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5章-2 本当の話

「私も恥ずかしいよ。このくらいで私が死ぬと思っているのかい?」

体制を整え、ぐらぐらと揺れる頭を抑える。

眉間には銃弾一つ分の穴が空いていて、かぼちゃの片が出てきている。

普通なら即死していただろうがこれもマリンのおかげなのだろう。

私はここで死んではならないのだ、どうしても。彼女を守らなければ、彼女が救われなければそんなの嘘だ。

たった一人の少女にあんな…。

いや、今考えるのはよそう。私が今考えるべきはどうやってあいつに勝つか、だ。

『これもまた、マリンの力か。どちらにせよ、君達じゃあ僕には勝てない。大人しく楽に死んだ方がましだと思うんだけどねぇ?』

もう一人のジャックが手元に鎌を出現させ、ジャックの元に飛んでその頭めがけ鎌を振るう。

速い。

速かったが、きっとマリンが援護魔法をかけてくれているのだろう体が軽く柔軟に対応することが出来た。

ジャックも手元に鎌を出現させ、振りかざされた鎌を柄の部分で抑える。

「何を言っているんだい?素直に倒れるべきは君の方だと思うけどねッ!」

力いっぱいに押し返せば、相手は後ろに飛び距離をとる。

相手の攻撃はかなり重かった。

これを何度も繰り出してくるとなると勝つどころか防ぎきれるかすら危うい。

せめてマリンだけでも逃がしておくべきか。

「マリン、君は先に行っていてくれ。私は後から追いつく」

「ううん、私も、戦います…!」

杖を両手で持ったマリンが隣に並ぶ。

服装は変わっていないようにも思えるが、体外へ放出されている魔力量が明らかにいつものそれとは違うため変身しているのだろう。

そんな無茶な、とも思ったが、感じられる魔力の質が先程の少女や、これまでに見てきた魔法少女のそれとは全く別格で、きっと魔法少女の中で一番と言っていいほどのものに感じた。

「後方からの援護射撃しか出来ませんが、助太刀します!」

「うん、君が助太刀してくれるなら私も心強いよ」

紫の焔をいくつか周囲に出現させ、それを相手に飛ばすのと同時に相手の前まで移動する。

鎌を相手の胴体めがけ横に一線引くのと同時に、後方から魔力弾が相手を追うように飛んでくる。

ジャックによる一撃は弾かれ、その後のマリンの攻撃も全て焔で相殺されてしまったが、この調子で押せばあるいは勝利もある。

何度も何度も鎌を打ち合い、援護射撃を弾かれ、またそれを繰り返す。

「これで決める!」

お互いに疲れが見え始めた頃だろうか、相手がほんの一瞬体制を崩したところを狙って残る全ての力を込めて鎌を振るう。

ジャックともう一人の間に紅い液体が舞い上がる。

「な…?」

勝った、マリンとジャックがそう確信した瞬間、ジャックの視界は眩み腹部に違和感を覚えた。

ジャックの腹部を見下ろしてみれば、もう一人のジャックの腕がジャックの腹部を貫通していた。

『ふふふ、ふはははは。無様、無様だなぁジャック・オー・ランタン。どうした?驚くことでもないだろう?君の体験することを、もう僕は体験しているんだから』

ああ、そうだ。そうだった。

こいつも紛れもない私で、私よりも進んでいるのだ。

それなら当然今回の私の行動はすべて丸わかりなわけで、勝つのは当然なのだ。

『そうさな、唯一違うことと言ったら先にあの女を殺してしまったことだろうか』

マリンよりも後ろで倒れている少女を見下げてそいつは言う。

少女はうつ伏せに倒れていて、胸部からは多量の血が溢れ出ていた。

「…げろ」

『ん?何か言ったか?』

「逃げろ…マリン」

こいつの狙いは私であっても、それ以前にきっとマリンなのだ。

私が負けてしまった以上、彼女を守る存在はない。

きっと今の彼女じゃこいつに勝つことなんて出来ない。

「で、でも…!」

「いいから早く!」

声を出す度に体内から血を含むドロドロとしたものがこみ上げてきそうになる。

『なあ、僕。僕が素直に逃がすと思っているのかい?』

まずい。

そう思った時にはもう遅い。

ジャックの体から腕を引き抜けば、転移を使ったのかマリンの前に現れる。

そいつが鎌を振るい終わった頃には、一つの首が宙を舞っていた。

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