~3~
何がダメなんでしょうか。ぶっちゃけ、人生の半分も生きていない小坊主に説教をもらっているほど、私は暇ではありません。
私は小坊主を押しのけて、カットの椅子に座りました。
すると、先ほどの小坊主が人の顔をじーっと見てきます。
はっ!?もしや近所の小坊主だったのでは!?やばい!?言いふらされる!?
私は途端に怖くなってきました。てか、床屋さんも早くこんな小坊主追い出してよ!!
そんな私の思いとは裏腹に、小坊主に向かって店主は気さくに声をかけます。
「まぁた、お人形ごっこかい? 評価屋さん」
「いやいや、今日は見えないんだ」
なんの話なのかさっぱりです。私は早く切って貰ってかえりたい!!
何故なら駐車場が夕方には混むから、帰りにくくなるから!!
そんな私の思いとは裏腹に評価屋と呼ばれた小坊主がニヤニヤ笑いながら店主に言います。
「この人の服が見えないんだ」
「珍しい。評価屋がみえないとは・・・、この子は一体どんなカットにしたらいいのか悩んでしまうよ」
「うーん。まずは体型から直さねえと分からないや。おじさん、この人借りていい?」
勝手に話を進めないで!と言えるほど私は強気ではありません。
けれど、態度で示すことぐらいはできるのです。
私は小坊主にまったく目をむけませんでした。
その時です。彼は強引に私の腕をつかむと立ち上がらせていいました。
「あんたの身体は既製品じゃ満足できない」
はい!?
何を言い出すのかと思ったらこのマセガキ、飛んでもなセクハラをぶちかましてきました。
これには私も憤りを隠しきれません。もう帰る、いま帰る。
そんな私の抵抗をモノともせずに、少年は私を引っ張っていきます。
今日はなんて厄日なのでしょう。やっぱり、外なんかに出なきゃよかった。
少年が引っ張って行った先は下着売り場でした。
下着なんて通販で買えば十分!!ご近所に何の下着を着ているのか知られるなんて赤っ恥です。
死ぬ思いで拒否しましたが、なんとも情けない事に引きニートは少年より弱かった。
「あ、よしえさーん」
「あら?評価屋さんじゃない?どうかした?」
「この人のブラ、合ってないから、みてやって」
はい!?
マセガキ、貴様、何を言い出してんだ!!ぶっ殺すぞ。
と言いかけましたが、ご近所に子供相手に殺すなど言っていたなどと吹聴されてはかないません。なので、ぐっと口をつぐみました。
そうして、なぜか私はよしえさんという人にブラのサイズをはかり直され、試着させられました。ブラなんてどれも同じです。着れればいいのです。
とにかく、このマセガキのおままごとに適当に付き合って早めにきりあげましょう。
私はそう決意して、いつものようにホックをとめました。
そうして、よしえさんだけフィッティングルームに呼びました。
するとどうでしょう。
「あらやだ、ホントに違うわ」