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13―てってれー銀髪猫耳娘が仲間になった~(脱力)―

ジジジ・・・とタバコの先端が燃えるわずかな音がライラにまで聞こえる。そんな静寂の中、吸い込んだ煙を吐き出した銀二は、閉じていた目を開きライラへと向き直る。


「信じてもらえないだろう、荒唐無稽な話だがそれでもよければ諸々話そう」


こっちでは誰にも話してないんだがね、そう呟きながらベッド横の荷袋―先程ヒルデが置いていった物―から衣服を取り出して寝ているライラへ放り、彼女は顔面で見事キャッチを果たす。


「わぷっ」

「ぶっちゃけ忘れてたが上半身裸だったなアンタ。イルセの嬢ちゃんに簡単な報告がてらお茶でも貰ってくるから着替えときな」


そう言うやそそくさと―毛布を被っていたとはいえ着替えさせるのを忘れていた後ろめたさから―部屋から素早く出ていく銀二。先程までの話などから完全に意識が覚醒し理解が追い付いたライラは、その顔をさらに赤く染めながら着替えを果たす。



ギルドの仮眠室から出た銀二は、職員用の廊下を通りホールへと姿を現す。それを目敏く発見した禿げ頭の大男―ジョーンズ―が手を上げ声をかける。


「よう、治癒師の兄さん。ライラの姐さんは大丈夫か?」

「ん、ああ。傷もしっかり塞いである。失った血は戻せないから栄養のあるもん食って、安静にしておけば数日で元通り動けるだろ。・・・しかし、姐さんって。お宅の方が年齢は上だろうに」

「ワハハ!そうかそうか!あの傷で無事か!いつもながらにあの人の身体能力の高さには驚かされる。姐さんってーのも、何度かその能力の高さに助けられての敬称だ」

「・・・あんま、本人も嬉しくなさそうな感じな気がするけどな、それ。まぁ俺にゃぁ関係ないし、それにまだ彼女には2,3話さなきゃならんことがあるんで失礼するよ」

「おう、これと一緒に宜しく伝えといてくれ!」


そういって彼が投げ渡してきたオレンジによく似た果実を受け取ると、片手をヒラヒラさせてイルセのいるカウンターへと足を運ぶ。


「ギンジさん、お疲れ様です。ライラさんは大丈夫そうですね?」

「ああ、あっちの兄さんに話した通りさ。彼女も随分と慕われてるみたいだな」

「ええ、ライラさんはその実力の高さで上位に最も近い中位冒険者として有名ですから。もうちょっとだけ実績がたまったら上位に昇格されるって噂がありますからね」

「ほーん、なるほどねぇ・・・。ま、それはいいや。それはそうと、ちょいとお茶を二人分貰えないかい?まだ彼女にちょいと伝えておくことがあるんで、暫くはまだあの部屋に缶詰めになりそうなんだ」

「ええ、職員の休憩用のものでしたら構いませんよ。・・・それよりも、ギンジさん大丈夫ですか?昨日ライラさんの治療であんまり寝てないんじゃ?」


イルセが指摘すれば、事実銀二の目の下にはうっすらとクマができている。とはいっても元々浅黒い肌の男なのでじっくりと観察しなければわからない程度だが。


「なぁに、前には二日は寝ずに治療して回った経験もある。これぐらいなら問題はないし、終わったらさっさと俺も寝るさ」

「ならいいですけど・・・。それじゃ、お茶用意しますね。仮眠室まで届けますから、ライラさんのそばにいてあげてください」

「ああ、すまんね」


持っていた携帯灰皿にタバコを入れてイルセにあいさつすると仮眠室まで戻ろうとする銀二だが、不意に立ち止まり周囲をチラリと見渡し、数秒後に首をかしげながら部屋へと戻っていく。

その背中をじっとりとした視線で見続けている男に気づいているのかいないのか・・・。



ゴンゴンと扉をノックし、ライラの誰何の声に銀二が返答すると入室の許可が下りる。その声の後に扉を開ければ、ベッドから上半身を起こし、服を着替えたライラが腰かけていた。


