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59―ど、どどどどう〇いちゃうわ!―

ちょっと色々忙しかったりで中々執筆できませんでしたが、

そろりそろりまた書いていきますよ


それはそうと台風来すぎじゃないですかやだー

皆さんもお気をつけて

「よし、これでもう大丈夫だ。ただし体を治そうとして体力は落ちてるからしっかり養生しな」

「はい、ありがとうございます」


古き良き診療所、といった風情の室内で洋式机にサラサラと簡単に情報を書き留めながらそう言って、治療を終えた患者を見送る。日本にいたときの実家の診療所にどこか似た雰囲気の場所で、銀二は久しぶりに医者らしいことをしていた。

その銀二のいる室内に新しい人影が見えたかと思うと、銀二のいる机に湯気が立ち上る湯呑をコトリと音を立てて置く。


「お、ありがとさん」

「いえいえ。こちらこそありがとうございます。まさか先生が流行り病で倒れるなんて思いもしなかったですから・・・」

「その先生はちゃんと寝てるかい?病気は治したが全快とは言えねぇんだからよ」

「はい。先ほど粥を届けに行った際にはしかと横になっているのを確認しましたから」


「そいつぁは重畳」と呟き、白い割烹着を着た女性に向けてひょいと湯呑を掲げてから口につける。ティビリの街の診療所で銀二が代診を行っているのは話にあった通り、本来の医者が病に倒れたからだった。


―――

――


温泉に浸かった翌日ちゃんとした休日とするため自由行動としてそれぞれが街に繰り出していた。銀二もまた一人、どこか日本を思わせるティビリへと繰り出し散策をしていたのだ。

そんな折に何人かの病人や怪我人が診療所に入っていくのを見かけると、この世界の本来の医療を見るべくそれについて入っていったのだが・・


「―――生っ!先生!」

「お、おい・・先生大丈夫かよ!」

「ひどい熱・・・これって最近噂になってる流行り病・・!?」

「だれか!ギルドの治癒術師を――!」

「体を揺するな!熱病の一種だ、だれかベッドに運ぶのを手伝ってくれ。ゆっくりとだ」


初老の男性が倒れ込みそのまわりを何人もの人が囲んでいる。看護師だと思われる女性が慌てて声を荒げているところに出くわした銀二は、一種のパニック状態になったその場を多少の魔力放出と共に一喝して落ち着かせると、瞬時に病状を看破し患者の一人に手伝ってもらい診療所のベッドへと運び込む。


「あなたは・・・?」

「流れの治癒術師みたいなもんだ。それより今から治療する。この場にいた連中は外に出すなよ、病原菌に感染した可能性がある。あとでまとめて治療する」


ふわりと銀二の体から魔力が立ち上るとその掌から初老の男性へと流れ込んでいく。文字通り流れる様に銀二の魔力が男性の体に入ると同時に男性のそれに同調するのを見た看護師は、その異常ともいえる治癒術の行使に目を見開く。


「(これは日本でもよく見ていた。インフルエンザか・・・現代医療ですら犠牲者を出すが、たとえ魔法によって治療できるとはいえ知識は到底及ばない。このまま放置すればこの規模の街ならあっという間に広まっちまうな)」


医者の体から病原体を死滅させると、最後にサッと診断して問題ない事を確認すると看護師へと向き直る。


「これで一先ずは安心だ。だがこの病気は感染してすぐに発症するもんじゃない。恐らくは数日前から発症し始めて体は病原菌と戦っていた筈だ。病気は治せても失った体力は直ぐには回復しない。ゆっくりと休ませてくれ」

「は、はい・・・それじゃ今日は閉めて・・」

「いや、この病原菌は感染力が強い。一先ずは今日この場にいる患者は俺が診よう」


「ちょいと借りるよ」と声をかけてからハンガーにかけている白衣を着こむと、未だ眠っている男性を診察室の奥、おそらくは自室へつながる扉の奥へと連れていく。


「さーて、久しぶりに医者らしく働きますかねぇ」


――

―――


ズズズと茶を啜ってからほぅっと一息つく。患者を治療する傍ら、恐らくは潜伏した期間に感染の拡大をしていたと仮定し、治療した患者にここ数日に診療所へと訪れたであろう人を呼ぶように促し、結構な数の人々が訪れる結果となったのであった。


