デート③
「女連れのガキが粋がるんじゃねぇぞ!!」
男は捕まれている右手をそのままに左手にナイフを持ち、シアンに向かって振り上げる。
しかし、シアンは怖がる素振りはなく男の右手を離し素早く身を屈めると男の鳩尾を思いっきり殴る。
鎧も着てないし、あれは痛いわね。
男は痛みのあまり悲鳴を上げることなく崩れ落ちた。
「それで、場所はどこだ」
崩れ落ちて痛みに呻いてる男なんて気にしてないのか普通に立ち上がると受付に問い掛けるシアン。
鳩尾殴ると行きが一瞬止まるくらい痛いって聞くけど本当なのね。
私はそこまで力ないから無理だけど。
「こ、こちらです」
床に蹲ってる男は周りの冒険者にどこかに連れて行かれたけど、喧嘩は日常茶飯事みたいね。
一人の時もランク上げる時に依頼を受けに来ようと思ってるけど、私ってわからない様に変装した方がいいわ。
私が可愛すぎるから余計に目立っちゃう。
「行くぞ」
「うん!」
ギルト員が案内してくれるのか私はシアンの腕に抱き付きながらその後を付いて行く。
帝なら落としてもいいかもって思ってたけど乱暴者ならやっぱ止めとくわ。
一番いいのはライアなんだけどー。
ギルト員に案内された部屋はそこまで大きくなく、机一つと椅子が一つある部屋だった。
椅子には緑色の短髪で眼鏡をかけた男の人が座っている。
「従魔登録者ってシアンなのか」
ちょっと弱々しそうだけどにこにこと笑顔なおじさんだ。
むあ、ギルドマスターがシアンのお父さんなんだからギルドに知ってる人が居てもおかしくはないか。
「ああ、学園のサバイバル演習にな」
「そちらのお嬢さんは恋人かな?」
「……そんなわけないだろう」
にこにこと笑顔のままのおじさんとムスッとした表情のシアン。
あー、シアンって確かライアが好きなんだっけ?
だから私と恋人関係に見られるのが嫌かもしれないけど、こんなに可愛い私が抱き付いていても何にも思わないのね。
「ただの友達ですよぉ!」
恥ずかしそうに手を口元に持っていき照れてる様子を見せる。
私は私がもっと可愛く見える様に常に研究してるのよ、こんな私をブスだなんて言う人は居ないわ。
「ふふっ、仲が良いね。 おっと、仕事をしなくては……それじゃ、従魔を出して貰っていいかな?」
シアンは小さく溜め息をつくとデスドラ……ルシリフルを呼ぶ。
「来い、ルシリフル」
シアンの影から大型犬くらいの大きさのルシリフルが現れた。
契約した魔物はずっと外で契約者と一緒に居ることもあるけど、大きい魔物だと契約者の影に入っていることが多いみたい。
まあ、体を元に戻したり、小さくしたり出来るのは極々一部の本当に力の強い魔物だけみたいだけど。
小さい方が街中には入れるから便利よね。
「ほう、これはもしかして……デスドラか!」
机に手を置いてガタッと勢い良く立ち上がるおじさん。
ルシリアンが珍しいのかまじまじと見ている。
まあ、そのルシリフルはシアンな隣ではなく私の隣に居るけど。
アンタの主人はシアンでしょうに。
『ようやくリルディアに会えたと思うたらこんな狭い場所でとは』
私が魔物と言葉を交わせるのは秘密にしているので無視する。
バレたら厄介だし、あの両親が政略結婚急ぐでしょうしね。
私はあんな両親に使われない、
「サバイバル演習の時にデスドラが現れた事は知っているだろう?」
「ああ、あの時はギルドも大変だったね。 魔境の森にデスドラが出た事なんてなかったから……」
「詳しい事は今日、ライアが国王様に話す手筈になってる。 数日後にはギルドにも通達があるだろう」
「それはありがたいね。 ランクAのデスドラが何故魔境の森に居たのかはっきりしないとまた同じことが起こったら冒険者の命も危ない」
私はバリア張れるから安心だけど下位ランクの冒険者なら死ぬでしょう。
まあ、私には関係ない事だからどうでもいいけど。
「しかし、デスドラは契約者であるシアンよりそちらのお嬢さんの方が好きみたいだね。 契約者より他の人が好かれているのは珍しい」
「元々、リルディアが気に入られていたんだがリルディアは盲魔だからな」
「なるほど」
まあ、アイツが魔力をくれなかったからね。
接近戦より、魔法の方が怪我する確率は減るのに……ムカつくわ。
「よし、では軽く審査をしようか。 シアンの言葉に従えないから登録は出来ないからね」
『リルディアの近くに居る為にそいつと契約しただけだ。 何故、その男に従わなければならない。 我は誇り高き龍であるぞ』
……誇り高き龍って感じじゃないけど。
キルクなら多分大人しくフィアに従うとは思う、フィアを気に入った様子だったしね。
まあ、ここで手間取るとこの後買い物に行けないから……。
「ルシリフル、頑張ってぇ」
『……あい、わかった』
シアンから離れる振りをしながらルシリアンの尻尾を踏ん付けておく。
痛みはないだろうが私の意図を理解したのか仕方なくルシリアンは頷く。
アンタのくっだらないプライドより私の買い物の方が大事なんだからパパッと終わらせなさいよね。
「それでは、始めようか」




