睡眠不足とくせっ毛
ねぇ、どうしたの
そう聞こえてハッとした。
電車の窓から射す夕日の色が細く絡まった金髪の一部を蜂蜜色に染めた。髪の影を伝って、か細い下睫毛が彼の心配そうな目と暗いくまをはわりと染めた。影から覗く明るい球体から目が話せなかった。手から伝う電車の青いマットレスソファの毛並みを逆立てた。「どうしたんだよ、僕の顔もっと変?」少しの微笑みもなく彼が言った。「あぁ、ごめん」体が上昇するようなGのようなものを感じた。なんだか、申し訳なく、勿体無くなった。このまま壊してしまいたい。食べてしまいたい。この気持ちの名前は昔ネットで見た。けどそんなことは今の俺には妹の調子の次にどうでも良いことだ。なぜなら俺の目の先には今にも眠ってしまいそうな彼がいるからだ。こいつが窓に頭を打つのが先か、俺の理性がぶっ飛んで目を瞑るこいつの唇に触れるのが先か、どっちだろうか。さっきまで会話してたはずなのにどうしてこうも無防備に寝れるのだろうかこいつは。その時、そいつの首ががくんと電車の揺れと共に反対側へ向いた。耳の裏から覗く少し伸びた髪が導くかのように彼の首筋があらわになっている。こんなにも無防備で、こんなにも弱そうな俺の彼氏はきっと今俺が首筋にキスなんかしたら俺をブン殴るだろうな。俺にはわかる。俺はそっと彼の彼氏の肩に頭を置いて目を閉じることにした。目の中に斑点や花柄のようなものが見えた。今までは面倒で仕方なかったこいつが今は自分達の生きやすやとか周りの為とか、そんなことを忘れてしまうくらい愛おしくて胸が苦しい、そんなわけないとわかってるけど。目を開けると目の前にゴツゴツとした綺麗な手があった。荒れた指先が心配になった。手を掴もうと、探るように手を交わらせると、自分の指先が暖かい指の付け根に当たるのを感じていた。彼の方から頭を外すと、目をキョロキョロさせてるトゥイークがいた。どうやら俺より眠りが浅かったらしい。手を繋ぐなんてよくやることなのに耳が熱くなった。動揺してた。「どうしたの?変だよ」目が合った。何故かわからないけど、なにかが上がって行く感じ。まただ。これ。苦しいけど気持ちいい。なんなんだよこれ、、一方的に交わっていた手をゆっくりと離して窓を見た。あぁ、なんでこの先ができないんだ俺は、、、、いやいやクソなんでこんなこと考えてるんだよ、、、、気がつくと終電になっていた。電車から出た俺たちはどちらともなく足を止めて走って行く電車を見送った。