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ぶりっ子少女の夢は玉の輿  作者: 猫目 しの
異世界の日々
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異世界に生まれて

 


私がこの世界に転生させられてから5年経った。

生まれたのは五大貴族の家、生まれ変わっても親は最悪。


私に魔力がないから可愛がられない。

でも、見た目は兄姉の誰より可愛いから捨てられてないけど。


政略結婚とかに使うつもりなんでしょうけど私はいつかこの家を出て行くつもりだから関係ない。

ギルドにも登録しなきゃ。



今日も家には居たくないから日課の散歩をしてる。




「汚いわね」


「魔力なしは生きてる価値ないんだよ」



散歩していれば聞こえてくる汚い声。

この世界にもやっぱり苛めはあるみたい、男女関係なく。


苛められているのは五大貴族であるアクト・フィオレ。

私と同じ魔力なしで生まれた少年。


苛めているのも同じ五大貴族。

水の貴族の娘、サラ・リデリア。

土の貴族の息子、クリュス・デント。

風の貴族の娘、アリス・クレイン。

雷の貴族の息子、セルディア・セシルト。

そして苛められてるアクト・フィオレの妹である火の貴族の娘、レイア・フィオレ。



因みにセルディア・セシルトは私の双子の兄。

まあ、私は可愛いから苛められてないし可愛がられてるけど。


この世界での私の名前はリルディア・セシルト。




「魔力なしは生きてる価値ないなら、リルも生きてる価値ないのぉ?」



まあ、可愛い私が生きてる価値ないわけないけどね。




「リルっ」


「リルちゃんが生きてる価値ないわけないだろっ!」



この世界でも女には嫌われてるけど兄のセルディアもクリュスも私の虜。

他の3人は私がセルディアとクリュスに気に入られてるから私を苛められないみたい、いい気味。




「だって、リルも魔力ないもん……」


「リルちゃんは俺に守られる為に魔力がないんだよ。 こんな奴とは違うっ」



アクト・フィオレに魔法をぶつけるのを止めたクリュスとセルディアは私に近寄って来た。

サラ、アリス、レイアは私を睨んでる。


あっは、そんな般若のように睨んでるなんて可愛くない。



「ありがとぉ。 それで、リル……みんなと遊びたいなぁ」




別に苛めから助けてあげるわけじゃない。

そんな醜い行動を可愛い私の前でされたくないだけ。

じゃなきゃ、誰が好き好んでこんなガキと遊ばなきゃなんないのよ。




「ああ、そうだね。 リルの目にあんな汚い物体を写すわけにはいかない」


「サラ達もそれでいいか?」



セルディアとクリュスに言われたら頷くしかないのか3人も渋々頷いた。

私を睨んできてる癖に自分の意見もないわけ?


「じゃあ、行こう?」



私は5人がアクト・フィオレに背を向けた瞬間に小さな救急箱をアクト・フィオレに投げる。

手当てぐらい自分で出来るでしょ。


笑顔を浮かべたままセルディアとクリュスの腕に抱き付き歩き出した。





「森に入るのぉ?」



連れて来られたのは森。

確か魔物が居て危ないから入っちゃ駄目だって言われてなかった?




「大丈夫、リルちゃんは俺が守ってあげるよ」


「いや、リルを守るのは兄である僕の役目だ」




私に格好いい所を見せたいからって危険な森に入るの?

ってか、5歳であるあんたらが私を守れるわけないじゃん。

3人の女たちも何も言わないし。



「怖いの?」


「怖いなら1人で残ってもいいですよ」




怖い?

私には自分を守る力があるのに怖いわけないじゃん。

どうせ魔物に会ったら怖がるのはあんたらでしょう?




「行くわよ」




レイアの声に引かれて私たちは森の中にと入っていく。

静かな森だけどこんな静かな森には何か居るのが当たり前。

なのに、気にしてないのか5人は奥にと歩き続ける。


まあ、私も魔物を見たことないから今は何も言えないけど。




「静かだなー」


「魔物が居るなんてお父様がつく嘘じゃないですか?」



子供だからこんな危機感もなく話してるんだろう。

ちゃんと周りを見てれば木に大きな爪跡があったり、地面に足跡があったりするのに気付くのに。




「今度この森の奥にアイツを捨てに行こう」


「それはいいわね」



ハッ、馬鹿みたい。

その年で人殺しになりたいわけ?


