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29―旅は続くが変な道連れも増えたな―

気が付けば30回目の投稿

多くの方に見て頂いて感謝感激雨霰という具合にございます。

ネフトの街を出た一行は次の街に向けて石畳で整備された街道を進む。時折街と街をつなぐ馬車が走っているのを見ると、他の街とは活発にやり取りをしているようだ。特に今の時期は闘技大会に出場するのか観戦するのか、鍛えた体をさらすものや家族とみられるグループが談笑している者達が乗っている馬車が多いようだ。


「―――それで?」

「うっ・・・」


火の一族というには真逆の絶対零度的視線をしながら、幌の中で正座をさせられ重石を抱えさせられた一人の男を睨みつける。


「貴様は何者で、何の目的があってこの馬車に忍び込んだ」

「忍び込んだっていうか幌の上に乗ったっていうか」

「そんなことはどうでもよい!!」

「はいぃぃ!」


尖った耳と犬の様な尻尾から厳格な性格の者が多いとされる狼人だと思われる男は、ライラの一喝に正座のまま飛び上がるとペコペコと頭を下げだす。


「いやぁ・・その・・なんつーの?俺っちも闘技大会出るんだけど・・馬車代がなかったというか・・・」

「それで人数の少ない我らの馬車に無賃乗車したというわけか」

「いやぁたまたま、そうたまたま急いでたら馬車の上に――」

「黙れ」

「アッハイ」

「・・はぁ、どうするギンジ殿?」


ライラがそういって馭者席で手綱を握る銀二に視線を移せば、タバコをプカプカ吸っていた銀二も後ろを振り返り男を視界に入れる。


「・・・ま、別にいいんじゃねぇの?」

「ギンジ殿・・・・いいのか?」

「ほ、本当っすか旦那!よっ!太っ腹!いぶし銀!」

「黙れ」

「アッハイ」

「ライラもいつまでも殺気立つもんじゃねぇよ。それで、お前さん名前は?」

「へい!生まれも育ちもシグナの街、武者修行の一文無しエルノっス!」

「エルノッスだな、わかった」

「エルノ、っス!」


ヘラヘラとしつつ自己紹介する男をもう一度見た後、ふーんと呟きながら前方に視線を戻す銀二。エルノと名乗った褐色肌の狼人はホッと息を吐くと、改めて馬車の中をぐるりと見渡す。


「いやぁそれにしても美女ばっかじゃないっスかぁ、旦那もヤリますなぁ~」

「・・同乗は許すけど、変な気は起こすなよ?」

「ウィ~っス!へへっラッキーっス。俺っちにも漸く運が回ってきたっすね~。ところで、あの・・・この重石どかしてもらうことって・・・」

「無断で乗り込むような輩には丁度よかろう」

「そんなことよりエルノさん一文無しって言ってたけど、なんでそんなにお金ないの?」

「よくぞ聞いてくれたっすよ!そこには話すも涙、聞くも涙の壮大なアドベンチャーだったりドラマがあったりなかったりするんすよ!」

「―――」

「アッハイ、話させてもらうっすね。段々その冷たい視線にゾクゾクしてくるっス・・・。そう、あれは一昨日の事だったっス」

「そういう回想はいらないんだが・・」


―――


後ろの幌の中でエルノが噺家ばりの名調子で語っているのをBGMに、少しずつ緑の割合が増えてくる街道を眺める銀二。そしてひょっこりとクラリッサが隣にくると静かに座る。


