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私にはそんなに変わったように見えないような・・・。
床屋さんは今度こそフカフカの革張りの椅子に座らせてくれて、シャキシャキと髪を切ってくれましたが・・・。
あんまり、長さが変っていません。
私は床屋さんを無言で威圧しました。
もっとバッサリ切ってといったじゃないか。
困ったような顔で、床屋さんは外を指さしました。
そこには睨めつけるようにして立っている評価屋がいました。
そうですか、そういうことなんですね。評価屋が髪を短くするなと差しずしてきたと。
どうせ家で切っても同じです。こうなれば、とことん、子供の遊びに協力しましょう。
私はたたきつけるように1000円を置くと、外で見張っていた評価屋を上から睨め付けました。
いくら猫背になっても大人の方が身長は高いのです。
しかし、そんな私の睨め付けなどモノともせずに、評価屋はまたしてもグイグイと腕を引いていきます。そこは婦人服売り場の試着室コーナーでした。
中に無理矢理押し込められ、外からドンドン服やらくつやらアクセサリーが投げ込まれます。
しょうがないので、私は着替えてみることにしました。
ウエスト切り替えのワンピースはふんわりするように細工されているのか、形が崩れません。袖口がレースで凄くかわいいです。アクセサリーはネックレスだけで、ハンドバックと靴は革製品でしたが、さっき磨いたばかりのようにピカピカしています。
足を通してみると、まるで長年はいてきたようにぴったりしています。
随分とぴったりしているので少し気持ちが悪いくらいです。
けれど、姿見に映った私は今までの私ではありませんでした。
エレガントで足がほっそり長く見える、美人なお姉さんです。
ちょっと感動してしまいました。
でも、ダメですね。だって、どんなに綺麗になっても私は私のままです。
恥ずかしくて、しゃべる事もできません。
なんだか、しょぼんとしてしまいました。
すると、しゃーっと勝手にカーテンが開きました。
あー入ってます!!
立っていたのは評価屋でした。
「・・・」
評価屋は私を矯めつ眇めつ見たのですが、はあ・・・とため息をつきました。
分かりますよ。見た目だけは美人になりましたからね。
「ちげー」
???
何が違うのでしょうか?
「やっぱ、あんた、見えねー。それ、やるから、モッカイ来て。今度こそはあんたに似合うパターン見つけるから・・・。クソ、勉強不足なのか!?」
「・・・なんの・・・べんきょう?」
「パターン。俺、パタンナーになりたいの。今まで、見てきた人間全員がパターン見えてたのに、あんただけ見えねー。あんたもしかして、宇宙人?」
私は思わずこらえきれなくなって大きな声で笑いました。
ウチュウジン!?今時聞かない言葉です。
人前で初めて笑ってしまいました。恥ずかしいです。
「ようやく笑ったな。あんた、笑ってる方が似合うぜ」
なんともマセた評価屋との出会いでした。