リトリール魔法学校
「リル、行くぞ」
「はーい、セル兄様ぁ」
今日から私達はリトリール魔法学校に通う事になった。
リトルリール魔法学校は数百年の歴史があり、この国最大の魔法学校である為に貴族の子がたくさん通ってる。
まあ、貴族が多いせいか平民は苛めや差別を受けているらしい。
苛めと言えば魔力なしのせいで苛められていたアクト・フィオレは5年前に捨てられたみたい。
ラース達に会うのに忙しかったから5年間知らなかったけど、どうでもいいし。
「可愛い僕のリルに変な虫がつかないようにしないとな」
兄のセルディアは未だに私の事を溺愛してくれてる。
私は可愛いから当たり前だけど。
セルディアは次期当主だし、私を可愛がってるからこれからも傍においてあげるつもり。
クリュスも同じ、私の事を可愛がらなくなったらいらない。
王子も学校に通ってるみたいだから落とさないと。
「リル、虫さん嫌ぁいっ!」
怖がっているようにぎゅっとセルディアの腕に抱き付く、ついでに胸も腕に押し付ければ真っ赤に染まる顔。
あははっ、妹なのに真っ赤になっちゃって。
「僕が守ってやるから安心しろ」
「ありがとぉ、セル兄様ぁ!」
ちゃーんと守ってね、セルディア。
私は今力を使いたくないし。
馬車に揺られて数時間、やっとリトリール魔法学校についた。
今日は入学式で馬車が多くて時間がかかったから疲れちゃった。
馬車を降りれば門の前の所で他の4人が待っているのが見える。
「リルちゃん!」
「クリュス、おはよぉ」
私に真っ先に挨拶するのはやっぱりクリュスだけ。
後の3人は私が嫌いだし、セルディアに挨拶してから私に挨拶する。
本当は挨拶したくないみたいだけどちゃんと挨拶しないとセルディアとクリュスがうるさいからね。
とりあえず、クリュスの腕にもぎゅっと抱き付く。
もっともっと私を溺愛すればいい。
「リルねぇ、入学するの楽しみにしてたんだぁ!」
セルディアとクリュスの間で歩きながらもしっかりと2人の腕を抱き締める。
2人の顔が赤くなったのを見てサラとアリスとレイアは般若みたいになってるけど気にしない。
「おいおい、可愛い女の子連れてんじゃねぇか」
「テメェらみてぇな1年坊主が気取っていい場所じゃねぇんだよ」
地図に従って体育館を目指していれば不良らしき生徒が近付いて来た。
ってか、五大貴族に喧嘩売るなんてただの馬鹿?
「セル兄様ぁ、リル怖い」
こんな馬鹿別に怖くなんてないけど可愛い私は怖がらなきゃ。
クリュスとセルディアは私を守るように前に出る。
「何だ、貴様らは」
セルディアは貴族として誇りを持ってるから五大貴族に対しての態度に怒りを感じてるはず。
クリュスは私に格好いい所を見せたいからだろう。
「だから、1年は1年らしく俺らの命令聞いて女を置いて行けつってんだよ」
「コイツの家は貴族だから命令にしたがった方がいいぜ?」
馬鹿の相手をするのは疲れる。
五大貴族はこの国で国王、帝に続いて3番目に発言権があるんだけど。
まあ、見た目だけじゃ五大貴族だなんてわからないかもしれないけどね。
「はっ? 俺ら……ぐっ!」
多分、五大貴族だと言おうとしたのだろうクリュスがまた前に出ればいきなり金魚の糞的男がクリュスの顔を殴る。
後ろの3人は怖がってるのか震えて何も喋らない。
「誰が発言権を与えたんだよ。 さっさと女を寄越せ!」
学校の先輩みたいだけどクリュスに手を出したんだから退学だね。
1年だから弱いって思ったのかもしれないけど本当に馬鹿。
周りの野次馬もコイツらが怖いのか何も言わないし。
あっ、今度は貴族らしい不良にセルディアが殴られた。
怖くて震えていた設定だけど流石にセルディアが殴られたのに反応しないのは駄目でしょ。
「セル兄様ぁ! ……きゃっ!」
殴った勢いのせいで倒れてしまったセルディアに駆け寄ろうとしたが金魚の糞的男に腕を掴まれる。
うわっ、何かコイツ臭いんだけどちゃんと洗ってるわけ?
「可愛いじゃねぇか、俺の女になれよ」
はぁ?
私は王子か若い帝を落として玉の輿に乗るつもりなんだけど。
何でただの貴族で顔も猪みたいなアンタの女になんなきゃいけないわけ?
身体もぶっちょりだし、可愛い私に釣り合ってないのがわからないのだったら頭も馬鹿じゃん。
もし、王子や帝を落とせなかったとしてもクリュスの方がイケメンだからクリュスにするし。
「嫌ぁ!」
私が可愛いから仕方ないんだろうけど、こんなぶっちょり猪に好かれても嬉しくも何ともない。
激しい抵抗は出来ないのでふるふる震えながらぶっちょり猪の手を離そうとする。
ってか、さっさと助けに来なさいよ。
「ぐあっ!」
さっさと助けないセルディアとクリュスにイライラしていれば金魚の糞的男がいきなり飛んだ。
「な、何だ!?」
これだけで慌てるなんてぶっちょり猪って見た目だけ?
