魔族の話⑦
「それで、魔族と戦ったのか?」
「ええ、私は自殺願望者でもないし。 死にたくないなら戦うでしょ」
私の能力を使えば死ぬことはないとは思ってたけど、”攻撃”ではなかったら私もやられる可能性はあるからね。
例えば私の武器である毒だって一歩間違えれば私の命を奪うでしょうね、暗殺される可能性が出てきたからわざわざ言わないけど。
「魔族はどんな感じだった?」
「最初の魔族は馬鹿だったわ。 ”洗脳”なんて強い魔法があるのにのこのこ姿を現して魔族だってアピールして、毒の耐性もなかったわね」
「毒?」
あ、余計なこと言っちゃったかしら?
私の武器が毒なんて言ったら絶対にうるさいじゃない、何かあった時に没収でもされたら私の戦闘能力も大幅に落ちちゃうし。
「そいつは普通の魔法を使わなかったから使うのにわざと使わなかったのか、条件があるのか、それとも使えないか、のどれかよね」
ディオ先生が疑問に思った毒の話はわざとスルーしながら話を続ける。
私の予想だとあの魔族は”魔法を使えない”、魔法を使えるなら私との戦闘の時に使わない理由がないもの。
魔族って魔法が得意なイメージがあったけど、私たちと同じなのかもしれないわ。
「魔族の魔法についてはまた帝の方で議論するか」
「ねえ、もう疲れちゃったから止めていい? 一人目の魔族が去ってからシアンたちがすぐに来たから話すのは私じゃなくていいじゃない」
「テメェのやる気のなさは何だ、本当に戦ったのか……」
だって、終わったことを考えても仕方ないじゃない。
また来るかもしれないけど、それならその時に考えて倒せばいいしね。
「はい、お茶をどうぞ」
用意してくれたのかいい匂いのする紅茶をライアがくれた。
あら、王子なのにライアは気が利くわね。
「ありがとう」
もらった紅茶を飲んでみたけど、これ美味しいわね。
今まで飲んだことない味だし、もしかしたら高い茶葉なのかもしれないわ。
「……緊張感がねえな」
「多分今日はもう来ないでしょう。 一度帰ったのにまた来るなんて馬鹿でしょ」
一人は毒でやられてボロボロだし、狙いがあってくるならわかろけど……ただ人間を殺すのが目的ならここじゃなくても別のとこに行けばいいしね。
ここに来ないのなら私にとってはどうでもいいことだから、他人がどうなろうと関係ないし。
あ、でも五代貴族の現当主、特に私の生物学的上の父を殺してくれるんなら喜ぶけど。
「わからないだろう」
「来るかもしれないけど、そんなことずっと考えてたら疲れちゃうじゃん。 来たら戦えばいいだけよ」
まあ、私はもう戦うつもりはないんだけどね。
だって、他の教師だっているんだし、それに帝が二人だよ?
私が戦う必要なんてどこにもないし。
あれ? でも、シアンが帝なら狙う価値あるんじゃない?
同い年だし、顔もカッコいいし、帝だからお金も持ってるだろうし、何だかんだで優しいからDVすることもないだろうし。
ギルドマスターは奥さん居ないから姑も居ないしね。
案外優良株かも!
「それはあるな」
「おい、フロレイン」
「リルディアは多少戦えるだけで学生なのはわかるだろ。 しかも、五代貴族の娘でもある」
あんまり好かれてはないけど、あいつらは私のことを政略結婚の道具にしか見てないし。
そのおかげで今は自由になってるからある意味感謝かしら?
卒業と同時に逃げる気満々だからね。
「あー、それがあったな。 貴族はこれだからめんどくせぇ」
「じゃあ、今日はもう解散ってことで! 汗かいちゃったからお風呂にも入りたかったんだよね」
汚れたとしても私の可愛さに変わりはないんだけど……やっぱ汚いままで居るなんて私には耐えられないからね。
早くお風呂に入りたいからさっさと解散したいのよ。
「仕方ねえ……、また何か大事なことがあったらすぐに言えよ」
「はいはーい! フィア、一緒にお風呂に行きましょう!」
「うん、いいよ」
ディオ先生はため息をつきながら部屋から出て行った。
最初はだらしない先生だと思ってたけど、敵を騙す為の演技だったのかも。
本来は真面目そうだし、今から見回りにでも行ってくるのかな?
「じゃあ、私たちはお風呂入ってそのまま寝るからね」
「ああ」
「お休み」
さて、私は着替えの準備してからお風呂に行きますか。
あ、そうだ……!
「今日はありがとうね、シアン」
甘えるような声でシアンにお礼を言うとちゅっと軽く音を立ててシアンの頬にキスをした。
女として見られてないなら意味ないかもしれないけど、いくらシアンでもちょっとは私を意識するでしょ。
私はフィアと一緒に部屋を出て行った。




