息抜き
ソルの家、ソルの部屋でリズはソルを看病するために家に来た。
「おはよソル!!もう体は大丈夫?」
「うん、リズちゃんおはよう。よく寝れたしご飯もいっぱい食べたし大丈夫だよ。」
「…そう、よかったわね!」
リズは知っていた。今日の朝ソルが嘔吐していることを。ソルの母親が教えてくれたのだ。リズはこれを、魔素不足のせいだと考えている。
「リズちゃんの看病のおかげだね。いつも迷惑かけてごめんね。」
「そんな気にしないでいいわよ。私たち家族みたいなものなんだから。家族は助けわないと!」
リズはいつもより気丈にふるまっていた。そうじゃないとソルがまた倒れそうな気がして。
「そうだ!今日は休みだし、街へ買い物にでもいかない?」
ポンっと手をたたくリズ。
「いいよ。ついでにお買い物してくるものがあるか聞いてくるね。」
「はーい。」
ソルはそういって母親のもとへ行く。
「あー!久しぶりにソルと町へ出かけるわね!すっごい楽しみだわ!甘いものも食べたいしお洋服も見たいし、やりたいこといっぱい過ぎて困っちゃう!!」
その場で体を上下左右に揺らす。本当に楽しみだったのだろう、自然と笑みがこぼれている。
「お待たせ、それじゃ、行こうか。」
「うん!」
そうやって二人は、近くの港町へと歩いていくのだった。
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「ん~~!!おいひいね。ソル!!」
「うん、凄く甘い。アイスなんて久しぶりに食べたよ。」
「そうね!しかもあのおじさん『こんな小さいのに買い物とは立派だね』とか言っておまけしてくれたもんね!!」
「また後でお礼しに行こうね。」
「うん!」
買い出しが一通り終わり、休憩のために買ったアイスに舌鼓を打つ二人。その光景は容姿も相まって見る者全員の頬を緩ませた。
「あ、リズちゃん。ほっぺにアイスくっついちゃってるよ。」
「うそ!?取って取って?」
などとやった時には、お姉さま方からの黄色い声援や「尊い・・・。」などの声がどこからともなく聞こえくる。
「坊やたち、楽しむのはいいけど、あんましはしゃぎ過ぎちゃダメだよ。」
そこに突然、隣にいた老婦人が声を掛けてきた。
「アラ、お婆様こんにちわ、いったいどういう事かしら?」
「最近、町に『人攫い』が現れるようになったんだよ。あんまりはしゃいでいるとその『人攫い』に出会ってしまうかも知れないよ。」
「…『人攫い』ですか?」
ソルの問いに、老婆はコクリと頷いた。
「えぇ『人攫い』。なんでも、小さい子を狙って活動しているようで自警団も躍起になって探してるんだけど、一向に捕まえられえないのよね。」
「へぇ。案外ここも物騒になってきたわね、でも大丈夫よお婆様。私には素敵な騎士様がいるもの!」
そういいながら。ソルの腕に絡みつく。その行為にまた周りが沸き立つ。
「おや!随分と頼もしいナイトも居たものだね。たしかにそれなら安心だわね。」
「うん、リズちゃんはしっかり守らなきゃね。僕頑張るよ。」
「ホホホ、美しいねぇ。これが愛情ってやつかい。」
「どっちかって言うと親愛かな。家族同然に育てられたからね。」
「中々聡い子だね。私が小さい頃なんて野原を走り回って勉強なんて一切しなかったわよ。」
「うん、少し変わった先生がいてね。暇があれば近所の子供を集めて教えてもらってるんだ。無償で。」
「それは…ほんとに変わった御方だねぇ…。」
この世界は今、魔獣の大量増加による作物不良や魔獣退治などで、人間は割と危機に陥っていた。食べ物を確保するためにお金持ちはそのあり余る財力を存分に使うが、平民や貧民はどうにかしてお金を確保しなければならない。そのため、無償で授業を行うアニーは近所でもちょっとした変わり者だった。本人は「子供たちとのかかわりがあれば十分です。」と言って頑なにお金を貰おうとしない。
「でもいい先生だよ。今度お婆さんも会ってみたら?」
「私が?ホホホ、会うには数十年遅かったかしらね。もうこの年じゃ教えることの方が多くなっちゃったわ。」
「そう?…あ、そろそろ行くねお婆さん。『人攫い』の件、教えてくれてどうもありがとう。」
無くなったアイスと真上から見下ろす暑い日差しに、ソル達は少し参りながらもお昼ご飯のため帰路に就く。
「あら、じゃあしっかり守ってあげなさいよ?『騎士様』?」
「うん、お婆さん、また会えたら会おうね。バイバイ。」
お婆さんと別れて後ろを振り向く・そこには大勢のお姉さんたちがゆるんだ顔をして大勢いた。
「「?」」
二人して理由がわからなのでお互い顔を見合わせる。その動作で我に返ったのかお姉さん型は何もなかったかのように、しかし二人のことはちらちら見ながらも、バラバラに散っていった。
「何だったんだろうね。」
「いっぱい居たね…。まぁでも、早く帰りましょ!アイスも食べたし、お買い物もできたし。今日は楽しかったわ。」
「あ、でももう一つ寄る所があるよ、市場でお野菜を買ってきてって言われてるから。」
「ほんと?じゃあすぐ行きましょ!」
そうして市場の近くまで来る。結構賑わっており、明るい雰囲気が漂ってくる。
「ソル、貴方は左の通路をお願い、私は右側から回って買ってくるわ。あっち側で会いましょ。」
「うん、リズちゃん、人波に飲み込まれたら落ち着いて周りを見て隙間を縫うようにするんだよ!さっきみたいに暴れちゃダメ!」
「わ…わかってるわよ…!見てなさい!無事にあっち側までたどり着いて見せるわ!!」
(ホントは一緒に行ってあげたかった…けど。)
ソルとしては先ほどアイスを買うときも人の波にのまれ、前に行っても行っても売り場にたどり着けないという事件があったので、心配なのである。最後はリズを先に座らせ、ソルが買ってきて事なき事を得た。
(心配だ…。でもどうせ付いていったら怒るんだろうなぁ…。)
「…あ!今絶対“心配だから付いてくって言ったら怒るだろうな”って思ったでしょ!!」
「えっ!?凄い!!どうしてわかったの??」
「もぉぉ!!馬鹿にして!私一人で大丈夫よ!!」
そういって一人でにトコトコ歩いて行ってしまった。
(あぁ。何だろう。嫌な予感しかしない…。)
これから起こるであろうリズ探しの時間を考えながら。反対側へと歩き始めた。
その十数分後。
「いやぁぁぁぁぁ・・・。」
小さな悲鳴がソルに聞こえた。
「まぁそうなりますよね…。」
うまい具合に人の波を避けながら先に待ち合わせ場所に着くソル、少し急ぎ足になって、リズの声が聞こえた付近に近づく、そこには…。
「うぅ…、ソルぅ…。」
そこには、随分と流されたのだろう、息絶え絶えにソルの名前を呼ぶリズの姿があった。
「リズちゃん…大丈夫?」
「うん…ごめんね?買い物は終わったんだけどね?その後どかって人が来てね?うぅ…次からは私と一緒に来て?」
「うん、絶対に離れないようにしようね…。」
手をぎゅっと握りてくてくと歩く二人。その後二人はお昼ご飯を食べて、午後は二人でゆっくりしていたそうな。
とょっとした閑話休題のつもりで書い来ました、でもたぶんかなり本編に関わるんだろうな…たぶん。
次回はまた来週金曜日に投稿します。