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~4~

何が違うのか今一理解できません。

よしえさんというオバちゃんは無遠慮にベタベタと手で胸をひとしきり触ると言いました。


「あなた、鳩胸はとむねね」


鳩胸とはなんぞや?と首をかしげる私にご丁寧にフィッティングルームの外から少年が説明してくれました。


「鳩胸ってのは、胸の肉が前の方にでてくる体格してる奴って事。主に骨格の疾患によっておこりやすい。今まで何かの疾患にかかってなくて、医者が何も言ってないなら、骨格が変形してるだけだ。胸がでかく見えるだけだ。気にするな」


いやいや。疾患とかめっちゃ気になる。なに、私ってばいつの間に病気になっちゃったわけ。


「ちなみにだが、お前のは疾患というより骨の変形に近い。別に異常はないと思うけどね。まあ、気になるなら俺が視てやってもいいぞ」

「は!?ば・・・ばかぁ」


頑張って抵抗してみました。馬鹿って言えました。

しかし、その後はずっと少年のターンでした。

フィッティングルームで正しい下着の身に着け方と、新しい下着を買わされました。

でも、こうして、ちゃんとした下着を着てみると、胸がつぶれてなくて随分と楽ちんです。

これが、みんなの普通なんですね。なんだか、不思議な気分です。

おお。胸が揺れるゆれる。

しかし、少年はこれでも満足できないようで、私をさらに引っ張って行きます。

今度は化粧品売り場です。

化粧は得意じゃないので、勘弁してほしいです。

あの絵具みたいなのを塗ると肌がひりひりしてかゆくなってくるので大嫌いなのです。

そんな事を私が言えるはずもなく、私は下着売り場と同じように、化粧品売り場で髪をまとめられて、冷たい化粧水を塗られました。

かゆい・・・。


「あんた、この化粧水じゃかゆいだろ」


なんで、余裕しゃくしゃくで、決めつけ系で少年は話すのでしょうか。

とにかく、間違ってはいないので早く拭いてほしい。

少年が今度は違う化粧水をコットンに含ませて、ふきました。

あら不思議。かゆみが止まりました。


「やっぱ、こっちか」

「あら?評価屋さん、今日は可愛らしい子をつれてるわね~」

「ともこさんも今日のスタイルばっちりだね。特に口紅がいい色してる!」

「やだわ、すぐに化粧変えてもわかっちゃうんだから」


てか、こいつ何物!?

もはや、私の中で少年のイメージがどんどん変わっていきます。

ショッピングモール中のあらゆる人に知られていて、親しまれる評価屋とは一体、何物なのでしょう。というか、そもそも、評価屋って何?

何を評価しているの?

そんな事を私が思っているとも知らず、評価屋さんは私にメイクを施して、今度こそ床屋さんに戻ると思いきや、今度は婦人服売り場にきてしまいました。

いやいや、ショッピングモールの服とか高いから!

それに・・・。


「あんた、体型隠してるだろ」


ぎくりとしました。確かに隠しています。


「あんた、手足が人より少し短いのか、大きめな服でごまかす癖あるだろ」


そうなのです。私は足と手が短い典型的な短足なので、いつもだぶだぶのシャツにだぶだぶのズボンをはいています。以前、ブーツカットのジーパンを買って、裾を詰めてもらったら、ブーツカットのところが全部切られてお店の人に爆笑されました。二度と行きたくありません。


「まあ、そう慌てるな。あんたの身体は既製品じゃ満足できないって言っただろ。俺が、パターンから組み直す。布さえあれば既製品の服からでも作れる」


意味が分かりません。パターンって何?


「型紙って言った方が分かりやすいか?あんたの身体をここまで変えてきた俺だから、寸分たがわず、完璧なパターンを作ってやる。そうだな・・・、夏だしワンピースがいいか。後は、俺が縫ってる間にカットして来い」


評価屋は唐突に手を放しました。カットは自分で見ないんですね。そうなんですね。


「あんたは子供か。早く行ってこい」


評価屋はすでにストライプのワンピースをもって、手芸屋さんの方に向かっていきます。

仕方ないので、言うとおりにしてやりますか。

これも、子供のごっこ遊びに付き合う優しい人間であるという、近所への親切アピールのためです。

床屋さんに行くと、店主が満面の笑顔で迎えてくれました。


「いやあ、見違えたね。本当に変わってるよ」


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