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2-事情はわかったがなんともややこしいことで・・・-

説明がなげぇぞ!というご意見お待ちしています

さて、話は少し遡る。


それは銀二達が謎の地下室に落ちる前、不可思議な空間で女神とあっていた時だ。


「それでは現状の説明をしなければなりませんね。」

「あぁ、こっちは急な出来事で頭がパンクしそうでね。ひとつ頼むよ」


ポリポリと後頭部をかきつつ銀二が言うと、女神はふわりと微笑みながら語り始めた。


「まず今いるこの場ですが・・・。正式な名称はありませんが、わかりやすく言えば世界と世界の狭間。本来結ばれるはずのない世界同士が繋がったことで生じる空間です。」

「せかい・・・世界ときたか・・・」

「ええ。基本的に一つの世界に住まうモノはその世界の事象しか観測することはできませんし、ましてや干渉することもできません。」

「しかし俺は実際世界の狭間とやらにいる。どうみても、人為的な方法によって」


そういいながら銀二は頭上の魔法陣を指さす。それをみながら女神もうなずき、話しを続けた。


「そう・・。貴方が住んでいた地球を含めた世界と、魔法が存在する世界アストリアを繋げたものがいます。」


そこから女神が話した内容はこういうものだ。

アストリアと呼ばれる世界の、とある王国が魔物をあやつる魔族と戦うために異世界から勇者を召喚するという計画が実行された。本来であれば干渉することのできない世界同士を繋げたのはこの王族特有の魔法によって行われたのだという。


「勇者に魔族・・・まるで昔のゲームみたいな内容だな」

「本当にそうであれば、ですけどね」


そういった女神の視線は少し険しかった。

なんでも、アストリア世界において魔族とよばれる人種と魔物との因果関係はなく、王国側の主張は事実無根であるという。ではなんのための召喚なのか・・・。


「貴方達の世界で魔力は存在しませんが、王国が継承していた召喚術式を通し召喚することで世界に適応させ、強い魔力を宿すことが可能なのです。その力を用いて、魔物の討伐や魔族への侵攻を企てているのですよ」

「あー・・なんだ、するってーとあれか?人間兵器を作りましょう、魔物や魔族を殺してくれたら万歳!もし死んでも異世界の奴だから関係ないよね!って言いたいのか?」

「要約するとそういうことですね。それで呼ばれたのが・・・」

「俺・・・じゃなく、あの坊主か」


ため息一つ吐きながら言うと、女神も困ったように微笑みながら頷く。


「本来王国が継承していた召喚術式は、あなた方の世界から適応者を一人アストリアに呼ぶものです」

「ん?一人だけ・・・ってーと、俺は」

「はい、完全に巻き込まれただけですね」


出来のいい生徒を褒めるように、語尾に音符がつきそうなくらい軽く告げられると、さすがの銀二も凹んだのか肩を落とす。


「はぁ・・・・んで?どうやったら戻れるんだい?」

「それが・・・」

「おい・・?おいおい?おいおいおい!?」

「お察しの通り、貴方達二人は・・・もう元の世界に帰れません。返す術がないのです・・・」


告げられた言葉に、今度こそ凹んだのか座り込む銀二。心なしか顔も青ざめた状態になっている。


「止めることができたのであれば、私たちも世界を繋げることは許さないのですが私達も全能というわけでもなく・・・」


聞けば召喚術には特殊な条件があるらしい。とある王族の魔力と精霊の魔力を用いること、魔法陣を描く塗料に千年生きた竜の血を使用すること、そして皆既日食の間に術式を発動させる事。


「皆既日食がなんでまた・・?」

「日食の際、私達神はその世界を見ることができないのです。本来私達神は世界を守るべく動くもの。異世界へ無理に道を繋げるなど本来あってはならないものですから、術式が発動しようとすれば止めることができます。しかし・・・」

「日食で干渉することができない間に術式が発動し、止めることもできなかったってことか」


そういって銀二は目をつぶった。



それから幾分か経ち、踏ん切りをつけたのか銀二が女神に問いかけた。


「それで、あんたは俺に何をさせたいんだ?」

「もう、よろしいので?」

「ああ・・・。凹んだって帰れねぇっていう事実が変わるわけでもない。それなら先のことを考えねぇとなあ」


そういって座り込んだままではあるが、顎の無精ひげをジョリジョリとさすり、不敵に笑う銀二。そんな彼の強さに安堵しつつ、女神もまたほほ笑む。


「貴方に依頼したいことは2つ。ひとつは、召喚先の王城に宝物庫に保管された、精霊の宝具をすべて奪還しそれをそれぞれの精霊教会へと返納すること。」

「精霊・・・宝具?」

「ええ、私達精霊神はその加護を武具や装飾品に宿すことができますが、とりわけ強い加護を宿したものを宝具と呼びます。この宝具を王城から奪還し、大陸各所の国にある教会へ納めてほしいのです」