「ふぃー、結構な人数がいたな」

「はい。それに・・・一部には発症し始めている方もいましたし、危なかったです」

「この辺は昔から流行ってるのかい?」

「いえ・・・何年かに一度、それこそ10年に一度くらいで話には上がる程度でしょうか」

「となると、俺を含めて余所者が流れ込んだことでそういうのも入ってきちまったって事かね。それはそうと、一応この病の特徴とか対処について書面にまとめておいた。医者のセンセに渡しておいてくれ」

「なにからなにまで・・・ありがとうございます」


書き終わった紙を揺らしながら看護師に渡し、立ち上がって白衣を脱いでハンガーへとかけなおして体を伸ばすと、ボキボキと小気味の良い音がなる。それをクスクスと看護師が笑いながら見た後、何かを思い出したようにポンと両手を叩いて扉の奥へと消えていく。

戻ってきた彼女の手には小さな包みがあり、それを銀二へと手渡す。


「これは?」

「この街のお菓子です。甘すぎないので大人にも結構人気なんですよ。診療の途中で旅の仲間が他にいらっしゃるという事だったので幾つか包んでおきました」

「ありゃりゃ、そいつぁすまねぇな。ありがたく貰っておくとするよ」

「いえいえ。それにしても、治癒術師ってすごいんですねぇ。診断も早いですし治療もあっという間で」

「どうかな、他の治癒術師にはあったことねぇからなにが普通かもわからねぇしな」

「あれ?そうなんですか?てっきり学び舎の様な所でそういうのは教わるのかと思ってました」

「俺はこの大陸にきたときに師匠みたいなのと出会ってね。そこで治癒術とか教えてもらったんだよ。このローブなんかはその人のもんでね、故郷の帝国に返してくれって俺に託してね・・・」

「そう・・・なんですね・・・」


少し湿っぽい空気になったことに気付いたが、はて?と首を傾げてからすぐに理解したのか苦笑いはしつつも訂正はしない。主に面倒くさいので。

「それじゃ」と声をかけて診療所を後にすると、包みを軽く気にしながらも周囲を見渡しながら宿への道を歩き始める。


「休みの筈が働くことになるってのもおかしな話だ。これが日本人の性か・・・」


コツコツと足音を立てながら宿のすぐそばまで来ると、宿の方から馬の嘶きが聞こえてくる。そこでふとタマに助けられて以来会っていなかったことを思い出す。


「礼もかねて治癒術で労ってやりますかね」


ジャリッと足音を立てて踵の向きを変えると、宿に併設されている厩舎へと向かうとすぐにタマの大きな馬体が見えてくる。タマの方も銀二特有の魔力を感じ取ったのか頭を向けて一つ嘶きを発する。

それに応えるように手を挙げて近づくと、何時ものように魔力を掌に集めてゆっくりとタマの首を撫でる。


「おう、なんか随分久しぶりな気がするな。隧道じゃあ世話になったな」

「ぶるるるっ」

「よーしよし、ほれほれ」


ポンポンとその巨大な馬体を撫でてやれば嬉しそうに首を振る。その様子に苦笑しながらその目で体の状態をチェックし疲れを癒していく。

そうしてタマが満足気に体を休めるのと同時に、その体から手を離した銀二は懐からタバコを取り出して火を着け、煙を吐き出すと同時に口を開く。


「それで、アスタはなんか用か?」

「なんだ、気付いていたのかい」

「ついさっきな。・・・で?」


ふぅーと煙を吐き出して視線を上に向けると、そこからスルリと体を滑らすようにしてアスタが姿を現す。音もなく地面に降り立つ技術は流石ともいうべきか。ひゅぅと口笛を鳴らす銀二の元へと足を運んだアスタはその視線を銀二の目へと向ける。


