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第五十話 都市の”闇”へと通じる道

次回は四月二日に投稿する予定です。


 速人は何事も無かったかのように話を続ける。


 しかし、雪近はまだ脱魂状態が続いているので白目のままだった。そんな雪近をずいと押しのけてディーが文句を言ってきた。


 「あのさ、俺たちこれでもかなり全力出して速人の役に立とうと思ってるんだからさもう少し言葉を選んでくれないかな?」


 「あー、ごめーん。マジでメンゴー。ディー、これでいいか?…話を続けるが、お前たちも疲れているだろうがそろそろ出口が近いから出発するぞ。さっさと準備をしろ」


 速人はランプを取り上げて摘まみをいじって、光量を調節する。

 火の魔晶石によって自力で発光する角小人レプラコーン族御用達の便利な道具だが、一度魔力が尽きてしまえば速人の力ではどうすることもできない。

 現在同行している仲間の中で唯一魔法を使うことが出来るディーは火の魔法が苦手なので、ランタン内の魔晶石の魔力が尽きても補給することは難しい。

 ディーと雪近もある程度は体力が回復して様子なので、速人は予定よりも早く休憩を済ませることにする。

 ディーと雪近は洞窟内の居心地の悪さゆえか速人の命令におとなしく従う。

 三人はくぼ地を下りながらぼんやりとした光が溢れている方向に向かって移動する。


 (なるほど。距離的にそろそろ外に出てもおかしくはないか)


 ぼぉぉぉ…。


 速人は不意に風が流れるような音を感じ取る。

 ついに速人たちは数十メートル先に、天然の通路の出口と思しき人工の通用路を発見した。


 「ここが出口だな。多分」


 「速人。俺、先に行って見てくるね」


 速人はランタンを出口らしき通路に向けた。

 ディーが小走りで通路の出口に向かって走り出す。

 わずかに遅れて雪近もディーの後を追いかけて行った。


 速人は通路が人の手によって掘り出され、整備されたものであることを確認する為に地面や壁などを一応、気を配る。

 先に出て行った二人を止めなかったのは人の気配が一切感じられなかったからである。

 少し湿った地質は、ここ数日に世界樹の恩恵が受けられない外界に雨の日が続いたことを予感させる。

 鼻腔をくすぐる空気にも冷気や湿気といった特徴が感じられるようになった。


 速人はいよいよ強くなってきた風の音に耳を傾けながら通路の出口に向かった。


 速人は通路の出口までやって来るとディーと雪近が揃って中から飛び出してきた。

 二人はかなり緊張した顔で速人を見ている。


 (人の気配は無かったはずだが)


 速人が中で何を見たのかを尋ねるよりも先にディーが中の様子について訴えてきた。


 「速人。この中、ちょっと見てよ。大きな人間がいて!上から何か黒くてドローっとしたのが垂れてて!もう大変なんだよ!何とかしてよ!」


 ディーは必死に内部の状況を訴えようとしているが極度の興奮状態にある為に意味不明の言動を繰り返している。

 仕方ないので速人は雪近の方を見る。

 雪近は説明するよりも実際に見た方が早いとばかりに速人の手を引いて通路の奥に連れ出してしまった。 雪近はまず正面にある巨大な像を指差す。


 巨人の像は頭は下を向き、両膝をついた体勢になっていた。

 頭には大きな二本の角を生やした兜を、身体には鎧を身に着けている。

 頭部の顔の部分は仮面で覆われており、瞳からは輝きが失われていた。


 (電池まりょく切れで動かなくなった使い魔のゴーレムか。或いは機神鎧か)


 速人はいつの間にか因縁の深い相手のことを考え、表情を強張らせる。

 だが、雪近に後ろ襟を引っ張られ半ば強引に次の事物を見せつけられることになった。


 ドーム型の構造となっている天井から蝙蝠と思われる何かがぶら下がっていた。

 外見は羽と閉じた蝙蝠。

 しかし大きさはケタ違いで並の大人つまり雪近とか同じくらい(※約170センチ以上)は確実にある。


 (マリンバットか)


