旅行は海へ⑥
「よし、解すのはこれぐらいでいいかな」
私を含めて五人が準備運動を終わるとライアが海に入る、フィアとアルト、シアンも海に入るとゆっくり泳ぎだした。
ふーん、海は近くにないけどみんな普通には泳げるみたいね。
どうやって練習したりしたのかしら?
「リルもおいでよ」
「う、うん!」
初めての海に怯えてる様子を演出しながらも海に向かって歩いて行く。
気温は高いので海はちょっと温く感じるのは仕方ないわよね。
腰の辺りまで海に浸かればフィアが近づいてきたのでぎゅっと手を握る。
「私が一緒だから怖くないよ」
「ありがと~」
別に泳げるし、前世では海なんて何十回も見たことあるから怖いわけないけど。
フィアに手を引かれながら海の中に入ると、ちょっと泳ぎたくなるけど今は止めておくわ。
「泳げないなら俺が……」
「シアンが一緒に泳いでくれるって」
アルトが私に声をかけようとしたのをライアが遮ってくる。
私は別にどっちでもいいけど、ライアが言うくらいシアンは泳げるの?
私が重いわけないけど人を支えながら泳ぐのは大変ってのは聞いた事があるから、シアンは何でも得意なのね。
「シアン~、お願い出来る?」
うるっと瞳を潤ませながら首を傾げる可愛い私、こんな可愛い私のお願いなら聞きたくなるでしょ。
シアンには私の可愛さが分からないんだろうけど。
「……仕方ないからな」
シアンが手を差し出してきたのでぎゅっと腕に抱きつく。
私の魅力に気づかないなんてシアンたちぐらいだもんね、私が水着姿で抱き着いても何にも思わないんだから。
「やぁん、嬉しい!」
浮き輪があったらぷかぷか浮いて可愛さ抜群なのになぁ。
今はシアンの腕に捕まりながらぷかぷか浮くぐらいしか出来ないからね。
同学年の馬鹿な女たちが私のことを睨んでいるけど全然気にならないわ、私が可愛いのが問題なのは仕方ないことなのよね。
だって、私は誰よりも努力しているんだもの、その辺りの女に負けるわけないわ。
「それにしても、シアンは本当に凄いな。 リルディアを抱えながら泳げるなんて、俺も出来るとは思うが少し魔法使うかもな」
「もう、私が重いって言いたいの?」
「そうじゃねぇって!」
私が怒ったようにぷくりと膨れると慌てたようにアルトが否定してる。
フィアがじとりとアルトを見ているけど私が重いわけないじゃない、太らないように気を付けてるし、まあアルトが言いたいのは抱えながら海で泳ぐのってことってのは分かってるけどさ。
溺れた人を助けるのは二次被害が起こる可能性があるくらい危ないってのは聞いたことあるし。
「……私だって魔法使えばリルを支えることは出来るもの」
フィアとアルトは風属性だもんね、魔力の無駄になるかもだけど溺れる心配がないのは安心できるわ。
「も~、フィア大ぁ好き!」
「私もリル好き……」
頬を赤らめ嬉しそうな笑みを浮かべるフィア、アルトはそんなフィアを苦笑いしながら見てるがどこか優しそうな雰囲気だ。
この兄妹はいつも仲良いものね。
私たちはのんびり五人で楽しく泳いでいた
しかし、そんなのんびりした時もすぐに終わりを迎えるのは早かった。
いきなり高い津波が現れたの、海で泳いでいた生徒はパニックになっているみたいで、慌てて砂浜に戻ろうといてる者、魔法を打とうとして失敗してる者、溺れそうになって他の人を掴んで喧嘩してる者、ほとんど全員がパニックに陥っている。
砂浜にいる生徒も我先にと逃げ出して行ってるのが見えた。
「”風よ、我が力となりて我らを守れ、ウィンドシールド”」
「”風よ、我が力となりて我らを守れ、ウィンドシールド”」
津波が私たちを襲おうとしているが私が無様に逃げる必要はないわ。
アルトが真剣な表情で魔法を放つと私たちの周りに薄い緑色の膜が現れる、その後に続いたフィアの魔法で更に膜が増え二重になり、私はシアンの腕に抱き締められた。
そして、その私たちに津波が襲い掛かってきた。
「……問題ないか?」
フィアとアルトの魔法により、私たちは特に問題なく無事だった。
……ちょっと揺れた感じはしたけど、シアンが支えてくれてたみたいで津波に襲われたなんて全く感じなかったわ。
いきなりあんな津波がくるなんてあり得るのかしら?
さっきまでは何の変哲もないただの穏やかな海だったのよ?
「無事だけど……早く戻った方がよさそうだね」
困ったように濡れた髪を掻き上げたライアの言葉にみんなが頷くと砂浜の方に泳いで行く。
先生たちも慌てながらも津波に巻き込まれた生徒の救出に忙しそうだった。




