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プロローグー年をとると眩しく感じやすくないか?-

読み専だった自分ですが、思い立ってついにキーボードをたたき始めました。

よくあるおっさん転移もののテンプレですが楽しんでいただければ・・・。

中世ヨーロッパの街並み、暗くなった石畳を店や住居の明かりが照らしている。そんな路地を金属音を響かせながら数人の男たちが走っていく。


「この周辺に逃げたはずだ!隈なく探せ!」

「はっ!」


銀色の鎧と抜き放たれた剣が煌めき、明らかに現代日本とは程遠いと感じさせる。ましてや、血走った目と怒鳴り声で飛び散った唾が決して映画撮影等の演技ではないことが伺える。

夜に差し迫ろうという時分、周囲の住人は遠巻きに見やりこそこそとうわさ話をしている。怒鳴り散らす騎士風の男たちと何事かと噂をする住人たちで瞬く間に騒然とし始める街並み。そんな彼らを路地のすきまから一人の男がのぞき込み、一つため息をつく。


「はぁ~・・・。やれやれ・・・ホント、勘弁してくださいませんかねぇ。うへぇ、あの男結構強いな」


うんざりした様子で再度ため息をつき、見つかるまいと暗い路地裏を進み闇に紛れる。身に着けたローブのフードを被り口布を当て顔を隠しながら走り始め、男はこの状況その発端を思い起こしていた。


「ホント、なんでこんなことになったのやら。面倒ごとは勘弁してくれよぅ。」


――

―――


男――東 銀二はその日宿直を終え、眠気とは反対に輝くお天道様を欠伸で漏れた涙目で睨みつけ帰路についていた。川辺の土手を歩く銀二―無精ひげが目立ち、仕事や研究の忙しさにかまけて伸ばしっぱなしのぼさぼさの髪の毛で少し老けて見えるがまだ30代前半―、近くの病院に勤める彼は、無精ひげの生えた顎をさすり、そして逃げも隠れもせん!とばかりに新撰組局長のような大口を開き、見事な大あくびを周囲に披露した。


「ふぁ~~~~~~あ・・。しかし眠ぃなぁ。くっそ、歳かねぇ・・・徹夜がつらくなったもんだ・・・。」


随分と長く男やもめとなっているためか、独り言をブチブチ垂れながら逆らえない大いなる流れ―老け―に悪態をつき始める。そんな様子をすれ違う高校生たちがクスクスと笑いながら歩いていくが、銀二は気にもせず(というよりはあまりの眠気に気が回っていない)歩いている。そんなこの近辺では当たり前の光景、誰もが疑いもしない日常―――――――――だった。


タッタッタッと軽やかに走る足音が響き、一人の男子高校生が銀二に近づいてくる。食パンを咥えながら走るなんともまぁ想像しやすい状況だった。周囲の高校生たちがのんびり歩くなか走っている男子は、まぁ部活の朝練に大遅刻をしたのだろう、学生鞄と一緒に剣道のものと思われる道具袋と竹刀入れを担ぎ焦った顔で銀二に近づいてた。

眠気が強いとはいえ、足音やガチャガチャとこすれる道具の音で銀二も彼に気づき、ぶつからないだろうとはいえ少し土手の道を開け、彼が通り過ぎるのを待つ。ちょうど、銀二と男子高校生がすれ違う場所はポカリと人がいない。


「頑張れ頑張れイケメン青少年~」


口元をにやけさせ顎のひげを摩りながらボンヤリと声を出し、男子とすれ違う。不自然さのない恐らく自前であろう明るめの茶髪と、食パンを咥えながらも苦笑する整った顔立ちを見送り、銀二も「さて帰るか」とばかりに体の向きを戻す。


その時だった。

突如銀二の足元が輝き、見たこともない模様―おそらくは何かしらの文字―が地面に描かれていく。


「なんっ・・・だこれ!?」


ざわりと騒がしくなる周囲と、光が強まり文様が描かれていく様はまるで映画の撮影か何かのようで、しかして周囲にはそんな撮影機材もスタッフなどもいない。


「うわわわわ!?なんだこれ!!」


少し幼さが残る男の声に、銀二が顔を振り返らせると、先ほどすれ違った男子高校生が驚きの声を上げていた。


このままでは不味い――!

