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第八十六話 強敵襲来

 次回は7月22日に投稿する予定だよ!!

 「そう構えるな、下等動物。いくら凄もうとも我が心は微動だにせぬ。我からの提案はただ一つ、お前の持つ虎王宝珠を手に入れることのみ。おとなしく渡せばこの場においてお前の命だけは見逃そう。断れば、お前もろともこの場にあるものを全て滅ぼす」


 ナナフシはそう言いながら、冷めた目つきで周囲を見渡す。

 彼の金色の目には三つの瞳がある。

 これらは長きに渡る修行の末に手に入れたものであり、それぞれが天地人の三界に通じ遥かな過去と人の思惑そして近い未来を見通すことが出来たのだ。

 偶然の出来事とはいえ、速人の名前もこれまでやってきた事もナナフシの持つ超常の力を秘めた”眼”によって知り得ることが出来たのだ。

 故に彼は速人を侮ることはない。

 要するに速人の実力を脅威と感じることは無かったが、油断すれば手傷を負わせるほど凶暴な獣と思って対峙していた。


 「質問を質問で返すのは不本意だが…


 ( ※ 理由 … マ○ンテン・ティムや○良吉影に怒られるから 

     例 マ「質問に質問で返すバカ発見~」

       吉「質問を質問で返すなああ!!!」等         )


  それで俺の名前はどこで知った?その…、ファンクラブの募集はまだやっていないんだが」


 ピキピキピキィッッ!!

 ナナフシの速人への好感度が一億ポイント下がった!! 


 (この男インドのお坊さんみたいな服を着た男…、もしかして俺の熱狂的なファンで、ストーカーなのか?怖っ!!)


 速人は緊張のあまり額に汗をかきながら後退る。

 当初の予定ではストーカーが現れるのは、ヌンチャク・ポップの歌手として紅白歌合戦に出場して民放のアナウンサーとの仲が噂されるようになってからのことだったのだ。


 (早すぎる。自分の可能性が恐い…。おそらく髪の毛がエイリークさんみたいに輝いているからかもしれない)


 速人は昨日の夜からエイリークが使っている整髪料(※油っぽいやつ)に変えてきたことを歯ぎしりしながら後悔していた。


 一方、全てを見通す目を持った謎の男ナナフシは速人の考えていることを全て理解し、切れかけていた。 隣にいる緑色の機神鎧もブブブブ…と不快そうな羽音を立てている。


 「デレク・デボラというエルフの男を知っているか?お前がさんざん痛めつけたエルフの男だ。彼奴の脳に仕込んで置いた式鬼から貴様のことを知った。そして我は貴様の個人情報など最初からどうでもいいとだけは言っておこうか。後、頭に香油を塗った時にお湯で流してしまうと意味が無いぞ」


 速人はナナフシから頭髪に関する指摘を受けて愕然とする。


 (そうだったのか。何か違うとは思っていた…ッ!!)


 エイリークが風呂場の洗面所に整髪料っぽい香油が入った小瓶を放置していたので試しに頭に塗った時ベタベタした感じが嫌だったので寝る前に髪を洗って流してしまったのである。

 あの後、何となく髪の毛からいい匂いがしていたので上手くいったと感じていたのだが結果として失敗していたらしい。

 

 お洒落の道はまだまだ険しい。


 速人が考え事をしている間、ディーが雪近に耳打ちをする。


 「ところでキチカ。デレクって誰だっけ?」

 

 ディーはかなり真剣な表情をしている。

 彼なりに話題について行こうと必死なのだ

 

 (…。もう忘れたのかよ…。こいつ記憶力とか本当に大丈夫なのか…?)


 雪近はやや呆れた様子でディーの質問に答える。

 

 ナナフシは律義にも宙に浮いたまま両腕を組んで速人たちの意見がまとまるまで待っていてくれた。

 あ、眉間に怒った毒蝮みたいな血管が浮かんでいる。


 「さっき町の中で、速人と俺たちが離れて行動していた時に、速人に殺されかけた耳長のデボラ商会っつうポルカの旦那の商売敵だっての。…うっ!思い出しちまったぜ」


 そう言いながら雪近は速人によって無残な姿にされたデレクの姿を思い出して思わず吐き気を堪える。  ディーは苦笑しながら雪近の背中を軽く叩いて気を使って見せる。


 速人は髪の毛に手櫛を入れた後にナナフシの前に向き直った。

 その一方でナナフシも赤茶の前髪を弄っている。

 速人に間違いを指摘しながらも、ナナフシは自分の髪型のことも気になっていたのだ。


 「そうか。やはりこれはお前らの持ち物だったのか」


 そう言って速人は胸元に手を突っ込んで黒い石を取り出した。

 速人はナナフシと名乗る男が現れた瞬間から、一か月前に大喰らいという魔獣を退治した時に手に入れた(※頭を開いた時に偶然見つけた)宝石のような物体を触れた時の異質な雰囲気と同様のものを感じ取っていたのである。

