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ぶりっ子少女の夢は玉の輿  作者: 猫目 しの
異世界の日々
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旅行は海へ⑩

 


戦いを始めて十分は経っているけど、コイツそんなに強くないわね。

人を操るのも何か条件があるのか私には全く何の変化もないし、魔法も使わないで素手で戦ってるし。




「くそっ、下等生物如きに!」


「あらあら、貴方って本当に魔族なのかしら? 魔族ってことだから魔法が得意だと思ってたのよ?」


「ふざけんじゃねェ!!」




強いかと思ってたのに残念だわ。

深く刺さらないけど、ナイフが掠ったとこは青黒く変色してるから効いてないことはないみたいね。


怒りで大振りになってしまってるから避けることは可能だし、このままなら勝てるわ。




「おいおい、なぁにやってんだよ、アルデート」




不意に聞こえた後ろからの声に反応が遅れてしまった。




「……っ……!」




ちょっと揺れた感じがしたけどバリアを張ってて正解だったわ。



私が振り返ればそこに居たのは一本角を生やした褐色の男だった。

その手からは煙が出てるから魔法を打ったんでしょうね……この可愛い私を傷をつけようとするなんて許せないわ!




「す、すまねェ、ハイド」


「時間をかけ過ぎだぜ」




私のことなんて気にしてないのか会話を始めてる。


魔族にも得意な魔法とかあるのかしら、さっきまでの魔族は全く魔法を使う素振りもなかったのに今来た魔族はすぐに使ったわね。

仲間が来るって分かっていたら短期決戦にしてたのに……しくじったわ。




「あら、次の魔族は魔法が使えるのね。 魔族は魔法使えない種族かと思ったじゃない」




バリアのおかげで痛みなんてなかったので不敵に笑って見せる。

人間を見下しているならここで弱味を見せても意味ないし、こんな奴らに負けるなんてありえないわ。




「へぇー、バッチリ当たったと思ったんだけどな」


「魔族ってのは魔法がよ・わ・い種族のことだったみたいね」


「下等生物がいい加減にしやがれよォ!!」




さっきまで戦って居た方の魔族は血管がぶち切れそうなくらい頭に来てるようね。

仲間が来なかったら私一人でも倒せてたかもしれないのに……バリアがあるから私に攻撃は出来ないだろうけど、攻撃しなくても無力化出来る方法はあるでしょうから気をつけておきましょう。




「アルデート、お前は落ち着けよ。 頭に血が上り過ぎだ」


「すまねェ……」




立場的には後から来た方の方が上なのかしらね。

頭に血が上っている方が戦うのは楽だったんだけど、仕方ないわ。




「戦わないのかしら?」


「俺とアルデートを一緒にするなよ、何か隠し持っているであろう相手に簡単に向かうわけないだろ?」


「あら、残念ね」




正直魔族二人を相手するのはきついからどこかに行ってくれないかしらね。

そうしたら、魔族なんてどうでもいいから見逃してあげるのにな。


私に危害がないなら魔族なんて興味もないわ。




「アルデート、お前は帰って毒消しを飲んどけよ。 ここでの任務は終わりだ」


「あ、ああ……」




毒が段々効いているのか戦っていた方の魔族はふらつきながら背中から黒い翼を出して飛んで去って行く。

二人揃って居なくなってくれたらよかったのに何でコイツは残ってるのよ。

さっさと帰ってくれたら私は何事もなかったように帰れるのにさー、本当に気が利かないわね。




「魔族にぴったりな女だな」


「ふふっ、ありがと」




ここで時間を稼いでいても意味がないのならさっさと帰りたいんだけど。

この魔族は中々のイケメンではあるけど、お金持ちじゃなかったら興味ないわ。




「人間じゃなかったら誘っていたかもな?」


「お金を持ってたら考えてあげたかもね?」




軽いやり取りをしながらもお互いに隙を探っているのが分かる。

さっきの魔族は馬鹿だったけど、……この魔族は強い気がするわ。


あれ? 何か今見えたような……っ……なるほどね。




「どんなことをして俺の魔法から逃げれたのか知りたいな」


「どうしてだと思う? 貴方に分かるかしら?」


「さあ、分からないから教えてくれるのか?」




自分は強いって自信があるのか私との話に乗ってくれてる。

私が盲魔だから魔法が使えないなんてコイツは知らないから、人間自体を甘く見てるんでしょうね。


にっこりと笑顔を浮かべながら首を傾げる。




「ん~とねぇ~、教えてあ~げない!」


「”火よ、我が力となりて敵を葬れ、|炎渦《ブレイズウ゛ォーテックス》”」




可愛いらしくウインクをすると私はそのままバック転で後ろに下がった。

そして、その隙を見ていたかのように呪文が森に響くと魔族の周りは一瞬にして炎に撒かれた。




「”光よ、我が力となりて敵を打て、光弓(ライトアロー)”」




すかさず追い打ちをかけるようにキラキラと光る矢が炎の中に何本も打たれていく。




「大丈夫、リル?」


「大丈夫か、リルディア?」


「ええ、もちろん」




そう、私が先ほど見たのは依頼でいつも使ってるライアの光の合図。

私たち五人だけに分かるように作られたモノだった、意味は”敵を引き付けろ”。



 

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