もしかしたら、私の方が強いかも。
「その手を離せ」
後ろから現れたのは銀髪でポニーテールにしてるイケメン。
瞳の色は綺麗な青。
絶世の美男子って言ってもいいくらい格好いい。
まあ、私は顔よりお金重視だけど。
このイケメンがお金持ちだったら絶対落とすのに。
「俺を誰だと思ってやがるっ!」
「さあな」
「フリース家次期当主だぞ!」
突然現れたイケメンに怒っているのかぶっちょり猪は私から手を離した。
すかさずセルディアに引き寄せられる。
「フリース家は最近現れた貴族だな。 裏で悪い事をしてのし上がってきたとの噂がある」
ぶっちょり猪の事なんかどうでもいいんだけど。
それよりあっちのイケメンの方が知りたい。
「セル兄様、助けてくれたあのお方は知ってますかぁ?」
「いや、知らない。 パーティーでは見た事ないし平民じゃないか?」
貴族じゃないのか、残念。
上位貴族だったらまだ落とす事を考えてもよかったのに。
あっ、ぶっちょり猪が倒れた。
手刀を入れられたのかずしんっと音を立てながらぶっちょり猪の身体が倒れる。
とりあえず、お礼言っとかないと私のイメージが崩れちゃう。
「あのぉ、ありがと……きゃっ!」
お礼を言おうとイケメンに近付いて行けばいきなりドンっと突き飛ばされ転んでしまった。
「助けて下さりありがとうございます!」
「本当に助かりましたっ」
「お名前を教えて下さいっ!」
チッ、殺すぞビッチ共。
可愛い私を突き飛ばし頬を赤らめてイケメンに群がるなんてただのビッチだし。
「大丈夫?」
転んだ私に手を差し伸べてくれたのはセルディアでもクリュスでもなくなくまた別の黒髪イケメン。
って、黒髪?
私は黒髪イケメンの手を取り立ち上がる。
「ありがとうございますぅ!」
この国では黒髪なんて滅多に居ない。
違う国には居るかもしれないけどこの国では黒髪は王家の証。
つまり、この黒髪イケメンは王子!
突き飛ばされて災難だったけど王子に助けてもらえるなんてラッキー。
「僕はライア・ブラック。 可愛い君の名前は?」
やだっ、可愛いなんてそんな本当の事言っちゃって。
王子なら一番に落としたい。
「リルディア・セシルトと申しますぅ」
「へぇ、じゃあ五大貴族なんだね。 今日から僕も学校に通うからよろしくね」
「よろしくお願いしまぁす!」
まさか入学式そうそうから王子に会えるなんて思ってもみなかった。
五大貴族と王族の結婚なんてよくある話だし落として王妃になってやる!
「それから、シアンっ!」
王子はビッチ共に囲まれてる助けてくれた銀髪イケメンを呼ぶ。
シアンって名前なんだ。
ってか、ただの平民なのに王子と知り合いなわけ?
「何だ」
「あのぉ、さっきはありがとうございますぅ!」
せっかくビッチ共から離れてこっちに来たんだからお礼ぐらい言わなきゃ。
イメージダウンなんて最悪だし。
「……別に……あんな権力を振りかざす奴が嫌いなだけだ」
「あっ、自己紹介がまだでしたぁ。 リルはリルディア・セシルトって言いますぅ」
平民だけど王子と仲良しみたいだし仲良くなって損はない。
まあ、ただの平民に惚れられても困るだけだけど。
「シアン・フロレインだ」
「フロレインと言えばギルドマスターと同じじゃないかっ!」
銀髪イケメン、シアンの名前を聞いていれば後ろに居たセルディアがビックリして話に入って来た。
シアンはギルドマスターの息子なわけ?
「セルディアっ!」
「あっ、申し訳ありません。 ……君はギルドマスターの息子なのか?」
いきなり話に入ったからかセルディアは王子に謝罪しながらも目線はシアンにあり、シアンに問い掛けてる。
「……義理のだが」
「ギルドマスターを通して僕とシアンは仲良くなったんだ。 君達も学校の間は敬語じゃなくていいから」
義理の息子でも息子なわけだし、ギルドマスターが引退したらギルドを継ぐんじゃない?
……一応落とすべきかどうか悩み所ね。
私達が話してる間、サラ達3人は私を睨んでいた。
まあ、サラ達だけじゃなくて周りの女共も私がイケメンばかりに囲まれてるから睨んでくるけど。
「じゃあ、そろそろ入学式も始まるかもしれないから一緒に行こぉ?」
「そうだね、早く行こうか」
私はちゃっかり王子の隣を歩きながら体育館にと向かった。
体育館に着けばすでに他の生徒達が並んでいたので先生の指示に従い私達も並んだ。
この学校は大体6年制で魔法や体術等をじっくり学んでいく。
6年になれば卒業となるわけだけど、実力が足りない人が居れば留年する人もいるらしい。
実力が足りないまま卒業してもすぐに死ぬ人が多いからみたい。
ちゃんと勉強してたら留年しないはずなのに馬鹿みたい。
理事長が帝らしいから貴族でも実力ない人は留年するんだって。
まあ、私が留年するなんて有り得ないけどね。
きちんと列に並んで居ればステージの上に中年男が立っていた。
「えー、私がリトリール魔法学校の校長です。 新1年生の皆さん、今日から色々学んでいきますが怪我なく毎日を楽しく過ごしましょう。 この学校は苛めなんかない楽しい学校ですからね」
いや、苛めがないわけないでしょ。
セルディアみたいに貴族である事に誇りを持ってる人は平民嫌いだし。
私は平民嫌いではないけどお金持ってないから興味ない、苛めなんてダサいから参加しないけど。
「それではそれぞれの先生の指示に従い移動して下さい」
(頭が)河童みたいな校長は簡単に終わらせればにやにやと笑いながらもステージから降りて行く。
じゃあ、この列に並んでるのが一緒のクラスなんだ。
いつものメンバーに王子にシアン、多分貴族っぽい人がたくさん居る。
男はイケメン4割、ブサイク1割、女はみんな私には負けるけど可愛い。
イケメン貴族となら仲良くなろう。
ブサイクでもお金あるならOKかなー。