 速人はいつかスタンに教えてもらった魔物の名前と姿を思い出す。


 マリンバット。

 蝙蝠バットという名前がついているが、蛭の仲間である。

 全身が青いこと、そして飛行能力を持つ為にマリンバットという呼ばれているが飛行手段は滑空である。 獰猛な性格で、自分の縄張りに侵入者がいればすぐに襲いかかってくるらしい。

 他にも光よりも音に反応し、蝙蝠のように超音波を発して外界を感知するという能力を持つ。

 今もこうしている間に逆さ吊りになってぶら下がりながら、一つ目のような動体感知機関で速人たちの動きを事細かく観察している。


 速人は閉じた口の前に人差し指を立て”決して口を開かぬように”と二人に促した。


 その後、速人はマリンバットの”目”が明滅していないタイミングを計りながら、出来るだけ光の届いていない部屋の端を移動する。


 先頭は雪近、真ん中はディー、最後は速人という形で出口に向かって進む。


 マリンバットは群れで行動することが多い魔物だ。

 速人一人ならどうにでもなるが、雪近とディーが一緒なので強引に抜け出すことは凡そ不可能だろう。

 建物はざっと見渡して講師用の教壇、受講者用の講堂という構造だった。

 いずれも永らく使われることが無かった年代物である。


 (もう少し調べておきたいが時間がない。ダグザに話して本格的に調査する必要があるな)


 速人たちは壁に背中にくっつけて、手探りで建物の出口を目指した。

 入ってきた通路の側から時計回りに進んで残りの距離半分というところでディーが突然、止まってしまった。


 どんっ。


 速人は別のことを考えながら移動していた為にディーに体をぶつけてしまう。


 ディーと雪近は丁度部屋に入ってきた通路の反対側の壁を見ながら一歩も動かなかなくなってしまった。


 速人が「おい。急に止まるな…」と言いかけた直後にズルリズルリと何かを引き摺るような音が聞こえてきた。

 速人は音の聞こえてきた方向、つまりディーと雪近が釘付けになっている場所を見据える。


 天井から薄すらとさす光の中、向こう正面の壁がひび割れた生物が這い出ていた。


 その生物は全身が粘液に包まれており、体色は血のように赤い。


 「ブラッディジェムか…。まさか」


 粘液の塊は流れるように講堂中央にある巨人の像に向かって進み続ける。

 ブラッディジェムは粘液のような体を持った生物に見えるが、その正体は甲虫の姿をした魔物である。

 彼らが常に身にまとっている粘液は外界の脅威から身を守る鎧のような存在である。


 ブラッディジェムたちは次々と巨人の像に獲り付き、像から養分を吸収しようと強酸を吐いて解けた部分を舐めようとしている。

 しかし、一向に効果は無く単なる徒労であることに気がついた一部のブラッディジェムは再びヒビの中に戻ろうとしていた。


 ガタガタッ!ガタガタッ!


 速人が変化に気がついた時、それが既に動き始めた後だった。


 巨像の真上で天井からぶら下がっていたマリンバットたちが一斉にブラッディジェムの群れに襲いかかったのだ。

 速人はディーと雪近の手を引いて近くの物陰に潜り込んだ。


 バリバリッ!バリッ!

 

 ………。

 

 ズッ!ズズズゥゥーー……ッ!