「んな大事なもんがなんで王国にあつま・・・・あーもしかして?」

「ええ、王国は対外的には関与を否定していますが、暗殺者や盗賊などを雇い盗んだものです」

「ろくなことしてねぇなその王国・・・」

「先ほども言いましたが、私達は異世界召喚を基本的に認めません。故に、人の力だけで召喚をさせぬためにと術式発動に精霊の魔力を使うことも条件にしたのですが・・・」

「直接精霊に頼んでも断られるからと、魔力を宿した宝具とやらで代用した・・か」


銀二の言葉に申し訳なさそうにしながらもうなずく女神。


「それはまぁしょうがないとして・・・しかし問題はあるぞ?俺はどっちかといえばインドア派だし最近禄に運動もしてない。いきなり宝物庫に忍び込んで奪還しろって言われても・・それにその場所もなぁ・・・」

「それに関しては問題ありません。召喚術式でもう一人の来訪者が魔力を与えられたように、貴方にも私から魔力を付与いたします。それを用いて身体強化すれば素手で岩を砕くことも容易ですから」


にっこりとハートマークすら付きそうな語尾に、銀二は思わず口元を引きつらせた。


「あまり猶予はありませんが、それでも魔力を付与しそれの扱いを身に着ける程度には時間はあります。ここで少し練習していかれるといいでしょう」


感覚をつかめば身体強化は簡単ですし、と続けながらいう女神はその手のひらを銀二に向けて淡い光を彼に放った。その光を浴び、ほのかに温かさを感じながら銀二は目をつぶったのだった。


「ついでにその洞察力、スキルにしておきますので痕跡を辿ってくださいね!」

という発言を聞きながら。


―――

――



ふぅ、と息を吐き少し冷える地下室の石畳を踏みしめ、銀二が立ち上がる。それを見た騎士マルテインが組んでいた腕を下ろして問いかける。


「もう、いいのか?魔力酔いの回復には少し早いな・・」

「ああ。俺らの世界には魔力なんてものがなかったからな、体が驚いただけだったんだろうさ」


そういいながら体調を確かめるように、ぐるぐると肩を回し問題ないとばかりに一つ頷く。

ここに優れた魔法使いの一人でもいれば、銀二の体に渦巻く魔力と身体強化の精密さに驚いたことだろうが、不幸にもいたのは魔力察知に疎い騎士マルテインただ一人。

そのマルテインも、これで任務が遂行できると一つ息をつくと視線を出口に向け、体を動かそうとしたところで


ズドンという鈍い音と共に彼の体を突き抜けるような衝撃に、自らの鳩尾に拳をめり込ませる銀二の姿を確認して、彼の意識は闇に溶け任務は失敗に終わったのだった。


ドサリと崩れ落ちるマルテインのローブをはぎ取りながら、銀二はにやりと笑みを零す。


「悪ぃけど、ちょいと借りていくぜ~」


ローブを着こなし走り始めた彼の眼には、大人数で移動した痕跡と共に、少人数が移動した別ルートの痕跡をも映していた。


「(あの女神の言った通り、召喚術式が発動してしまえば精霊の魔力は必要ない。例え異世界人で事情を知らずとも、持っていると分かれば問題だらけの爆弾をいつまでも地下室においておくわけがない。地下室に宝具が無かった以上、先に宝物庫へ戻したと睨んでいたがどうやら正解・・・。この痕跡を追えば自然と宝物庫へいけるってわけだ)」


目深にかぶったフードから覗く口元がニヤニヤと歪み、足に込めた魔力を放出するようにして高速移動する銀二。幸い、宝物庫は近い場所だったのかすぐにその扉にたどり着いた。


「宝物庫って割に、見張りがいねぇんだな」


顎をさすりながら扉に近づき、そして鍵穴のない錠前を目にする。


―魔力錠―

特定の魔力をながすことで開錠・施錠を行う鍵。


「なぁるほど、これがあれば扉が破られることはない・・・ってわけね」


錠前をいじり、のんびりと告げる銀二。その口元はさらにニヤリと歪み、それと同時に錠前が地面に落ちる。


「悪いねぇ、おっさん・反則つかえんのよ」


そういって銀二は悠々と宝物庫に入っていくのだった。

ストーリーがなかなか進みません

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