妹
「なんっ…これ・・・!?」
「・・・うん、君が買われたのはおそらく魔術師の家、君を離したのは刻印魔法をつけて村を見つける為だろうね。刻印魔法っていうのは付与魔法で、つけた相手の魔素を感じられるようになったり、少し魔素を変換させて体の自由を奪ったりっていう魔法なんだ。それを見張られて、ある程度移動しなくなったから、村の位置を発見したっていう方法だと思う。そこから例の“人たち”に回収を頼んで、痕跡が残っていないように放火ってところかな。」
「うそっ…私っは…!!」
「そう、君はただ“帰っただけ”。酷いよね、魔法ってのは本来人々に幸せを与えるよう作られたものなのにさ。それが今は窃盗や人攫い。ましてや殺人なんかに使われるなんてね・・・。」
「・・・。」
ウィズは黙ってその場を動かない。ソルは苦虫をかみつぶしたような顔をする。なんて言葉を掛けようか悩み、ウィズの瞳を見た。
「・・・ダメだ。今君が考えている行為には僕は賛成できない。」
その瞳は、憎しみに染まっていた。
「・・・何故ですか。」
「あまりに危険すぎる。たとえすべて成功したとしても、そこにあるのは虚無だけだ。」
「でも…」
ウィズは唇を噛む。強く噛み過ぎて血が出ている。
「それでも、あいつらに復讐しないと気が晴れない!!」
木霊する絶叫。大気をびりびり震わせるほどの怒りが込められていた。しばらくの沈黙の後、ウィズは再び口を開いた。
「ソル様、私ね。“捨て子”だったんです。」
「・・・。」
「生まれた時から両親が居なくて…、ずっと家では一人でした。でも全然、寂しいとか、悲しいって気持ちはなかったんです。村のみんなが私を育ててくれましたから。全然寂しくなかったんですよ。」
「・・・。」
「昨日もお隣のお婆ちゃんがアップルパイを焼いてくださって、本当に美味しかったですよ…それが、たった一日で…?」
「…うん。」
「…ソル様、貴方にはわからないでしょう?家族がいて幼馴染が居て、友達がいぃっぱい居て・・・。村で失踪事件が多発してるって聞いて、私居てもいられなくなって…。すぐ帰ってこれた時は安心して凄く泣いちゃったんですよ?そんなのソル様に理解なんてできないでしょう!?」
途中から涙を流しながらソルの方を睨むように見るウィズ、その覚悟は固いようだ。
「うん、ごめんね。わからない。」
「だったら口を!!「・・・でもね!」
言葉を遮る。ウィズは少し驚いたように目を見開いた。
「僕にはわからない、どう考えてもわからない、けど。でもさ、僕にだって死にに行く人を止める権利はあるはずさ。」
ウィズは驚くその顔を下に向け、悔しそうにまた唇を噛む。」
「…じゃぁ、どうすればいいんですか。私ができることなんて、あと“復讐”か“死ぬ”かだけなんです…!!」
「うーん…。」
ソルは少し考えたあと、ポンと手を叩き、閃いたかのように顔を輝かせた。
「じゃあ、その命僕に頂戴?」
「……えっ?」
「死ぬしかない、とかそんなこと言ってる位ならさ、僕にに頂戴?」
呆気にとられるウィズ、対象にソルは楽しそうに話す。
「僕、妹って欲しかったんだよね!!姉みたいなお友達はいるけど、下の子っていなかったから中々不思議な感情が生まれるね!!」
ウィズは先程の悲しい顔が嘘のように、怪訝な顔をし始める。
「あの…ソル様?」
「やだなぁウィズ!ソル様なんて他人行儀な!!次から“ソル”か“お兄ちゃん”って呼んでね?」
そしてふとソルは思い出したかのように顔を戻す。
「あっ、そうだ。」
「…?」
「…可愛い妹の家族全員持ってかれちゃったままだったね。」
「ッ!!…。」
ウィズの顔がまた陰り始める。しかしソルは陽気のまま話し続ける。
「じゃあやっぱ取り返さないとね!可愛い妹の顔がこんな曇ってるままじゃ僕が悲しくなっちゃうよ。」
「…えっ?」
そうして、ソルは少しにこやかなまま、しかし目は笑っていない、そんな顔でウィズをみる。
「……ねぇウィズ?君を“買ってしまった”」大馬鹿者の家はどこかな?」
ソルの魔素は徐々に高まっていった。
今回短くてほんとすみません!!
あと前回も忙しかったのがあって中々文がおかしい、話がすっ飛んでる場所が多々あると思います!!(´;ω;`)
徐々に直していくのでどうかご勘弁を。