 あの化け物たちは口内のノコギリ状の歯で甲殻を容赦なく引き裂いた後、臓物を食っているのだろうか。


 そしてこれが最後とばかりに何かの液体を吸い上げるような音まで聞こえる。

 速人はマリンバットの生態を聞いたことがあるので壁の外で繰り広げられる惨劇の一部始終を予想することは難しいことではなかった。


 速人とは対照的にディーや雪近は耳を塞いで身体を震わせるばかりだった。


 速人は二人の頭を交互に撫でながら音が止まるまでその場に止まることにした。


 それから声を出さずに数えて600ほど、時間にしてものの十分くらいで行動の中は静寂を取り戻す。

 現在の状況を把握する為、速人はガレキの端から顔を出して講堂内の様子を伺う。


 講堂の内部は奇妙なことにブラッディジェムが動き出す前と何も変わらない状態に戻っていた。

 

 さらに速人は相手を刺激しないように真上を見る。

 ドーム型の天井からつり下がっているマリンバットの瞳は以前と同じように金色に輝いている。


 速人たちが見えていないのか、興味がないのか。

 それは彼らにしかわからないことだろう。


 「ディー、雪近。少し怖いが、あっちの出口まで急いで行くとしよう。魔物たちも”食事”が終わった今なら警戒が緩くなっているはずだ」


 速人の言葉を聞いたディーと雪近は頭を振り、その後腰を下げて全速力で出口と思われる扉まで走って行った。

 速人は最後までマリンバットの様子に注意しながらはや歩きで扉に向かう。

 幸いなことに、謎の講堂の扉には施錠されてはおらず三人がかりで押すことで無事に開けることが出来た。

 背後には不気味な魔物の群れが控えていたのでディーや雪近も普段以上の力が発揮できたのだろう。

 

 速人は摘まみを調整してランタンの灯りを消した。

 そして後ろの扉をしっかりと閉じる。


 今回マリンバットたちはブラッディジェムの群れを目当てにしていた為に、速人たちを狙ってくるようなことは無かったが次にもまた同じような好機が巡ってくる可能性は極めて低い。


 (帰りはこの通路は使えないな…)


 速人は最後に一度だけ扉の方を見ながら帰路について考えていた。


 ディーと雪近は一目散に建物の出口に向かって走り出していた。

 だが出口の扉は外側から固く閉ざされていた。

 

 後ろからゆっくりと現れた速人はまずディーに扉に何らかの魔法がかけられてはいないかと尋ねる。


 ディーはすぐに扉に近寄ってみるが魔法の力が働いている形跡を見つけることは出来なかった。

 

 (ということは術が施されていないと考えるべきか)


  速人と雪近も扉の周辺に魔法円や魔術の紋章などが描かれていないか探したが発見するには至らなかった。


 ディーから扉には魔法がかかっていないことを聞いた速人は次に扉を爆破することにした。

 

 速人は嘆息しながら扉の周りに赤い粉末を撒いた。

 黒色火薬を使うことが出来れば問題はないのだが、物理法則よりもサラマンダー、アースエレメント、ウンディーネ、シルフィードといった四大精霊の支配力が強いナインスリーブスでは火と土の精霊の助力無しでは黒色火薬を使っても大した結果が得ることは出来ない。

 故にこうして火の力が宿った魔晶石を下して作った粉末を代用品として使っているが魔晶石の希少価値であり価格が高い。


 (今回もかなりの出費を強いられる。またダグザさんの研究室を手伝って”おこぼれ”をもらわなければ…)

 

 速人は現状の不満を呟きながら、扉から離れた遮蔽物を挟んだ場所で火打ち石を叩く。

 

