頑張る
「妹の大切なものを奪った奴らの場所を教えてくれない?」
ソルはウィズに向かってにこやかに言い放った。ウィズはソルの言った言葉にぽかんと口を開け、その言葉を理解した瞬間、再び涙が流れ始めた。
「ソルさっ…!!ソル様っ…!!」
「あーもう、ソル“様”はもうやめようよ!なんかくすぐったいんだよね。」
ソルは勇者と自分を重ね、敬語で呼ばれることを少し敬遠していた。自分にはあれほどの覚悟も自身もない、なのに同い年、年上の人に敬語で話されるのは勇者をないがしろにしている気がしていたのだ。
「それよりほら、僕のことはお兄ちゃんって呼んでよ、もう“家族”なんだよ?」
ソルはウィズを抱きしめ頭を撫でる。
「ソルさ…お兄ちゃん!ありがとう……!!」
その行為でさらに涙を加速させてしまい、ウィズが泣き止むまで30分ほどが掛かった。
「━━━もう大丈夫です、ありがとうございます。」
泣きやんでソルの胸元に押し付けてた顔を上げるウィズ、少し恥ずかしかったのか目の他に頬も赤い。
「うん、…もう大丈夫?」
「はい、お兄ちゃんには心配をかけました。」
この30分でお兄ちゃん呼びを定着させたが、ついぞ敬語が崩れることはなかった。
「うーん…やっぱ敬語はやめてほしいんだけどなぁ…。」
ソルは小声でため息を漏らす。
「…?何かおっしゃりました?」
「ううん!?ちょっと気合を入れようとね?」
「…そうですか。」
ホット息をつくソル、そしてすぐに真面目な顔に戻り、ウィズに問いかけた。
「それじゃウィズ、その家まで案内してもらっていいかな、君は案内まででいいよ。」
「…いえ、大丈夫です。私も多少ですがお力添えはできます!もちろんもう死のうとなんて考えてません!!」
ソルの言葉を一蹴し力強く言い放ったウィズ、もうさっきみたいに弱気のウィズの姿はどこにもなかった。
「ん、ならウィズには大事なお仕事をあげよう、君が成功するかしないかで、この復讐の意識が変わる。」
「意識…ですか?」
「そう、世間の意識がね、成功すれば“魔術師”にも碌でも無い奴がいることが世間に知れ渡り、失敗すれば“獣人”は碌でも無い奴という烙印を押される。この違いが大変なんだ。」
「……獣人が虐げられないように…ですか?」
「賢いなぁ、そう、獣人の方に悪い意識が向けば、獣人はこれから奴隷のような扱いが広がってしまう可能性がある。僕はそれが気に食わない。」
ソルは目を細め爪を噛む。怒気が魔力となり大気を震わせた。
「…まぁ、これは個人的な問題、肝心なのはウィズの家族、それじゃ、行こうか。」
ウィズを先導させ、ソルはその歩勧めて行く。そして…
「…ここが、私が買われた場所です。」
辿り着いたのはソルの家の近くで起きた山火事で出張っていた自警団の住む村、そこから少し離れた山の近く、大きなその家には禍々しい気配が見て取れる。
「さぁて、それじゃあ始めますか。」
ソルはそう言って、自身の魔素を全身に廻していった。
遅くなってほんとごめんなさい!頑張って見たんですけど遅れました(-_-;)
しかも短いです。次は何とか…何とかしてみたいなぁ…。