「うふふ、なにやら面白いヒトが来ましたねぇ」

「んー・・そうだなぁ」

「でも、本当によろしいんですかぁ?あのヒト――」

「今すぐどうこうってわけでもないし、放っておけって。ところで、さっきアイツが言ってたシグナの街っての知ってるか?」

「そこまで詳しくはないですがぁ・・・よいしょっと」

「なんで胸の谷間に手を突っ込んだら地図が出てくるんですかねぇ・・・」

「うふふ。さて、冒険者ギルドで頂いたこの地図の写しですが、今いるところが・・・ここ。大陸中央からちょっと西にいる地点ですが、シグナの街はここから・・・・こちら」


そういって現在地を指さしていた地点から、スススと横に滑らせていき最後に指さした地点は大陸の西の端の方。


「大分遠いなぁ~」

「ええ。確か獣人の中でも狼人が特に多い地域だとか」

「ほぉ~・・」

「族長や群れの長の元統率のとれた誇り高い部族・・・とは聞きますが、年長者や上位者に頭を垂れ武力を至上とするとも言えますねぇ」

「辛辣ー。なんぞ恨みでもあるのか?」

「いえいえそんな。ただ、軍隊に入っているなら兎も角、山賊や盗賊に身を窶す者も多いので少々邪魔かなぁと」


のんびりと呟く言葉に不穏さを感じつつも深追いしない銀二。下手につつけば鬼か蛇が出てくること請け合いだと今までの経験で知っているのだ。経験が生きたな。


「まぁそれはいいとして・・・そういえば旦那様。前から気になっていたのですが」

「ん?」

「ライラちゃんから聞いたのですが、火の宝具は刀剣の類と聞きますけど、どうしてそちらを使わないのですか?」

「あ~~~・・・アレねぇ・・」


クラリッサの言葉に苦い顔をしながら手綱を捌く銀二。


「いくつか理由があるんだが・・・まず一つは、剣術やらってのをやったことが無い」

「あらあら・・」

「包丁やらちょっとしたナイフやらで刃物を使ってて知ってるつもりだったが、実際に使ってみて素人が剣を振っても刃を立てられる気がしないんだよなぁ。よっぽど相手が体勢崩して動けないとか鈍間とかじゃないと当てらんねぇな」

「確かに、刃物は扱いが難しいモノですからねぇ」

「どっかのギルドで受付にも話したんだが、素人が振り回すなら鈍器の方がよっぽど効果的だろ。どこで殴っても一定の効果はあるし、どこ持っても自分を傷つける心配もあまりない。おまけに使ってるのが黒鉄のおかげで無茶な使い方してもまるで壊れない」

『―――』

「へいへい、乱暴にしてすいませんねぇ」

「あらあら、すっかり仲良しさんですねぇ」


うっとりと頬を染めて呟くクラリッサに、相変わらずだねぇと呟きながら抱えるように持っていた黒杖を彼女に渡し、受け取ったクラリッサは宝物のように抱き寄せながら黒杖を妖しい手つきで撫でる。


「嗚呼。やっぱりこの魔力を感じると体が火照りますわぁ・・・」

「お前さんも大概だよなぁ・・・。んで、使わない理由その2」

「あ、はい~」

「これをライラに聞かれると多分怒られるんだが・・・フランベルジュの特性がすっげぇ使いづらいんだよ」

「特性・・ですか?こう、剣が燃えるとかですか?」


クラリッサの言葉に否と答えながら難しい顔をして顎髭をさする。


「焔剣フランベルジュってのは、刀身が燃えてる訳でもなければ斬ったものを無条件に燃やすもんでもない。あれは・・なんて言えばいいかねぇ・・・・毒・・そう毒だな」

「毒・・ですか?とても想像がつきませんが・・・」

「結果的には斬られた相手は燃えるんだが、その過程は実は結構エグイ」


しみじみと頷きながら呟きアイテムバッグからフランベルジュを抜き取る。一見すればただ刀身が波打つちょっと特殊な形の刀剣。そこに魔力を流しても、外見上は特に変化は見られない。


「斬った相手の血中に焔剣の魔力を流し込み、焔剣の魔力以外の魔力と触れた時に焔剣の魔力が発火する。つまり、斬った傷口から毒を流して相手の小源オドを文字通り燃やすんだ、これは」

「それってつまりは・・・」

「斬られた相手は自分の体内が燃えていく。こえーのは、この波打つ刀身で斬ると出血を強いるってことだ」


体の内側からステーキだな、と呟けばあのクラリッサをして頬を引きつらせる凶悪性能だったでござる。


「例えばこれでアッシュウルフを斬ったとしよう。出来上がるのは毛皮もはぎ取れないし、肉も食えないほど全部黒焦げの死体というか炭だ。ついでに人間なんか斬ってみろ、断末魔やら死に様やら結構惨いことになるぞ」

「強いけれども、確かに使いづらいですねぇ・・」

「なんでこんな使いづらいもん作ったんだかなーってこの前まで思ってたんだが、こないだライラが鎮守の森のことを話して、それで漸く得心がいった」

「鎮守の森のことですか?」

「そう。そもそもこれの本来の持ち主は火の一族で、火の一族は鎮守の森で樹木系の魔物と戦う一族だ。つまり、そもそもが動物や動物系統の魔物に使うことを想定してないんだよ」


