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ぶりっ子少女の夢は玉の輿  作者: 猫目 しの
異世界の日々
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リトリール魔法学校②

 


「あー、俺がこのクラスの担任のディオ・シトレースだ。 このクラスで面倒は起こすなよ、俺の給料に響くから」



教室に案内され席に着けば担任が教卓に立つ。

ってか、こんなめんどくさがりが担任をしてもいいわけ?




「今から属性がわかる水晶を渡すから自分の属性がわかれば立ち上がって自己紹介しろよー。 火は赤、水は青、土は茶、雷は黄、風は緑だ。 魔力量が多ければ多いほど濃い色になるがお前らはまだ一年だし薄くても気にするな」



適当に端っこの生徒に渡せばディオ先生は椅子に座り欠伸をしてる。

……本当やる気ないわね。

まあ、ちゃんと説明してるし問題はない。


印象を良くしなければ1人1人の自己紹介をしっかり聞く。

私は魔力がないから色が変わるわけないし意味ないけど。


次から五大貴族の番。

五大貴族なら水晶見なくてもどの色になるかわかるけど。



「サラ・リデリア、属性は水です。 1年間よろしくお願いします」



挨拶する時は周りを見ましょうってね。

強くてイケメンだからってシアンばっか見てたらバレバレだよ。




「クリュス・デントっ! 属性は土。 貴族だけどそこん所気にせずよろしくな」



にかっと明るく笑うクリュスもやっぱりイケメン。

女の子も何人かきゃーきゃー騒いでるし。




「アリス・クレインです。 属性は風でこれからよろしくお願いしますね」



大人しそうににっこりと微笑むアリスに男共は頬を染めてる。

アリスだって印象良くしようとしてるだけで、シアンをチラッと見たの私にはわかるんだから。




「レイア・フィオレ。 属性は火、仲良くしてあげるわ」



私が1番嫌いなのはレイア。

自分が1番って考えを持ってるし、自分の為ならどんな事でもする卑怯者。

私と似てるようで違う。

ただのビッチなくせにして。




「セルディア・セシルトだ。 平民は僕に近付くならば服従を誓え。 属性は雷」



セルディアは意外と好き。

私の事を1番に考えて行動してくれるし、私の害になるような事はしないから。

だから、セルディアは愛してあげる。




「シアン・フロレイン。 属性は火だ」



自己紹介は短いけどこのクラスで1番のイケメンだからかさっきのクリュスよりきゃーきゃー言われてる。

……同じ属性だからレイアが嬉しそうにしてるのが気に入らない。




「ライア・ブラックです。 属性は光、王族だけどこの学校に居る間は王族とか関係ないし仲良くしてね」




王族の血を引く者だけに与えられる属性、光。

珍しい属性だし、教えられるのが父親か母親かどちらか1人しか居ないから習得するのが難しいらしい。

魔法を覚える前に両親が死ねば独学でしなきゃいけないしね。




最後は私になった。

まあ、私が1番後ろの端に座ったから仕方ないけど。

水晶なんて私には必要ないのに。


水晶を持てば机に置き私はそのまま立ち上がった。



「リルはぁ、リルディア・セシルトって言うのぉ~! リル、魔力がないから属性がないけどぉ……頑張るから仲良くしてほしいなぁ?」


「名前の通り、リルは僕の妹だ。 魔力がないからと言って僕の可愛いリルを苛めるのならば家がなくなると思え」




魔力がないって言ったからかクラス中が驚いてるが私の可愛さに男共の顔がデレデレしてる。

女の子の方は嫌悪感丸出しの顔してたけどセルディアの言葉を聞いて慌ててた。


魔力がないから弱いってわけじゃないし苛めても意味ないけど。



「先生、自己紹介終わりましたが」




私で最後なのだから終わったけど肝心のディオ先生は寝ていた。

仕事サボるなんてクビにしないの?



「ディオ先生ぇ~。 自己紹介終わりましたよぉ?」




私が最後だったので水晶を持って行くついでに虜にしよう。

出来るだけ甘い声を出しながらディオ先生の身体を揺する。




「ん、ああ……終わったのか」



眠たそうにしているディオ先生が私を見るも頬を赤らめたり、デレデレしたりしない。

大人にも通じる私の可愛さがこの先生には通じないっての?


こんなぐーたら教師に通じないなんて有り得ないっ!