 さらに今朝ダグザから聞いた「大喰らいは人工的に作られた魔獣かもしれない」という情報を加えることによって、デボラ商会の暗躍と彼らを背後から操るナナフシの登場も納得が行った。

 速人の手にある宝石、ナナフシによれば「虎王宝珠こおうほうじゅ」という名前らしいが本体の大喰らいが死んでから一か月近く経過しているのに光沢が失せることはない。

 一応、速人は毎日これを拭いたり磨いてたりしているわけだがそれでも特に加工をしているわけでもないのに変化が現れないのは異質と言わざるを得ない。

 宝石の類も手を施さなければ時間が経つうちに劣化し、道端に落ちている石ころ同然の存在になってしまうのである。

 特にそれが生物の臓器や骨由来(※例 真珠、珊瑚など)のものであれば尚更だ。

 ナインスリーブスには魔晶石という魔力を循環させてそこから精製する魔導書と同じ機能を持った魔術道具が存在するが、それはあくまで世界ナインスリーブスに点在する世界樹ユグドラシルから抽出されたものでありダグザとスタンによれば今の技術では機能の一部を模倣したものを作り出すことは出来ても複製品を作ることは不可能だという話である。


 「然り然り。不破速人よ、単細胞生物のような外見をしているが生半に知恵が回るではないか。貴様が倒した怪魚、黒虎甲魚こそはコウヨウシュ道兄の作り出した宝珠の化身。祭器に生物の細胞を埋め込んで培養したまでは良かったが、理性を失って暴走するまでは考えつかなかったらしい」


 ナナフシは大袈裟な身振り手振りを交えながら仲間の失敗を嬉しそうに語っている。


 (聞いてもいないことをベラベラと喋りやがって。あの一緒にいるデカブツといい、登場する作品のジャンルが明らかに違うだろ)


 速人はナナフシと彼の隣に立つ機神鎧の動向に注意を払いながら、どこか自分に酔っている様子の男の話に耳を傾ける。

 緑色の鎧に各所に赤い線の入った機神鎧は仮面サーメットに覆われた頭部から速人たちの様子を見守っている。

 以前遭遇したアレスとは違って自意識を持っている機神鎧かもしれない。


 ナナフシは狂喜しながら速人の手の中にある黒い宝玉に熱っぽい視線を送る。


 速人は不敵な笑みを浮かべながらナナフシの前の前に突き出した。


 「欲しけりゃくれてやる。ここまで降りて取りに来いよ」


 速人は腰を下ろしながら地面の上に宝珠を置いた。

 そして、その場から背を向けてゆっくりと離れる。

 

 ナナフシと緑色の巨人は速人が離れた後、入れ替わるように空から降りてきた。

 ナナフシはいやらしい笑いを浮かべると緑色の巨人に宝玉を取って来るように命じる。


 「緑麒麟りょくきりんよ、我のもとに宝珠を持ってこい。くれぐれも丁重に頼むぞ」


 主人から命令を受けた機神鎧「緑麒麟」は蚕蛾のような触覚がついた頭を縦に振る。

 緑麒麟はあくまで地に足をつけずに浮揚しながら黒い宝珠のもとまで移動した。

 そして、目的地まで到達すると巨大な手を伸ばして宝珠を掴もうとする。

 

 びっ!!

 

 次の刹那、速人は手元に向かって糸を引っ張るような仕草をする。


 ひゅんっ。


 雪近とディーが風を切るような音に気がついて速人の手をよく見ると黒い糸が巻きついていた。

 そして緑麒麟の目の前にあったはずの宝珠は引き寄せられるようにして速人の手の中に納まっている。

 速人はニンマリと笑いながら手の中の虎王宝珠を確かめる。

 一部始終を見ていたナナフシは肩をわなわなと震わせ、自我というものを持ってから間もない緑麒麟は人間の悪意というものを学習ラーニングしていた。


 「それは何のつもりだ、不破速人。子供の他愛ない悪戯というなら今回ばかりは目をつぶってやろう。さっさとこちらに寄越すがいい。参考までに言っておくが我の堪忍袋は既に決壊寸前だぞ?」