 火打ち石から生じた火花はすぐに火の魔晶石に飛び移り、パチパチと発光しながら熱量を増して扉に接近する。

 そして扉近くに仕掛けた魔晶石を溶かして作った爆弾にまで火花が到達し、やがてドンッと轟音と共に爆発した。

 建物が年代物であった為に爆発の衝撃で崩落する可能性を危ぶんだ速人は、周囲を確認してからディーと雪近を伴って扉の近くまで移動する。


 「もう何でもありだな。お前は…。つうかどこで火薬なんか仕入れたんだよ?」


 「お手伝いだよ。何せ”いい子”だからな、俺は」


 雪近は黒焦げになった場所を見ながら皮肉交じりに感想を述べる。

 通用口を塞いでいた木製の扉は爆弾の威力が強すぎた為に爆散している。

 ディーはまだ焦げてプスプスと音を立てている場所を踏まないようにしながら外に出て行った。


 「雪近、さっさと外に行くぞ」


 「了解」と雪近が返事をした後に二人は外に向かって歩き出した。

 その途端に背後からドスンッと何かが落ちてきた音がする。

 速人と雪近は一瞬だけ後ろをみた後に駆け足で建物を目指す。


 ドドッ!ドドドッ!ドスンッ!ドスンッ!


 次から次へと天井から建物全体が崩れている。

 落下した天井の一部が床を突き破っていた。

 速人は玄関近くで硬直していたディーを脇に抱えて、そのまま建物の外に出た。雪近は一瞬だけ先に外に出ている。


 ドドドドドドドドド…。


 速人たち三人全員が外に出たのとほぼ同時に古びた大きな建物は縦に潰れてしまった。

 止むを得ず爆弾を使ってしまったとはいえ、この時ばかりは速人も無言のまま平地になってしまった建物の敷地を見ている。

 二人は速人に「最初からこうするつもりだったのでは?」と疑惑の視線を向ける。


 速人は踵を返し、建物の前に広がる道に向かって歩き出した。


 「おい。速人、これどうするんだよ?屋敷つうか俺たちが来た道、無くなっちまったじゃねえか」


 曇天の中、速人たちは道なりに進んでいた。

 雪近は建物が爆破され帰り道が無くなってしまったことを腹に据えかねたらしく、先ほどから尖った態度で速人に文句ばかり言っている。


 速人は面倒くそうな顔で雪近の質問に答える。


 「安心しろ、帰り道はある。この道に沿って歩いて行けば西門のすぐ下に到着するからな。むしろ問題は、もうすぐ到着する闇市で肉が売られているかどうかという話だ」


 速人は頬と背中に僅かな寒気を感じた。

 速人たちの周囲を覆う霧も濃くなってきたような気がする。

 頭の天辺をさっと撫でると少し濡れていた。


 (小雨が強くなってきたのか。こいつ等に風邪を引かれても厄介だな)


 速人は向かって左側にある少し背の高い木の下に雪近たちを誘導した。

 雪近とディーは小走りで黄や茶に変色した葉を多く貯える木のに潜り込んだ。

 速人もまた遅れて二人に合流する。


 雨は一向に止む気配がない。


 速人はリュックからボロ布を縫い合わせて作ったタオルを取り出し、雪近とディーに体を拭くように仕向けた。

 速人から渡されたタオルを受け取った二人は早速外套を脱いで雨で塗れた箇所を拭いていた。


 ガサッ、ガサッ。


 速人たちがやって来た道の方から足音と声が聞こえてくる。

 速人は雪近とディーを後ろに下がらせて様子を見ることにした。

 無論、最初から妙な真似をすれば殺害するつもりだ。

 速人は腰に下げたヌンチャクの柄に手をかける。


 次の瞬間、茂みの向こうからこちらを呼び掛ける声が聞こえてきた。


 「御客人、お休みのところ申し訳ない。我々も町へ戻る途中だ。どうか共に雨宿りの場所に留まることをお許し願いたいのだが宜しいだろうか。私はサンライズヒル町自警団のエリオットというものだ。決して怪しいものではない」


 続いてもう一人の男の声が聞こえてきた。


 (数は多くて四、五人というところだろうか)


 速人は相手に関する情報が少しでも明らかになるまでは動かないつもりだった。


 「俺はセオドア。エリオと同じくサンライズヒル町の自警団の者だ。このままじゃ全身ずぶ濡れになって風邪を引いちまう。御客人、こちとら懐が寂しくて何もしてやれないがどうか俺たちを助けると思って木陰の下に入ることをお許し願いたい…ていうか、本当に許可を取る必要があるのかこれ」