コンコンと刀身を叩きながら言えば、同じように納得した表情のクラリッサが頷く。


「たしかにぃ・・トレントを始めとした植物系の魔物は倒すのが大変ですからねぇ」

「戦場は森とかで延焼の危険があるだろうし、なにより並大抵の武器じゃ倒すのに時間がかかる。その間に仲間がやられたんじゃ大変だろうからなぁ。燃やすのは魔物の体内、ノコギリまではいかないにしろ、刀身を波打たせることで傷をつけるチャンスを増やす。そして魔力を流し込んでしまえば燃やすことができる。鎮守の森での戦闘に特化した武器ってことだろうな」

「なるほどぉ・・」


 「―――って訳なんスよ!」


「ん・・・どうやら向こうの話も終わったようだぞ」


奥からドドーン!とばかりに話を締めくくったエルノの声が聞こえてくると、銀二は煙草を新しく咥えなおしてクラリッサに戻る様に示す。


「旦那!いちゃついてたみたいっすけど聞いてたっすか!?」

「あー?今晩の飯の献立より大事な話だったかー?」

「あ、完全に聞いてなかったっすね!?俺っちの重石を抱えながらの渾身の漫談!」

「もう自分で漫談って言っちゃってるじゃねぇかよ」

「いやぁこれだけの美女とお近づきになれるとかサイッコーっす!」

「お前さん顔は良い方なんだから放っておいても女から近づいてきそうだけどな」

「いやぁそれがちょっと話すだけでみーんないなくなっちゃうんすよねぇ!不思議っ!」

「(煩いし・・そうなるだろう)」

「(ちょっと騒がしすぎるかなぁ・・・芸人としてみるなら面白いけど)」

「(そもそもタイプじゃありませんわぁ・・)」

「ああっ、女性陣からなんか冷たい視線がきてるっす!?なぜ!?」

「お前さんはもうちょっと落ち着きってもんを覚えたほうがよさそうだなぁ・・・」


クククと声を忍ばせて笑う銀二に、ガーンと衝撃を受けた様なエルノ。ちなみに未だに重石は乗せられたままである。


「こ、これが持つ者の余裕・・っすか!?」

「せめて大人の余裕って言ってくれよ・・・それで、闘技大会ってのはどこの街でやるんだ?」

「アッハイ、えーっと連邦の首都ルドニで開催されるんすよ」

「ライラ?」

「ルドニは・・・通らないな。この二つ先の街を超えた先で中央のルドニに向かうか北部地方へ向かうかの分かれ道があったはずだからな」

「ええ!?旦那たちはルドニいかないんすか!?せっかくのお祭り騒ぎなのに!?」

「どっちかってーと最終的に帝国の方に向かうからなぁ。俺らもただ観光旅行してるってわけでもなし、目的があって旅してるからな」

「そういえば旦那たちって、見たところすげー人種バラバラっすけど、何の旅してるんすか?」

「俺の格好見ればわかるだろ、巡礼だよ巡礼」

「巡礼・・・って大陸中の教会まわるってことっすよね?」

「そーだけどなんかあんのか?」

「いやぁ、今どき巡礼する人なんて聞いたことないっすからびっくりしただけっすよ」

「ふーん?」


ある程度馬タマのペースで歩かせながら、チラリと後ろをみる銀二。エルノも珍しいモノを見る目で銀二を見ていて、その視線に肩を竦ませながら煙を吐き出す。


「お前さんにも事情があって旅をしてるのと同様に、俺には俺の事情があって巡礼なんて旅をしてる。もちろん、こいつ等にだって目的があるわけだ」

「そう・・っすか。いやぁでも途中まででも良いんで乗せてくださいっす!このとーり!」


頭を下げようとしたのか、しかし重石にゴチンとぶつけて額をさするエルノに全員が噴き出し笑い声が馬車を包む。


「あの、これもうどかしてもらっていいっすかね・・?足の感覚が・・・」

「・・・不埒な真似をしたら命はないと思え」

「ひぃっ」


猛獣の目で睨むライラに本気で怯えるエルノをカラカラと笑いながら、馬車は一路次の街へと進んでいくのであった。

様々な思惑が入り混じる連邦で

銀二達は果たして無事目的地にたどり着くのだろうか!?



その思惑あたりに焦点を置いてちゃんと書いていきたいなぁ・・・

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