 ナナフシは額に血管を浮かべながら大きく肩を震わせている。

 隣にいる緑麒麟の目の部分も少しばかりつり上がっているように見えた。


 速人はナナフシと緑麒麟に見せつけるように宝珠を懐に戻す。


 「おいおい…、俺はお前(※ナナフシのこと)にくれてやるって言ったんだぜ?そっちの緑色のドラム○には言ってねえんだよ!カワイソーだから、そのデカイヤツをさっさとバ○ストン・○ェルに帰してやんな!」


 ブブブ…ッ。(※身体の色が少し赤くなっている)


 昆虫のような羽音を立てながら緑麒麟の巨体が浮遊する。

 しかし、先に動こうとした緑麒麟をナナフシは右手で制した。

 緑麒麟がその気になればウィナーズゲートの町一体を塵芥に変えることなど造作もないことだ。

 しかし、そうなってしまっては秘密組織”新しい空”の盟主を気取る忌々しいコウヨウシュにとっても痛手となるがナナフシ自身にも多大な不利益をもたらす結果となる。

 故にナナフシは自らの手で速人を殺害することを選択した。


 「よくぞ言った、下等動物。特等の褒美だ。…受け取れ!!」


 バッ!


 ナナフシは左の掌を速人の方に向ける。

 ほぼ同時に速人は右手に例の宝珠を握りながら前に出した。


 ナナフシはありったけの憎悪を速人に向け、速人は邪悪な笑みをもってそれに応える。


 (二人とも、性格糞悪ッッ!!)


 ディーと雪近は口を押えながら同じようなことを考えてしまった。


 「うひゃひゃひゃ!交渉は一回限りだぜ、ナナフシ君。俺を殺すのは結構な事だが、果たしてこのレア度の高そうなマジックアイテムと俺の命の値段ってのは釣り合うものなのか。まずはそれをハッキリさせようぜ?」


 そう言うや否や速人はナナフシの左の太腿に向かって回し蹴りを放つ。


 ナナフシは即座に自分の左の掌にかけたまじないを解除してから両手を使って上手く速人の蹴りを受け流した。

 ナナフシは掌に焼けつくような痛みを感じる。

 先ほどの対応がその場しのぎであった為に蹴りの威力を完全に殺すことが出来なかったのだ。

 ナナフシの左手にかけた触れたものを全て塵に変えてしまう呪いも速人に意図を見抜かれて安易に使うことは出来ない。


 絶大な力が災いをもたらす結果となってしまった。


 ナナフシは右手を使って何らかの印を結ぶと殴りかかってくる。

 狙うその先は速人は心臓。

 速人はバックステップを切ってナナフシの順突きをやり過ごす。

 その時、速人はナナフシの光り輝く右の拳を見て冷や汗をかく。

 ナナフシの右肘の下が黄金色に変わっていたからだ。

 どれほどの威力を有しているかはわからないが当たればまず命は無いだろう。


 「悪知恵ばかり働くましらが…ッ!!黒嵐王の戒めさえ無ければすぐにでも殺してやるものを…ッ!!」


 ナナフシは左手でさらに別の印を結び、術を解除して元の状態に戻す。

 今のは触れたものを全て金に変える特殊な術だが、攻撃の反応速度が遅くなってしまうという欠点がある。

 否。それ以前に術そのものを警戒されたことが重要なのだろう。


 ナナフシは術主体の戦法を切り替え、着物の袖からブレスレッドのような形をした暗器を取り出した。


 速人は腰に下げたヌンチャクを取り出し、自身の肩から腰に向かって振り回す。


 ブン!!ブン!!ブンッ!!


 ナナフシは暗器を構えながら、体勢を低くして速人に攻撃を仕掛ける機会を窺っていた。


 「ッ!!」


 ナナフシは速人の左の胴を真一文字に横薙ぐ。

 嵐の如き速度と威力を持った一撃に、速人のはるか後ろで見守っていた雪近とディーは顔を背けてしまうが速人はこれを飛びあがって難無く回避する。

 ナナフシの攻撃は殺気が強すぎて、事前に仕掛けるタイミングを教えてくれているようなものであり回避ことが容易だったのだ。

 さらに速人は回避しながらヌンチャクでナナフシの右の脇腹を打つ。

 しかし、ナナフシは袖から別の飛剣を取り出してヌンチャクを叩き落とした。


 ナナフシは飛剣と呼ばれる暗器を再び袖の中に戻し、速人はヌンチャクを振り回しながら”間合い”を計る。


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