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悪役はデッドエンドを望んでいる  作者: さやか
プロローグ
2/210

ゲーム的にはヒロインでバッドエンドだった前世。でも周りも本人も悪役だと思ってる

…はっ!

私は目を覚ました。

どうやら、気を失ったのはほんの一瞬だったようだ。

私は椅子に座り改めて記憶を探る。

「そうだ、そうだ…私、殺されたんだ!」

私は自分が死んだ瞬間を思い出し身震いする。

そう、私は殺されたのだ。

5人の男の手によって、首を締められ、鈍器で殴られ、毒を盛られて、ナイフで体を貫かれて事切れたのだ。

今思い出しても…

「最高の瞬間だったわ…」

ほう…と頬を染めてあの瞬間確かに感じたエクスタシーに身を任せる。

私が愛した5人の男の手によって最期を迎える事を幸せと呼ばずになんと呼べばいいのかわからない。

あれぞ、愛の究極の姿に違いない。

私は私を殺した5人の男に想いを馳せる。



私は前世日本で女優をしていた。

こう言うと凄く感じるが残念ながら記憶の私は新人で5人の男と出会うきっかけとなった映画が私にとってのデビュー作であり遺作になった。

オーディションを勝ち抜き映画のヒロインを勝ち取った私は生きる世界が違う見目麗しい男性の虜になり、また虜にした。

若き天才映画監督。

自信家で威武堂々とした姿はまるで王様のようだった。

心優しく繊細な脚本家。

いつも私を気遣い、女性のような暖かみのある人だった。

人気俳優。

芸能界という水物世界に生きてる人とは思えない程真面目で一途な人だった。

若手アイドル。

沢山の遊びを知っていて一緒にいると楽しくて仕方ない人だった。

あと一人…あれ、この人は思い出せない。

でも、この人も凄くかっこよくて優しくて頭の回転の早い人だったのは覚えてる。

この5人が同時に私に愛を告白し、私の愛を乞うたのだ。

時に同時に私を愛し、時に独占欲を剥き出しにし…。

常識的に考えて私はこのなかから誰かを選ぶ必要があったのだけど、5人の最高の男が私を取り合い喧嘩する様は私を何度も絶頂へと誘った。

だから敢えて選ばなかった。

そしたら、どこからか聞きつけたのかゴシップ記事が私を悪女として取り上げた。

そう、前世で私は悪女だった。

悪魔と契約してそうとまで世間で言われた。

私と5人の男達の関係はメディアに流され消費されていった。

メディアを通して愛を告白されるのも、生放送でガチ喧嘩する男達を眺めるのも最高だった。

…勿論、長く続かず私は殺されたんだけど、命尽きるその瞬間まで私は彼らの愛に包まれて幸せだった。

首を絞める映画監督の顔も、鈍器で私を殴る脚本家の泣き顔も、毒を飲み物に混ぜて飲ませた直後に見せた俳優の笑顔も、私を刺しながら愛を叫ぶアイドルも。

その様子を見つめるあの人も。

どれも愛に溢れていた。

「本当、最高だったなぁ。

あれで私の人生終わりでも悔いはなかったんだけど。」

なんだろう、神様的には私は憐れか或いは罪深いかで再び生を賜ったのだろうか?

「でも、仮にそうでも、ここはないよね?」

私はサナとして生きている。

サナ・フェルゼン

超人気乙女ゲーム『愛という名の呪縛』の悪役令嬢として私は生きている。

とことん私は悪役とこのゲームに縁があるらしい。

私のデビュー作にして遺作となった映画はこのゲームの実写版だった。

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