直感で察した銀二は、すぐさま光り輝く紋様から離れようとしたが――


「あ、足がうごかねぇ!?」


普段からさほど動じないタイプの銀二であっても、さすがに見えない力がその身を封じ込めたとあっては焦りを隠せなくなる。


「(どうする!?っていうかなんだよこりゃあ!?)」


唯一動かせる首から上を巡らせ、現状の把握を始めた銀二はすぐに気づいた。


「(あの坊主を中心に地面の模様が広がってるっ?)」


職業柄、小さなことでも見逃すまいと鍛えられてきた洞察力が、この異常な状況の中でも正常に働く。それは自信が頼りにする技能で、それが問題なく働いてることで銀二は冷静さを取り戻していく。


「(まるで魔法のように止められた体、読めない文字と模様・・・魔法陣?あとは・・・・。)」


周囲に目を走らせて行く中でまた一つ気づく。

周囲の風景、驚愕に歪む人の表情、川の流れが非常に遅い。まるでスローモーションのよう―否、銀二が目を走らせてる間にも、足元の紋様―魔法陣が完成し、風景の動きが完全に止まった。


「(時間が遅く・・?いや、止まった!?)」


足元の魔法陣がその光を加速度的に強めていく中、度々世話になったことがある脳内非常ベルが鳴り響き続け、状況の打破をしようと周囲の流れとは逆に銀二の思考回路は高速に動き始める。


「(動きが止められ、そして周囲の時間が止まった。時間・・いや、空間?時空間に作用しているのか?)」


目も明けられぬほどに輝く魔法陣が、まさに臨界を迎えひときわ強く輝いたとき―――


二人の男が世界から消えたのだった。


―――

―――

―――


あまりの眩さに目をつぶっていた銀二は、光が落ち着いた中でゆっくりと目を開く。


「なんだぁ・・・こりゃ・・・」


思わずといった風に呟いた言葉は、しかして周囲のあまりの広大さに次第に消えていった。

白の様な、金色の様な不可思議な世界。どこまでも変わらぬ色、地面に立っているようでしかし感じたこともない浮遊感にも包まれている感覚。途方に暮れて思わず見上げれば、


「ありゃ、さっき見た魔法陣か?」


土手の地面に描かれた魔法陣がはるか頭上で輝き、もしかしてと思い下をみれば同じ魔法陣が遥か下に輝いていた。

ジョリ・・と無精ひげの生えた顎をさすり、この状況でも思考を巡らせる。


「思考を止めない、なるほどなかなかどうして面白い御仁ですね。」

「っ!?」


不意に背後から響く声に、バッと音を立てて振り返り―――

ポカンと間抜けに口を開けて呆けることになる。


茶色の長い髪、日本人とは明らかに違う堀の深い美しい容姿、均衡のとれたプロポーション。

俗に言っても女神だった。


「ふふふっ、容姿を褒められるというのも中々良いものですね」

「うぉっ!」


たおやかにほほ笑む表情と、その言葉に自身の思考が伝わっていることに思い至る。

それと同時に、それを肯定するように目の前の女神は頷きをかえした。


「ま・・・まいったねこりゃ・・・」

「ふふふ、まぁそう硬くならずに。それよりも―――お話ししなければならないことがございます」


微笑から一転、真剣な表情に切り替えた女神は銀二へと声をかける。

その声にスイッチが入ったのか、銀二もその垂れた目をキリリと引き締めながら女神に視線を向ける。


「貴方の状況、そして貴方へ依頼したいこと。聞いてくれますか?」


あ、これはのっぴきならない状況だ・・・と観念したのか、銀二は思わず視線をあげため息を一つつくのであった。


短めですがいったんここまで・・・。

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