花の妖精の力⑥
「……まあ、いい。 それより変わったことはなかったか?」
「んー、何もないわね。 洞窟からは何も出て来なかったし、だから私はのんびり実験してたんだもん」
流石に洞窟から何か魔物が出てきたのならいくら私でも警戒しないわけにはいかないわよ。
魔物の声すら聞こえなくなったから多分ネムリソウの効果で中に居る魔物は全部眠ってしまったんじゃないかしらね?
「よし、なら突入するか。 ……その前にこの花は燃やす」
「えー、燃やしちゃうの?」
「こんな所に咲くわけない花が咲いていたら怪しまれるからな。 妖精様が祝福したのを知ってる俺たちならまだ大丈夫だがギルドの人間はわからない。 もしものことを考えれば燃やしてた方が安全だろう」
確か妖精が最後に祝福したのは随分昔の話ってことだったもんね。
シアンたちはあまり気にしてなかったし、ディオ先生も驚いていたけどそこまで大きな反応はなかったから問題ないと思ってけどやっぱ変なことを考える人間は居るのね。
特に私は転生者ってこともあるけど、一番はこの可愛さだもん。
こんなに可愛い私が居たら誘拐したくなる気持ちはわかってあげるわ……もちろん、させないけどね。
私の可愛さは誰かが独り占めしていいものではなくてみんなに愛されるものだもの。
「そこはシアンに任せるわ。 ギルドのことは私よりシアンの方が詳しいでしょうし、シアンなら私に不利になるようなことはしないでしょ」
【もえちゃうのざんねん~】
シアンはほとんど無表情だから冷たい印象に思われるかもしれないけど、意外と友達思いで優しいとこもあるのよ。
だから、そんなシアンが友達だと思ってる私に不利になるようなことはしないの。
ミィは名残惜しそうに桜の木を見上げているけど、私が決めたことだから何も言わないのか私の肩の上に乗っている。
「……じゃあ、燃やすぞ」
森の中だから火事にならないように気をつけながら私が出した花を燃やしていくシアン。
メラメラと燃えていく花を見ていたら、ふいに肩に乗っていたミィが洞窟の入口の方に視線を向ける。
どうし……っ!!
「シアンっ、何か来る!」
私が声をかけようとしたと同時にシアンはすでに警戒態勢に入っていた、洞窟からヌッと現れたのは2mはありそうな一本角がある男だった。
ネムリソウを焚いたのに効かなかったってことはこの男には毒の耐性があるってことかもしれないわね。
「お前らか? オデの邪魔をする虫どもは?」
「……お前は何者だ」
「オデ? オデは魔族の中でも最強を誇る男、ベルネード様だ!」
……なるほど、ベルネードだからベル様ね……。
こんな近い期間に魔族に三体も会うなんて本当にツイてないわね。
攫った人間やここら辺にいたであろう魔物はコイツに喰われたのかしら?
「最強に頭が悪いの間違いではないか?」
「虫けらがオデを馬鹿にするなんて許さないぞ!!」
シアンの言葉に怒っているのかどんどんと顔が赤くなっていってるのがわかる。
……シアンはこの頭悪そうな魔族をわざと煽ってるんだと思うけど……これは私に洞窟の中に入れってことよね?
「リルディア、頼む」
「わかったわ」
出て来てしまったのは仕方ないものね。
本当ならこんなに働きたくないけど、洞窟の中に居る人間が生きてるのか死んでるのかだけでも確認しておかないと面倒なことになるもの。
流石に人間を食べてパワーアップなんてしないとは思いたいけども。
「こっちだ、デカブツ」
「うおおおおおお!」
シアンが魔族の男を誘導するように動くと男は私なんか目にも入ってないのかシアンを追っかけて行く。
ギルドの応援が来てくれたら一番楽ではあるんだけど……諦めるしかないわね。
「ミィ、行くわよ」
【りょーかい!】
ミィも何やらやる気があるみたいでよかったわ。
ナイフを手に持つと辺りを気にしながらも私とミィは一緒に洞窟の中に入って行く。
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洞窟の中に入ってしばらく歩いてみるとやはり中にはゴブリンやビックラット、他にも色んな魔物が眠っている様子だった。
バリアを張ってるから私は問題ないんだけど、戻ってきたフィアたちが入って来たら危ないので眠ってる魔物の首をしっかり切る。
生き残りが居たら面倒なことにもなるんだからちゃんと殺しておかないといけないわ。
討伐部位なんて取ってる暇はないので死んだのを確認してからどんどんと洞窟の奥にと進んで行く。
「分かれ道ね」
外から見たら大きくはなさそうな洞窟だったけど、中に入ってみたら意外と広いみたいね。
広くてネムリソウが効いてない魔物が居るかもしれないからここからはとどめを刺すだけでは済まなくなりそうだわ。
「ミィ、どっちに魔物が居るとかわからないの?」
【んー、あっちににんげんとまものがいるみたい。 あっちにはまものがいるよ】
私の肩に乗っていたミィがふよふよと浮きながら顎に手を当てて考えてるような姿をしていたが一つ一つの道を指差しながら告げている。
ミィが何でそんなことわかるかなんてわからないけども適当に行くよりはまだマシでしょ。
「じゃあ、ついて来なさい」
【うん!】
ミィは飛んだまま移動するつもりなのか私が歩き出すとその隣を飛んで付いて来る。




