旅行は海へ③
「獣が人間様の言葉を喋りよって!」
ギャーギャーと騒いでるだけのうるさい馬鹿男たちよりマシかもしれないけど……てか、耳障り。
道端で騒ぐのは品がある者のすることなのかしら?
「店前で騒いだら迷惑だよ」
「ライア王子、申し訳ありません。 すぐこの獣らをどうにかしますゆえ」
馬鹿男たちはライアの存在にやっと気付いたみたいだけど、ライアが自分達の味方だと疑っていないのかへこへこしてるがニヤついて気持ち悪い。
フィアは倒れてる子供達の方に駆け寄ってる。
「おやおや、セシルト嬢までいらっしゃいましたか。 汚いものを見せてお目を汚して失礼」
盲魔でも私は一応セシルト家のご令嬢だからね。
伯爵子息なんて目じゃないけど、こんな気持ち悪い奴らに媚びられたくないわ。
「リルの大事なお友達を悪く言う人なんて嫌い」
あんな奴らを見てるなんて私の可愛い目が腐ってしまうわ。
アルトが来てライアや私たちが来たんだから馬鹿でも一緒に居たことぐらい理解出来るでしょ。
「セシルト嬢はまだまだ貴族と言うものがわかっていないようだね。 貴族とはそこいらの平民なんかと関わるべきじゃないんだよ」
「平民が生活出来てるのは我々貴族が居るからである」
「だから、平民は我々に感謝して生きるべきである」
訳分かんない話をしてるんじゃないわよ、鬱陶しい。
別に平民が貴族に生かされてるわけじゃなくて、ただ仕事を貰っているだけでしょう、社長と社員みたいな感じでしょうに……偉そうにして。
「その考えは間違ってるよ、国民が居てくれるからこそ国は成り立っているんだ」
「ライア王子はまだまだわかっていませんねえ」
ライアが言うけど馬鹿男ちはた聞いてないのか、はたまた聞く必要なんてないって言いたそうにへらへらしてる。
こんな奴らと話しているとこっちまで低レベルになってしまうわよ。
「ライア、もう行こう~?」
子供達は既にフィアが避難させてるしこんな奴らに構ってるならさっさと喫茶店に行きたいわ。
ライアの腕にぎゅっと抱き付きながらもライアを見上げる。
「……そうだね、悪いけど失礼させてもらうよ」
「いずれ分かりますよ、正しいのがどちらか、ね?」
にやりと笑ってるけど自分達が格好いいとでも思っているのかしら?
全然格好よくもないんですけど。
まだ言い足りなさそうなアルトが居るけど、このままお店の前で騒いでも迷惑でしょ。
あんな馬鹿は相手するだけ無駄よ。
お店から離れるとフィアが居るとこに向かう。
「フィア~、大丈夫だったぁ?」
「うん、この子達も大丈夫よ」
子供達も怪我はしていなかったのか安心したように笑ってるフィア。
別に子供の心配をしていたわけじゃないんだけどまあいいわ。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「ありがとー!」
近くで見てわかったけど狸と狐の耳かしら?
子供達はにこにこと笑顔を浮かべながらぎゅっとアルトの手を握った、アルトは少し照れたように頭を掻いている。
「あー、まあ、アイツらがムカついたからよ」
それは同感ね、あんな馬鹿は私の視界には入れたくないわ。
同じ学園ってだけでも気が滅入るのに……。
「それより、もう暗くなるから気を付けて帰るんだぞ。 お前らどこ区だ?」
「僕たちね、シスターと一緒に来たんだよ!」
「来たのよ!」
シスター?
てことは、この子供は教会が経営してる孤児院の子供達ってことね。
孤児院があるってのは聞いていたけど本当にあるのね。
「もしかしたら、シスターはこの子達を探してるんじゃないかな?」
ライアの言う通り普通のシスターなら探しているでしょうね、五歳くらいの子供を二人で居させるわけもないでしょうし。
まともじゃなければ探してないでしょうけど。
「探した方がいいよね」
フィアは心配そうに子供達を見てるけど同じ獣人だから気になるのかしら。
先ほどの馬鹿男を見てたら心配になるのも仕方ないのかもしれないわね、また絡まれる可能性はあるんだし。
「孤児院に送ることも出来るけどシスターが心配するからね」
既に子供達と一緒に居ることは決まっているかのように話してるけど、私的にはどうでもいいわ。
ここで子供を放置したら私の印象が悪くなるから言わないけども。
「貴方達! 見つけたわ!」
「シスター!」
「シスター!」
フィアやライアがどうしようか悩んでいると修道女の服を着た女がバタバタと走ってきた。
息を切らしている所を見れば必死に探して居たみたいだからまともな人なんでしょうね。
「申し訳ありません、うちの子達がお世話になりました!」
私たちの服を見て学園の生徒ってわかったのかぺこぺこと頭を下げてるけど当然よね。
うちは平民より貴族のが多いし、貴族は獣人嫌いも多いから、もし獣人嫌いの貴族に粗相でもしたらどうなるかとか考えてるんでしょう。
「大丈夫ですよ、気にしないで下さい」
にっこりとライアが微笑む中、フィアやアルトに気付いたのかホッとしたような表情を浮かべてる。
違う種族の獣人だけど同じ獣人が居たことに安心してるんでしょうね。
「それでは、私たちはこれで失礼します」
「バイバーイ! お兄ちゃんお姉ちゃん」
「バイバーイ!」
シスターはしきりに頭を下げていたが子供達はにこにこと笑顔を浮かべ手を振りながら去って行く。
ちゃんと保護者と会えて安心したのかフィアもアルトも笑みが浮かんでる。
「じゃあ、行くか?」
「うん!」
シスターと子供達を見送ると私達は行こうとしていた喫茶店に向かった。
ちょっとトラブルはあったけどまあ問題ないかな。
来週の旅行が楽しみね。