こんな森に魔法が使えない子供を捨てたら死ぬだけよ。



「あ、あれ見て下さいっ」



慌てたような声が聞こえたと思えばすぐ近くに獣の匂いを感じた。

バキッと枝が折れたような音の方を向けばそこに居たのか私たちより断然大きな身体の狼。

隣から怯えたような声が聞こえる。


まあ、こんなに大きな狼が居たら流石に怖いよね。

私も平気そうに見えるかもしれないけど実際怖い。




「魔物だっ…!」


「にっ、逃げなきゃ!」



倒すとか何とか話してたけど私たちはまだ5歳。

小さな魔物でも倒せるわけがない。

我先にと狼から逃げるように来た道を走って行く。


……私を置いて。




『フンッ、不様だな』


「そうだねぇ」


『……娘、我の言葉がわかるのか?』


「うん、そうだよぉ?」




私は魔物と喋れるから逃げなかったわけじゃない。

逃げようとしたけどサラに押されて尻餅ついてしまっただけ。

……帰ったら覚えてろ。




『フッ、面白い娘だ。 我の姿を見ても逃げずに話すとは』


「押された時に足挫いただけだもん」



やっぱり神が言ってたように魔物って頭がいいんだ。

魔物にとって人間の子供は人間にとっての虫と同じなんだろうね。

いつでも殺せるって事か。



『娘、口調は作らなくてよいぞ』


「ありがと、名前なんて言うの?」



『我はライウルフの長のラースだ』



ライウルフって種族なのか。

まあ、ライウルフって言われてもどんな魔物なのかわかんないけど。




「私はリルディア・セシルト。 訳ありで魔物の言葉がわかるの」


『本当におかしな娘だ。 我が怖くはないのか?』



怖すぎて怖い通り越したわよ。

日本には狼なんて居なかったんだから当たり前じゃない。




「話せても怖いわよ。 魔物に会うなんて初めてなんだから」


『面白い娘だ、気に入ったぞ』


「あら、ありがと」



いつまでも地面に座っているわけには行かないので立ち上がるけど土で汚れて気持ち悪い。

絶対許さないんだから。




「ラース、この辺に水辺ってない?」



服はどうにもなんないかもしれないけど手とか足は洗いたい。

こんな広い森なんだから川とかあるでしょう。




『もう少し奥に行けば湖がある。 我ら一族はそこでいつも水浴びをしているぞ』


「案内出来る?」


『ああ、お前は面白いからな。 我が案内してやろう、ついて来い』




ラースが歩き出したので私もラースの後について行く。

サラに仕返しする時はまずセルディアとクリュスを味方にしよう。

泣けば私の味方になってくれるはず。




『ここだ』



ラースってば人の通った跡がないような獣道ばかり進むんだからっ。

せっかく私に合う可愛い服を着ていたのに枝に引っかかったりして少しボロボロになってしまったし最悪。


あれもこれも私を押したサラのせいにしながら前を向けば広く綺麗な湖がそこにあった。




「綺麗な場所ね」



こんな綺麗な場所で手を洗っても大丈夫なわけ?

魔物たちの飲み水ではないよね……。




『こんな森の奥深くまで来る人間は居ないからな』


「じゃあ、ラースもあまり人間見ないんじゃないの?」


『いや、我は一族の長なので人間に襲われている仲間が居たら助けに入るからな。 人間とは幾度となく戦っている』




人間と戦ってきたのに生きてるって事はラースは強いんだ。

まあ、一族の長なのに弱かったら全滅するだろうけど。


ここには動物保護法とかないしね。


とりあえず、ドロドロだし手を洗おう。

誰も居ないし暖かいから水浴びしてもいいかも。

タオルとか持ってきてたら服も洗えたのに残念。




「ねぇ、また来ていい?」



街の中で遊んでたらあいつらに会うし、私は可愛いから誘拐されたりしたら困るしね。

ここなら誰も居ないから安心。


手を綺麗に洗えばラースに問い掛けつつ立ち上がる。

断られても来るつもりだけど。




『来ても構わんがお前の様な子供が1人で来れる場所ではないぞ?』



まあ、結構険しい獣道だったし途中でラースにおぶってもらったりしてたし。

体力がない私は1人では来れないでしょうね。



「ラースが迎えに来てよ」


『我がか?』


「うん」




あっ、何かラースが怒ってるような気がする。

魔物だから表情変わらないしよくわかんないけど、多分怒ってる。




『お前は我を何だと思っておるのだ』


「えっ、友達」




だって、こんなに素で話せるのは向こうでは暁だけだったし。

暁の代わりってわけではないけど友達になれたら嬉しい。

多分、こっちの人間では暁の様に仲良くなれる人は居ないと思う。




『友達?』


「うん、友達」


『……なら、仕方あるまい。 お前がこの森に入って来たら迎えに行く』



今度は照れてるのかな?

何で表情がわからないのにラースの気持ちが何となくわかるのかはわからないけど、別にいいや。




「ありがと、ラース。 後、私の名前お前じゃなくてリルディアだよ」


『ならば、リルディアもう帰らねば心配するぞ』


「そうだね……、じゃあ送ってくれる?」


『では、ついて来い』




別に帰りたいわけじゃないけど、サバイバルもしたことない私がこんな森で暮らせるわけじゃないし。

帰ったとしてもラースにはまた会えるし。



人間より魔物の方がいいかも。



ラースの毛並みを撫でながらも小さな笑みを浮かべる。




 

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