「あー、悪いな。 水晶返してくれたら席に戻っていいぞ」



このぐーたら教師が何者かわかんないけどもしかしたらギルドランクが高いのかも。

教師になるにはBランク以上必要って聞いたけど絶対AA、もしくはSね。


悔しさを感じながらも水晶をディオ先生が差し出してる手に置こうとしたが……。




「えっ…?」



私の小さな驚きの声は周りがガヤガヤしてるからかディオ先生にしか聞こえてない。

ディオ先生も私が持ってる水晶を見て驚いている。

私が持ってる水晶は透明なはずなのに色が黒に変わっていた。


何で?

特別な属性である光は綺麗な金色になるけど、黒だなんて有り得ない。


ディオ先生もわからないのか眠そうだった表情がだんだんと険しくなってきた。




「リル、どうかしたのかい?」



セルディアの声にやっと身体が動いた。


水晶は私の身体に隠れてるからか後ろには見えていない。

ぱっと水晶をディオ先生に渡せば水晶の色は黒から次第に青に変わっていった。


ディオ先生は水属性だったのかなんて今はどうでもいい情報だ。



「何でもないよぉ!」




この事は誰にも言わない方がいい。

同じ考えをしているのかディオ先生もじっと私を見つめてる。

好意的な視線じゃなくて探るような視線。


そんな視線を背中に感じながらも私は自分の席にと戻る。


人の属性で黒なんて有り得ない。

私は家にある本をこの1年で全部読んだし、覚えてる。

人にある属性は火、水、土、雷、風、そして光。

魔力なしも居るけど魔力なしには水晶は何も反応しないから透明のまま。


黒は……魔物、魔族だけ。

本によれば何十年前に魔族と出会った時に水晶を手に取った魔族が居たらしい。

その瞬間、透明だった水晶は黒に変わったとその本に書かれていた。

つまり、水晶を黒に出来るのは魔の者だけなはずだ。

人が触って黒になった記録なんてない。


もし、私が触った水晶が黒になったなんてバレてしまっては魔の者だと疑われる。

が、私は確かにセシルト家に産まれたから身分の保証はちゃんと出来る。


まあ、私が私の偽物だと疑われる可能性はあるけど。




「……リル、本当に大丈夫かい?」



ハッと気付けば既に授業は始まっていたみたい。

ディオ先生ではない先生が教卓に立ち魔法についての説明をしている。


……考え事してて気付かなかった。




「ごめんねぇ。 ちょっと疲れちゃってたみたい~」


「保健室に行く」


「ううん、もうちょっと頑張るぅ」


「無理だったら言うんだよ?」




セルディアは私の言葉を聞けばまだ心配そうにしながらもまた前を向いた。

わかんない事だらけだけど黒の属性についてはディオ先生から話があるだろう。

それまで待とうと私は考えるのを止め授業に集中した。




「セシルト、ちょっと来い」



あんまり集中出来なかった魔法の授業が終わればセルディアに習った所を教えてもらっていた。

やっぱり黒に変わった水晶の事を聞きに来たのであろうディオ先生の声に私ではなくセルディアが反応する。




「何でしょうか?」


「あー、お前じゃなくて妹の方だ」


「……リルに何の用で?」



ディオ先生が私に用と言えば先ほどの水晶の事だろうが、それをセルディアに教える事なんて出来ないんでしょう。

私だって言う必要はないと思ってるし。


こんな時にラースが居たら相談出来るのに……。




「ディオ先生ぇ、リルに用事ですかぁ?」



セルディアが私を心配してるのは当たり前だけどコレは私だけの問題。

私がセシルト家に産まれたのは事実だし、ただの疑いだけで私に何かあったら五大貴族と学校の問題になるから多分ない。

あの両親は何もしないと思うけど私にはセルディアとクリュスが居るから。


ぎゅっとディオ先生の腕に抱き付きながら上目遣いで見上げる。




「おー、ちょっとな」


「じゃあ、行きましょう?」




私が行こうとしているからかセルディアが少し慌ててるのがわかる。



「リル、大丈夫なのか?」


「うん、リルちょっと先生ぇとお話してくるぅ」




セルディアも私が行きたいってわかったのか引き止めるのを止めてくれた。

私はセルディアに手を振りながらディオ先生について行く。



職員室、ではなく私の目の前にあるのは理事長室と書かれている豪華なドア。

まあ、理事長は帝らしいし?

ただの教師ってだけで押さえられるような問題でもないし?