「熱は大丈夫かい?」

「ああ。これくらいならば支障はきたさないよ。・・・まずは、改めて貴方に感謝を。貴方のおかげでこの命が助かった」

「あいよ、どういたしまして。しっかし、ホールにいた禿げた兄さんの言う通り、身体能力が高いんだな・・。想定よりもずっと回復がはえーや」


それともこれが若さか・・?と劇画調に表情を変化させながら近くの椅子を引っ張り、背もたれを前にすると、椅子をまたぎ背もたれに寄りかかりながら腰かける銀二。


「ジョーンズが何か?」

「なに、アンタを心配してたってだけさ。宜しく伝えておいてくれって頼まれてね。あとこれも」

「これはオランの実か。彼もマメな男だ。どうして中々あの強面で女性にモテるのも少しわかるな」

「へぇ~。中々の伊達男ってか。俺にゃぁ縁遠い話だね」

「そうか?ギンジ殿も・・・・まぁなんだ、身だしなみを整えれば・・うん」

「無理に褒めようとして失敗するくらいならほっとけ。いーんだよ、独り身の方が自由に動けるし」


ブチブチと負け犬の様に吠える銀二の姿に、思わずクスクスと笑い声が漏れるライラ。そうしていると扉がノックされ、イルセが顔を覗かせる。


「お茶、お持ちしましたよ。リラックス効果のあるハーブティーです」

「おおーなにからなにまですまんね嬢ちゃん。ありがとうよ」

「いえいえ、ギンジさんにもライラさんにもギルド員がお世話になりましたから。ギルドマスターも感謝を伝えてくれって私に言ってくるくらいですから。ここも、汚さなければいてくれていいって言ってましたよ」

「い、イルセ君!?」

「あはは、ライラさん顔真っ赤です。冗談ですよ~。それじゃごゆっくり~」


サイドテーブルにお茶を置いてさっさと逃げたイルセとその間に聳え立つ扉に、ライラは赤くした顔で睨みつける。案外耐性は無い模様、と心にメモしながら銀二はティーカップに口をつける。


「あーうまいなこれ」

「貴方はマイペースだなギンジ殿・・・」

「女性同士の会話には口を挟まないって決めてるからな。・・・さてと、それじゃ話を戻そうか」

「・・・ああ。焔剣フランベルジュを持ち小源オドを持たず、そしてこの大陸でもあまり見ない顔付き。貴方は一体何者ですか?」

「ただの人間・・って言っても説得力が無いんだろ?」


ローブのフードを取り払い、首を捻ってボキボキと骨を鳴らしながら答える銀二。どうみて真面目に答えている姿には見えないし、彼自身見せていないのだろう。少し目を細めて銀二を見れば、彼も寄りかかる背もたれの上に手を組み、顎を載せて少し眠たそうにしながらライラに視線を向けなおす。


「・・・この世界とは違う世界から来た人間、と言ったらどうだ?」

「違う・・世界?」

「魔法も魔導もなければそもそも魔力もない。その代わり科学技術という文明に発展し繁栄している世界。信じられるか?」

「・・・俄かには、信じられない・・・だろうな」

「そうだな・・・スマホはもう電池切れだから見せても意味ねぇし・・・。ああ、ライターならどうだ?ほれ、こーゆーの見たことは?」


そういって取り出したのは前の世界で当たり前のようにあったコンビニの100円ライターだ。


「なんだそれは。・・色付き水晶か?中に液体が入っているようだが・・・?」

「中の水は火花があれば燃える空気を液体として保存したものさ。こっちの世界なら火熾しの魔導具なんかが一般的なんだろうが、こっちでは・・・ここの歯車を回してここを押せば・・・」

「おお、火が付いた!こ、これは誰にでも使えるのか!?」

「魔力もいらなければ特別な技術もいらない。街の雑貨屋でパン一個と同じくらいの値段で買える、といったら信じられるかい?」

「パン・・・いっこ・・?」


ベッドからちょいちょい動く尻尾が目に入るが、極力追わないようにしながらライターに火をつけたり消したりを繰り返す。


「こういう技術が発展していったのが俺らの世界。その世界からこっちの世界に強制的に、ついでに巻き込まれで召喚されたのが、東銀二という男さ」

「違う世界・・・アズマギンジ・・・」

「まぁ無理に納得する必要もないだろ。俺の事より、知りたいのはこっちだろ?」


そういって取り出したのはフランベルジュ。その刀身の輝きに、少し呆然としていたライラの目がさらに細まり銀二を射抜くが、銀二は気にした風もなく肩をすくめて答える。


「そうおっかない顔で見るなよ。・・・さっき俺は巻き込まれて召喚されたと言ったと思うが、召喚される際に一人の存在に頼まれごとをされたんだ」

「・・・召喚魔法に介入する存在?」

「大地の精霊神さ。この世界で召喚魔法ってのがどういうものか知らんが、そもそも世界を超えた召喚魔法は精霊神が見張って行われないようにしているんだそうだ。だが特殊な条件下において精霊神の隙をつき異世界召喚を行った奴がいる」

