海はドキドキ出逢いの場?⑤
捨てられた子犬のように私を見ている妖精。
帰るのは当たり前でしょ、こんなことにずっと居るなんて私には無理。
「私には帰る場所があるんだから帰るわよ」
【……ミィまたひとりぼっち……】
ぽろぽろと涙を零す妖精が見えてるのも私だけなのよね……。
こんなことで泣かないで欲しいわ、鬱陶しいから。
もし他にも見えてる人が居たら私が虐めてるみたいに思われるじゃない。
「そんなの勝手にしなさいよ。 あんたがここに居たければ居ればいいし、出たいなら出れば?」
【ふぇ?】
「あんたの好きにしなさいよ」
そもそもずっとこんなとこにいるから気が滅入ってくるのよ。
何年生きてるのかはわからないけども、ずっとここに居たら一人なのは決まってるじゃない。
【ミィのすきに……】
「リルディア、行くぞ」
「はーい」
シアンたちが戻る為に歩き出したので私もその後ろについて行く。
ぽつんと一人薄暗い洞窟に居るのは自分が選んだことだもの、後は勝手にするでしょ。
「それにしても妖精様にお会い出来たことは幸運だったね」
「家で話しても信用はされないだろうな」
この世界の人にとっては獣人でも人間でも妖精は尊敬出来る生き物なのね。
私にはよくわからないけど他の人に聞こえるように妖精の悪口は言わない方が良さそう、私の可愛いイメージが悪くなっちゃうもの。
……それにしても、妖精の祝福を持ってるだけで王妃にもなれるなんてどうしようかしら。
まずは祝福がバレる前に完全に実家との絶縁をしなきゃいけないわ。
もし、ライアに好きな相手が出来ても私が王妃になれるのなら相手を側室を迎えるのも心が広い私は許してあげるわ。
「確かに行きは良く見ていなかったけど、ドレドーの花が咲いてるみたいだね」
「これが全て妖精様のお力で咲いてるなんて凄い……」
ドレドーの花は見た目はカランコエに似てるのよね。
花言葉とか覚えていた方が女の子っぽいって思ってちょっと調べてたことがあったけど、確かカランコエの花言葉は……。
「おい、こんな所にガキがいるぜ」
「ケッ、いっちょ前に女連れかよ」
そろそろ出口につきそうって時に下品な男の声が聞こえてきた。
出口にはボロい服を着て剣を腰につけてる男が二人、シアンとアルトは私たちを庇うように私たちの前に立つ。
「へえ、中々の美人だな」
「片方は獣人だが、高くは売れそうだな」
声からして下品だと思ったけど、こいつらは本当に屑みたい。
王国は奴隷を禁止してるんだから男たちの言葉はライアの逆鱗に触れるのか静かに怒っているのを感じる。
まあ、屑な男たちはそのことに全く気付いていないようでにやにやしてるけどね。
「……本当にこんな人たちをのさばらしていて申し訳ないよ」
「ああ? ガキが何言ってんだ?」
「さっさとどうにかして衛兵呼んで来ようぜ」
街からは結構離れたとこにあるから呼びに行くのは大変かもしれないわね。
気絶させたら起きないか見張る役割と呼びに行く役割が必要だし……もちろん、私は面倒だからどっちにも参加しないけど。
「ガキが俺たちを誰だと思ってるんだ?」
「この辺の奴らなら誰でも知ってるから余所者だろうがな」
「泣く子も黙る”土龍の咆哮”のメンバーだぜ」
土龍の咆哮? 何その頭が悪そうな名前……。
もしかしたら、私が知らないだけで帝であるシアンなら知ってるのかしら?
「シアン、知ってる?」
「知らないな」
ライアの問いかけにシアンがバッサリと答える。
ってことはほとんど無名のチンピラってことじゃないの?
……すこーしの可能性でシアンが知らないだけってのはあるけど、こんな小さな真似するなんて小者も小者よ。
「ガキが俺らを怒らせてぇんだな」
「女のガキは売って、男のガキは奴隷にしてやるよ」
「ドレドーの花があるって聞いたから来たが、丁度良いタイミングだったな」
ふーん、こいつらはドレドーの花がここに咲いてるって知ってこんな洞窟まで来たわけね。
で、私たちが居たから更に欲をかいて私たちを売れば大儲け出来る、と。
こんな可愛い私なんだから高値に決まってるけど、こんなチンピラに売られるほど私は安くないわよ。
馬鹿にするのもいい加減にしなさいよね。
「……妖精様のドレドーの花を取らせるなんて絶対にさせない……」
妖精を崇めている獣人としてこの男たちを許さないのかフィアも静かにキレてるみたい。
怒ってるのが三人、強いのが一人、……私は何もしなくても良さそうね。
【オトウリ】
不意に声が聞こえてきたと思うと男たちの足元にはオトギリソウの花みたいなのが咲いていた。
みたいなのってのはその花が男たちの足からだんだんと上半身に巻き付いてきてるから蔦のようにも見えちゃってる
のよね。
フィアたちはいきなりのことに動かないでいる。
「な、何だよ! これ!」
「クッ、動け……!」
花はどんどん上って行くとそのまま男たちの頭まで覆ってしまった。
全身を花に覆われた男たちは立てなくなったのかその場に倒れこんでしまう、口元は覆われているけど鼻のとこは空いてるから死ぬことはないでしょうね。
【ミィのたいせつなここをあらそうとするにんげんはゆるさない】
いつの間にか私の肩にはさっき別れたばっかの妖精が怒った様子で浮いていた。
そう言えば……オトギリソウの花言葉は恨み、敵意だったかしらね。
ここが大切だって言ってた妖精なら怒るのも無理はないわ。
「リル、もしかして……」
「さっきの妖精みたいね」
この男たちがこの洞窟を荒らしにってか、ドレドーの花を奪いに来たから怒りに来たのかしら?
【リルディア、ミィね。 リルディアといっしょにいく】
「はい?」
【ミィはリルディアをまもる】
もぞもぞと動く簀巻きにされた男たち、妖精の言葉が聞こえなくて困惑してる皆、わけのわからない状況にため息つきたくなるのは当然かもしれないわね……。
私の視界の先にはドレドーの花が咲いていた。
……思い出したカランコエの花言葉、幸福を告げる、たくさんの小さな思い出、おおらかな心……そして、”あなたを守ります”
いつも小説をご覧いただきありがとうございます。
作中の花言葉は私が調べた物で他にも花言葉は色々あると思いますが、この小説ではこの花言葉を使います。