 「テッド、この馬鹿者。相手が何者であろうと礼儀を忘れるな。千里の道も一歩から。我々は法を預かる者としてだな…」


 速人たちが沈黙を守っている間に、茂みの向こうではいつの間にか漫才が始まってしまった。


 雪近とディーは憐れみの視線で速人を見ている。


 (おそらく俺たちが黙っていれば雨が止むまで入って来ないだろう…。セオドアという人に申し訳ないな)


 速人は二人に向かって頭を振り、外にいるエリオットとセオドアに声をかけることにした。


 「こっちもさっき来たばかりだから早く入ってくるといいぞ」


 速人の声が聞こえたのと同時にエリオットとセオドアの会話が止まった。


 「テッド、今子供の声が聞こえなかったか?」


 「おいおい。まさかだろ?ここは都市の中じゃないんだぜ?」


 (当然といえば当然の対応だな…)


 速人は雪近とディーに小声で茂みの向こうにいる二人のところに行くと伝え、前方の枝をかき分けて出て行った。

 残ったディーと雪近はいつでも逃げられるように荷物をまとめる。


 ガサッ、ガサッ。


 速人は色のくすんだ草木をかき分けながら茂みの向こうに出た。

 目の前には唖然とした表情の二人の男が立っていた。


 (この気配は…、まさかリュカオンか?)


 目の前の男二人の気配はどことなくエイリークと似た気配の持ち主だった。

 特にエリオットの方は顔の特徴もどことなくエイリークに似ているような気がする。

 速人はじっとエリオットの顔を観察する。


 「…テッド、俺はどうかしてしまったのか。豚みたいに太った猿が喋っている…ッッ!!」


 エリオットの失礼な発言は速人の肉体を鋼鉄の如き強度を備えた凶器へと変えた。

 速人の脳内では既にエリオットをどうやってお仕置きするかまで考えらてある。


 「奇遇だな、相棒。俺も多分似たような幻覚を見ている最中だぜ。こんな悪夢みたいな顔をした生き物がいるわけがねえや。ものの試しに俺の頭を一発殴ってくれねえか?」


 速人は拳を握りしめ、ゆっくりと振り上げる。

 ゆらり、速人の身体が陽炎のように虚ろなものへと変わる。


 エリオットとセオドアは目の前から不穏な気配を感じ取ったまでは良かったが悪鬼はやとの猛攻に反応することは出来なかった。


 憤怒の影が疾走はしる。


 速人は身を潜めると同時に拳を真上に向かって打ち込んだ。

 たった一発で30キロ以上の体重差があるエリオットは顎を伸ばして、気絶する。


 ドサッ。


 エリオット、再起不能リタイア


 「うひいいいッ!!」


 セオドアは隣で前に向かって崩れ落ちる親友を見捨てて逃げようとした。

 しかし、それを見逃す速人ではない。


 「漫画にこんなセリフが合ったな。楽しい時だけではない。苦しみも共有してこそ友人だと」


 速人はセオドアの腹に向かってガトリングパンチを放った。

 セオドアは血涙を流しながら連続して放たれる速人のパンチを受けていた。


 (一発一発は大したことのない威力なのに…。いやすっげえ痛いです。もう堪忍してえ…)


 速人はセオドアの降伏の言葉を聞いていたが無視をした。


 寒空のもとで、小雨はやがてあられの混じった勢いの強い春雨に変わる。


 ドドドドドドドドドッ!!


 いやセオドアの腹が殴られている時の音であった。


 「げろげろげろ…」


 セオドア、再起不能リタイア


 速人は腰の当りで手を交差させる。

 あらゆる格闘技と武術から技術だけを抽出した我流殺人術を使う速人だが、礼や残心といった儀式的な動作を忘れることはない。

 地面に転がっている虫の息のエリオットとセオドアはディーと雪近に介抱されることになった。


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