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悪役はデッドエンドを望んでいる  作者: さやか
第0部/ルドガー・フェルゼン攻略
9/210

手紙

昨日半ば強制的にプレゼントを渡したが、今日の授業では使っていなかった。

当然服も着ていない。

でも、捨てたようでもないので部屋のどこかに置いてあるのだろう。

昨日は久しぶりにルドガーと話したし、満足いく結果だった。

私は今日からクリスマスに向けてルドガーの靴下を編む事にする。

前世私は男を落とす為だけに編み物を勉強したので靴下くらいならなんとか編める。

しかし、今世でも同じ事をするとは思わなかった。

私は編み棒に毛糸をかけてサクサクと動かす。

私の腕だと一生懸命やって一ヶ月くらいで編み終わるだろうが、勉強もあるし、綺麗に出来る保証もない。

何足も編むかもしれないことを考えると今からコツコツ頑張る必要があるのだ。

これは誕生日プレゼントと違ってちゃんと笑顔で受け取ってくれたらいいな。

誕生日プレゼントの件で痛いほどわかったが、彼は自分が生まれた事そのものを罪と感じているらしい。

私は吉兆凶兆などイチミクロンたりとて信じてないがルドガーは違う。

心底自分が不幸を呼ぶと信じているようだった。

吉兆に好かれれば永遠の繁栄が。

凶兆に好かれれば究極の滅びが。

そんなわけないだろう、過去に吉兆凶兆が関わったと確定できる繁栄や滅亡があったのかと、小一時間問い詰めたい。

だが、理屈でなく盲目的に信じ込んでるこの世界の住人を僅か6歳の…それも悪役の少女が説得などできるはずもなく。

「大体、ルドガーは賢いんだから吉兆凶兆がただの迷信だって気づきそうなものを。」

私はため息まじりに言う。

あんなに賢いのにどうして気づかないのか。

やはりあれか。

ゲーム補正ってやつか。

「馬鹿らしい。」

私は吐き捨てる。

この迷信のせいでうまく話すこともできない。

誕生日プレゼントすら笑顔で受け取ってもらえない。

攻略にはコミュニケーションが必須だ。

ゲームでも現実の恋愛でも一切話さず恋に落ちるなんてありえない…。

「ん?」

ここまで考えて私はひたりと手を止める。

別に編み目を間違えたわけではない。

一言も会話をせずに恋に落ちる訳がないと自分で考えてそれを否定する事例を自分が知っていた事に気付いたからだ。

前世であって今世でないものの一つ。

それはインターネット。

私の友人が出会い系にハマっていた。

メールを数通やりとりしただけで男と出会いやる事やっていたのを思い出したのだ。

これは会話を必要としない。

友人は出会ったら挨拶してそのままホテルへ直行し、終わったらまた挨拶して別れると言っていた。

メールでもお互いが求める条件のすり合わせくらいしかやりとりしてないと言っていた。

つまり、会話はなくてもコミュニケーションは取れる。

これ、大事。

この世界にインターネットはないからメールなんてものもないが、女の子なら一度くらいはやった事あるんじゃない?

友達とのお手紙交換。

教室で回ってくるノートの切れ端を可愛く折った手紙。

これをメールに見立ててコミュニケーションをとれないだろうか。

会話をしたら不幸になると信じているならお望み通り会話はしない。

その代わり手紙を書こう。

最初は返ってこないだろうけど、書いてみよう。

会話を拒否するなら別のアプローチだ。

私は編み棒を横に置いて便箋を引っ張り出して手紙を書く事にした。

ふと、思いつきわざと文字を所々間違える事にする。

ツッコミ待ちだ。



===

ルドガーへ

プレゼントはきになった?

===


あ、これじゃ手紙というかメモだな。

まあ、あまり長いものは読まずに捨てる可能性があるからこれくらいでちょうどいい。

私は封筒に手紙と返信用の便箋を一枚いれてルドガーの部屋のドアの下からそっと差し込んだ。

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