「・・・」


話を続ける銀二の雰囲気が少しずつ変化し、部屋の中に張り詰めた空気が流れる。


「この国の王族達だよ。そして召喚の条件のために使われたのが―――」


そういいながらフランベルジュを床に刺し、右手の人差し指にはめられた蒼銀の指輪とボサボサの髪の毛に隠れていた耳に着けられた緑色の宝石のイヤリングを見せる銀二。


「精霊の宝具ってわけさ」

「フランベルジュ以外の宝具も・・・!?」

「ついでにあの黒い杖も宝具だそうだ」

「あ・・・あたまが混乱してきた・・・」

「まぁ茶でも飲んで落ち着いたらどうだ」

「・・・・その余裕さが少し恨めしいぞ」


精神的に痛む頭を押さえながら、銀二からティーカップを受け取り口をつける。


「とまぁここまで話して分かる通り、10年前の宝具強奪事件とやらの犯人が分かったわけだ」

「んぐっ!?ゴホッゴホッ!」

「おいおい大丈夫か?」

「あ・・あ貴方こそ問題の大きさが分かっているのか!?」

「人並みには理解しているさ。この宝具が戦争の火種になり得る厄ダネってのはな。だからこそ巡礼者を装って正体を隠しているわけだしな」


話したのはアンタが初めてだ、そう告げながらお茶を飲む銀二。その冷静な姿にライラも気を落ち着かせたのか、一つため息をつき銀二へと問う。


「――――なぜ、私に話そうと?」

「簡単な話さ。さっき話した精霊神の頼まれごとの一つが、宝具を元の場所へ返すことってことだからな。このフランベルジュの関係者であろうアンタには話しておくべきだと思ったまでさ」

「宝具の・・返却・・・そうか、巡礼者としていれば大陸中を旅しても不思議ではないと思ったわけだな」

「この霊峰越えの準備でここに足止め食らってるけどなぁ」

「それはしょうがないだろう。私とて祖国から越えてくる際には準備を整えたものだしな」

「―――それで、火の精霊の宝具の持ち主か、またはその関係者であるお前さんはなんでまた王国にいるんだい?」


スッと目を細め鋭くライラを見る銀二。その視線に晒され一瞬息を詰まらせ視線と尻尾を彷徨わせるも、ため息一つ吐くと銀二へと視線を戻す。ついでに尻尾はぺたんとベッドに落ちる。


「・・・私の一族は代々焔剣フランベルジュを受け継ぎ、鎮守の森で魔樹を払う防人の一族だ。私の一族は燃える様な赤い髪に褐色の肌が特徴なのだが・・・」

「―――お前さんは毛色が違うみたいだが?」

「血を濃く残すために一族の間で配偶しているためか、ごく稀に私の様なものが生まれるとは聞いたことがある。口さがの無いものからは落ちこぼれだの、灰の女だの言われたものだ」

「―――」

「防人の役割は一つ。長がフランベルジュで魔樹を焼き、他の者たちは火の異能で加勢する。しかし私の属性は火ではなかった。故に、フランベルジュが強奪され魔樹の勢力が強まっても私は一族の助けになれずにいた。だが、防人の役目は果たせずともフランベルジュの行方を捜すことはできる。そう考えた私は国を出て方々を捜し歩いた。幸い、獣人としての身体能力だけは父譲りではあったみたいだからな」

「なるほど、国を出て途方もない旅の空ってわけだ」

「だが・・・ようやく見つけることができた。ギンジ殿、一つお願いがある」

「―――なんだい?」

「貴方の旅に、私も連れていってほしい」


射抜く様な視線を銀二に送り告げれば、コワイコワイと苦笑しながら銀二も頷く。


「願ってもない話だ。この大陸もこの世界も俺にゃぁ未知の場所だからな。知ってる奴がいてくれるだけで助かるし、なにより宝具を返すときにいざこざが起きずに済みそうだ」

「ハハッ、そうだな。下手をすれば私の一族総出で手荒い歓迎となるかもしれないからな」

「・・・よろしく頼むわ、ホント」


ハッハッハと笑い声をあげるライラの一方、ぶるっと身震いをしながらこの選択に間違いはなかったと確信する銀二であった。

ライラは銀髪猫耳尻尾はライオン系の先っぽふわふわ系女子。なお冷静に見えるが尻尾は感情と直結してる模様でよく動くとは銀二の談。

下ネタは苦手。

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