「ギンジ、アンタにゃあ聞きたいことがあってね」

「ふん?俺に答えられる事ならな」

「そうかい?なら・・・アンタ、そのイヤリングはどこで手に入れたもんだい?」

「なんだ、風脈のイヤリングについて知りたかったのか?」

「・・・その口振りじゃあ、そいつがどういう物かも理解してるってことだね?」

「風の精霊サマの宝具、だろ?周囲の風を意のままに操り、風と共に魔力の循環を司る」

「―――」

「知ってるさ、コイツが盗まれたもんだってことも、元はエルフの持ち物だってこともな。だから俺がここにいるのさ」

「どーゆーことさ」

「王国の宝物庫に後生大事に保管してたもんを俺がかっぱらって、そいつを精霊様から返しに来てくれって頼まれたのサ」

「――――」

「おい、聞いてきたのはオメェだろ。その可哀そうなモノ見る目でこっち見んな」


どこかジトッとした目を銀二へと向けるアスタだが、すぐさま銀二が口から煙を吐き出してスモークを焚く。

ケホケホとむせるアスタを他所に、どこか演技がかった仕草で両手を広げてアスタへと口を開く。


「信じられないか?だが俺は嘘はひとつもついちゃいないぜ?」

「荒唐無稽な話には信憑性が必要だろ?」

「オーケー、一つ分かったのはここで何を語っても話は平行線ってだけってことだ。なにか証拠がありゃ話が別なんだがなぁ」

「・・・アンタ、さっきそれを返しにいくって言ってたね」

「ああ、そうさ。だからこそこうして旅をしている。火の一族に会い、風のエルフ達に会い、水の連中に会い、そして帝国の土の連中に会いに行く」

「・・・随分とまぁ壮大な旅路だね」

「わかっちゃいるさ。だが・・・例え頼まれたのだとしても、これは俺が俺の意思で選んだことだからな。なら、それを果たさなくちゃ嘘になっちまうだろ?」


タバコを摘んでそれをアスタへと向けながら口角を上げて問いかける。声の色も表情もどこかおどけた様な銀二だが、その目だけはそれが真実であると伝えてくる。

暫くの間、その瞳をじっと見つめていたアスタだが最後には根負けしたかのように溜息一つついて肩を竦める。


「わかっちゃいたけど、アンタどっかズレてるね」

「おぉ?」

「――― 一つ、今の話を信じる方法ならあるさ」

「ほぅほぅ?」

「アタシが証人になりゃいいってことだろ?」

「・・・・つまりなんだ。ついてくんの?」

「衛兵呼んでお縄につきたくなけりゃあそうした方がいいと思うケド?」


おどけた様にしてアスタが返せば、降参とばかりに両手を上げる銀二。だがその口元は緩く口角を上げており、それを見たアスタも徐々に口角があがっていく。


「好きにしな、なにせ俺は今まで通りにするだけだからな」

「ああ、好きにさせてもらうさ」

「しっかし、モノ好きだねぇ。こっから火の一族がいる鎮守の森までなら近いだろうけど、最終目的地は帝国の首都だぜ?義賊稼業はどうすんだよ」

「そっちは別に問題ないよ。頭張ってる姐さんさえいりゃあ回るし、なによりその姐さんに探しものを頼まれてるからね」

「ふーん?」

「このティビリでも見つかってないからね、連邦にゃあもうないんだろうさ。だから今度は帝国まで足を伸ばそうかって思ってたところさ」

「んだよ、体よく足にする腹積もりか」

「別にいいだろ?こぉんなか弱い乙女一人に危ない旅をしろってのかい?」

「か弱い・・ねぇ?」

「ああぁん?」

「おっとっと。さってと、それじゃあ改めてよろしくな、か弱い乙女のアスタさん?」

「・・・・なぁんか悪意を感じるけど、まぁいいさ。よろしくギンジ」


ギュッと握手を交わすと、お互いの口からクツクツと笑い声が漏れ始める。最後にタマの鬣を一撫でしてから連れだって宿の中へと向かっていく銀二とアスタ。その並んで歩く姿は恋人とかというよりは、悪友の様なものにみえたとかなんとか。


「ちなみにアンタ、なんであの子らに手ぇ出さないのサ。そっちの人?」

「ばぁかやろ!んなもんは結婚してからに決まってんだろ!」

「えっ?」

「あぁ?なんか文句あっか?」

「えっあいや・・・ええ・・・・珍し・・・」

「・・・別に結婚するまで純潔保てだなんて言わねぇがよ。手ぇ出すからには責任とかなんかそのへんあんだろ」

「・・・・アンタ、童貞?」

「・・・商売女でそれは捨てた」

「あ・・・っそ」

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