理事長ってイケメンだろうか……理事長って聞くだけでオジサンかオバサンが思い浮かぶから無駄な期待はしないでおこう。




「失礼しまーす」



ディオ先生は理事長室なのに最初と同じようにめんどくさそうにしてるけど演技じゃないの?

それともこれが素?




「待ってましたよよ、私がこの学園の理事長であるリュー・エトワールです。 因みに水帝でもあります」



理事長室の中に居たのは少し幼いような感じでちょっと女顔っぽいイケメン。

何歳かは見た目だけではわからないけど理事長だし、20代後半から30代前半を予想。




「えっとぉ……リルディア・セシルトでぇす!」



一応帝だし第一印象は良くしてた方がいいからにっこりと満面の笑顔を浮かべる。

すると、理事長の顔が少し赤くなった。


帝だし女に慣れてると思ってたけど実はウブだったりするの?




「……理事長ー?」


「ひゃいっ! あっ、水晶の件はディオ先生から聞きましたが何故水晶が黒くなったかわかりますか?」



この学校の上下関係は教師の方が上な訳?

それともこの理事長が役立たずなだけなんだろうか……。


落とすとしたらディオ先生の方がやりがいはあるかな。




「リル、わかんなぁい……」



水晶が黒に変わった時に1番驚いたのは私なんだから。

もしかしたら私の能力が関係するのかもしれないけど私にはわかんないし。


しょぼんっと落ち込んだように2人を見上げればやはり慌ててるのは理事長で、ディオ先生の目は読めない。

……もしかしたら、ディオ先生には何かあるかもしれない。




「そ、そうですよねっ! こんな可愛いセシルトさんがそんなわけないですよ」


「そんなわけってぇ?」



私が魔の者って事?

うるうると瞳を潤ませながら理事長を見ればやはり狼狽えてるのがわかる。

こんな事で狼狽えてるなんて本当に理事長で帝なの?




「過去に魔物と接触した事あるか?」


「ありますよぉ」



理事長が役立たずだからかめんどくさそうに髪をガシガシ掻いてるディオ先生に聞かれればとりあえず素直に答える。

これはセルディアに裏を取ればわかる話だし嘘をつく必要はない。


少しディオ先生の目線がキツくなった気がした。




「リル、小さい頃にセル兄様とクリュスとサラとアリスとレイアと一緒に森に入った事あるのぉ。 その時に大きな狼さんが居てリルだけ置いて行かれちゃった……」


「あの森に幼い子が行くのは危険過ぎますよ!?」


「だってぇ、みんな行きたいのにリルだけ行かないなんて出来なかったもん」




この理事長に敬語使う必要はないかなぁ。

上手くいけば操れそうだし……ってか、こいつロリコンだよねー。

一応私まだ10歳なんだけど。




「狼に出会ってどうしたんだ?」



理事長は簡単だけど難しいのがディオ先生だよね。

簡単に騙せそうな理事長とは違って騙せなさそうだし?




「狼さんを見た後リルは気絶しちゃったからわかんなぁい。 起きたら狼さんも居なくなっちゃってたしぃ……」



そんな目で私を見ても無駄だよ、ディオ先生ー?


私はバレる嘘はつかない。

いくら私を疑ってるからって私には何も出来ないでしょ?

私に何かして五大貴族と問題になったら困るもんね。


疑わしきは罰せず、と言っても私はただの人間だから調べられてもいいけど。




「ディオ先生、この件はまた次にでも……。 セシルトさんにも授業がありますし」



うるうると瞳を潤ませながら理事長を見つめていれば、私が可哀想になったのか恐る恐るディオ先生に言ってくれる。




「そうだなー。 面倒だし、もう戻っていいぞ」


「はぁい、わかりましたぁー!」



ディオ先生の言葉にぺこりと頭を下げてから理事長を出て行く。

教室に戻りながらも先ほどのディオ先生を思い浮かべた。



ディオ先生は優秀な先生みたいだ。

面倒だと言ってたし、見た目からも面倒だと思ってるみたいだったけど甘かったね。

私はただの10歳の子供じゃない。


ディオ先生はまだ私を疑ってる。

全てが面倒くさそうにしてたけど目だけは誤魔化せないよ?

私が出て行く時も私をしっかり疑ってた。


私がボロを出すのが先か、ディオ先生が疑うのを止めるのが先か、勝負だよ。





勝つのは私だけどね。



 

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