芥川龍之介論 改訂版
芥川龍之介、、、と言えば、、
教科書にも出てるくらいだから誰でも知ってる日本の短編小説家ですよね?
まあでも
教科書に出てるのは、、大体が
「羅生門」
「鼻」
「蜘蛛の糸」
「トロッコ」
「蜜柑」
などと相場は決まっていますよね。
これら以外の小説が教科書に取り上げられることは、、まず、、、、有りません。
ですが、私がこれからご紹介するのは、こんな文部省推薦?の小説ではなくて
もっとカルトで
ダークで
オカルトな
まあいわゆる「幻想小説」のジャンルです。
芥川は覚せい剤常習者でして
当時は合法だった「ヒロポン」を愛用していたことはよく知られています。
またEAポウやホフマンなどの怪奇小説の愛好家でもありました。
自分でホフマンの「悪魔の霊液」を訳そうとしたくらいですから
相当好きだったようですね。これは実現はしませんでしたが、、。
実際テオフィル・ゴーティエの吸血鬼小説『死霊の恋」を「クラリモンド」という邦題で自分で訳しています。
あるいは芥川自身、ドッペルゲンガーを見たことがあるそうですし
魔術とか
神秘系は相当好きだったようです。
さてそういう影響かどうかは定かではありませんが
彼は実に不気味な「幻想小説」をいくつも書いているのです。
ですが、、まあ、、これらはまず一般メディアに取り上げられることもなく
ましてや「教科書」などに採用されるハズもなく
知ってる人
読んだ人はごく少数だと思われます。
そこで不肖、わたくしが、今回そういうジャンルの
幻想作家
オカルト作家としての
芥川の小説のいくつかを紹介してみたいと思います
よろしかったらお付き合いくださいませ。
☆妖婆
行方不明の恋人を探すと、、なんと魔法使いの妖婆が、その娘を「霊媒」として使っていた。
その恋人を取り返す、、というオカルトダークファンタジーです。
オカルト描写がさえわたっていますね?
☆魔術
インド人の魔術家のもとを訪ねた私は「欲を捨てるなら魔術を教える」という提案に
したがい魔術を教えてもらう、一か月後、とある場所で友人たちに魔術で金貨を出して見せる、
金貨を手に取った友人は「これ本物じゃないか」と驚く、。
だが私はこれはすべて処分するよ。というともったいないじゃないか。と友人。
で、、トランプで、かけをして勝ったら処分しないことに。、
私は勝ち続けて最後の札にイカサマをして「キング」と言って札を出すと、そのキングがにやりと微笑んで「お客さんはお帰りになるよ」といったと思うと、、、すべてがふっと消え去り、、
私は、、、今さっきのインド人の家の部屋に、まだ、いた。
☆二つの手紙
これはドッペルガンガーのお話しです。たぶんホフマンやポーの影響だと思われますね。
ホフマンやポーにはしばしばドッペルゲンガーが登場しますから。
神経衰弱から自殺した芥川の神経消耗が暗示されている。
なお芥川は「ドッペルゲンゲル」と言ってと表現しています。
自分の分身を見ると死期が近いという、、ジンクス?
芥川も自分の死期(自殺)を予感していたのでしょうね?
主人公は妻の分身を見たり
妻と寝ている自分のドッペルゲンガーを見たり、、
そういうことを綿々と書き綴った手紙を警察に送った、、という形の小説になっています。
☆歯車
芥川自殺直前の神経衰弱現象というのか、、、
幻覚や
妄想
黄色いタクシー
モグラ
そしてギシギシ回る歯車のビジョン
などが綿々とつづられる、
こっちまでくるってしまいそうになる?
読むのが苦痛な?
暗澹たる妄想絵図ですね。
☆ある阿呆の一生
自殺後に見つかった遺作です
綿々と断章形式で、鬱と、不安と、漠然とした死の予感が綴られます。
正直、、読むのが苦痛です。
☆南京の基督
南京の娼婦、金花は梅毒にかかってしまう。「客に移せば治る」、、という俗信にも
敬虔なクリスチャンである金花は応じない。
ある日キリストに似た西洋人が来て金花を買った、金花はこの人はキリストだと信じて身を任せた。気が付くと、、西洋人は金も払わず立ち去った後だった。
だが金花はその後、すっかり梅毒が治ってしまったのである。
実は、、というオチが最後に、付くのだがそれは読者の皆さんご自分でお読みください。
ここではネタバレはしないでおきます。
☆杜子春
割と有名な作品ですよね。これは原話があります。原話では最後は杜子春が破滅して終わりですが、芥川版では救済されます。
☆点鬼簿
と、、ある男の回想、男の母は狂人だったという、おぼろな母の思い出とか
不思議な姉の話が綴られます。
☆偸盗
平安時代?を舞台に、登場人物は盗人です。
妖艶な娼婦、「阿濃」
肉食系の「沙金」などの魅惑的
な女性も登場します。
☆煙草と悪魔
いわゆる「キリシタン物」です。
たばこ伝来を悪魔が持ってきたというオカルトで描写しています。
☆邪宗門
地獄変の続編になります。平安時代、摩利信乃法師 という怪僧が邪宗を広めて
難病を次々治して、病気治療をします。
☆地獄変
平安時代、絵師の良秀は依頼された屏風絵を描くためにその迫真の描写のために
娘の牛車に火をつけてその焼死の様を迫真的に描く、
絵を描き終わった後、良秀は首をくくって自殺しているのが発見される。
☆クラリモンド テオフィル・ゴーティエ作 「死霊の恋」の翻訳です
吸血鬼の美女娼婦クラリモンドのとりことなった若き修道僧は懊悩する。
☆アグニの神
上海の裏町で占い師をしてる老婆、そこに霊媒の少女がいたが実はこの少女香港領事の行方不明の娘でして、、それを取り返そうと遠藤という男がやってくる。だがあっけなく老婆の魔法で追い返される。そこで一計を案じ少女にアグニの神が乗り移って「少女を返せ」と霊言させようということに、
さてオチはどうなるか?結末は、ご自分でお読みくださいませ。
☆るしへる
言わゆる「キリシタン物」といわれるジャンルの作品です。
ここでは悪魔るしへるが、フカンサイ・ハピアンのもとに現れるのです。
「不干斎ハビアン」とは、、、この人について書きだしたら、、分厚い論文ができますので
こんなブログでは書けませんのでネット検索でお調べください。
不干斎ハビアンこの人実在の人でしてある意味日本思想の巨人ですね。
名前はハーフっぽいですが、純粋日本人です。
後記
これら以外にも幻想的な作品は沢山ありますので関心のある方はご自分でお調べくださいませ。
なお芥川龍之介の全作品は「あおぞら文庫」で無料で読むことができます。