そして、現在
「愛華ちゃん、好きだっ!」
ここは屋上、そして私は今告白されています。
相手は学校1イケメンと噂されている赤石拓也くん。
イケメンでも親は普通のサラリーマン。
デートして見せびらかすのなら顔的に問題ないけど、玉の輿になるつもりなら必要なし。
よって却下。
「ごめんねぇ? 愛華ぁ、みんなが大好きなの~」
可愛い顔に可愛い声、そして賢い頭。
自分で言うのはなんだけど私って神に愛された女の子だよね。
「なっ、俺じゃ駄目なの?」
お金持ちじゃなきゃ駄目。
じゃないと、今まで私がしてきた苦労が水の泡になっちゃう。
「愛華……みんな大好きだもん。 1人だなんて選べないっ……!」
イケメンくんはちょっとうざそうな感じなので叫ぶように言えば屋上から逃げるように出て行く。
ここで瞳に涙を溜めてる事が重要。
訳ありな女の子にも見られるし、何より男達に心配されやすい。
まあ、女には嫌われやすいけど。
走って帰ってきた場所は保健室。
因みに保健の先生(男)も私の魅力にメロメロだからいつ来ても怒られない。
今日は出張だから居ないけど合い鍵をもらってるのでそれで入る。
「ふっ、あはははははっ!」
後ろ手に鍵をかければ誰も入って来れない。
私はぶりっ子の私を捨て大きな声で笑える。
男なんて甘い声で強請ってやれば誰だって言うことを聞いてくれる。
見た目しか見てない証拠。
「楽しそうだな」
「ふふっ、楽しいよぉ」
保健室に誰か居ることはわかっていた。
まあ、それが親友である暁だから素が出せるんだけどね。
「赤石拓也、3年4組出席番号3番。 彼の父親はただのサラリーマン、母親はスーパーでパート、シスコンの姉妹が居る」
「よく知ってるね、流石は暁。 お金持ってなさそうだし、ああいうタイプは大抵ナルシストだから逃げて来ちゃった」
「ナルシストはお前だろ?」
物心ついた時から自分が可愛いのはわかっていた。
けど、両親が最悪。
父は母に暴力振るうし、母は母で父がパチンコや居酒屋に行ってる間に若い男と浮気してるし。
幼い頃から私は邪魔者だった。
だから、私は玉の輿になって家を出て行くって決めたの。
私は自由に生きる。
暁と出会ったのは私がまだ小学3年生の時だ。
小学生と言えど他の女達は好きな人がうんぬんかんぬんあったし、モテる私は虐められていた。
恨むんならモテない自分を恨みなよ。
私は男達に囲まれてたし、被害は少なかったからそんな女達なんか気にしてなかった。
所詮はただの負け犬。
1人じゃ私に何も言えないから束になってチンケな事をしてるんだって思ってたから。
虐めって言っても靴隠されたり机に落書きされたり子供っぽい虐めだったけど。
「だって、愛華は可愛いもん」
私を嫌いな女達にだって一度たりとも不細工なんて言われた事ない。
可愛いって自覚してるし?
私は細いけど食べても太らないってわけじゃないから太らないように努力してるし、勉強だって授業をちゃんと受けてるから頭がいいの。
僻みを言う女の中には私がカンニングをしたとか教師に答えを教えてもらったとか言う奴も居たけどこれは私の努力の結果。
馬鹿な事を言う女なんて黙らしてやる。
「確かに可愛いな」
暁の家は裕福みたいだけど親友の暁と結婚なんて無理。
顔も悪くないけどさ。
「やっぱり、愛華は神様に愛されてるのぉ~」
まあ、本当に愛された人間ならあんな家に産まれさせたり嫌われたりしないんだろうね。
「俺は愛を応援してるよ」
「ありがと」
今まで出来た事なかったけど親友ってこんなのなのかな?
「そう言えば今日はデートじゃなかった?」
「あっ、忘れてた……。 じゃあ、また明日ね」
今日は医学生とデートだったの忘れてた。
私は暁に手を振れば鞄は持ったままだったのでそのまま学校から出て待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所にゆっくり向かえばベンチに今日のデート相手の酒井悟が居た。
汗臭さが気にならないように軽く香水をつけると小走りで悟の所に向かう。
「愛華ちゃん」
「ごめんなさぁいっ。 遅れちゃってぇ」
男なんて謝れば簡単に許してくれる。
だって、私は可愛いんだもん。
まあ、ただ謝ればいいだけなんだけど上目遣いで涙目の方が効果的。
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。 俺の為に急いで来てくれたんだね」
ほら、男なんて単純。
私が可愛く謝れば誰もが許してくれるし、誰も怒らない。
「行こぉ?」
胸を押し付けるように腕に抱き付けば悟の顔が赤くなるのがわかる。
童貞じゃないんだから一々赤くならないでよ。
“酒井悟、20歳の医大生。
父親は大病院の院長、母親は専業主婦。
1人息子なので将来は父親の跡を継ぎ大病院の院長になる。
しかし、順位は医大生の中でも下位争いをしている。
好きなタイプは天然で可愛い子。”
いつも思うけど暁の情報網はどうなってるの?
好きなタイプまであるし……。
まあ、助かっては居るんだけどね。
悟の腕に抱き付いたままも街を歩いていれば可愛いバッグを発見。
高いけど悟なら余裕だよね?
「あー、これ可愛い~。 悟ぅ、愛華にこのバッグ買ってぇ?」
腕に胸を押し付けたまま悟を上目遣いで見上げ可愛く首を傾げる。
大抵はこれだけで買ってくれるんだからちょろいもんよ。
「こ、これを?」
こんなに可愛い私が頼んでるんだからさっさと買えばいいのに。
……悟には30万は無理だったかな。
「愛華の宝物にするからぁ」
「わかった……」
私の可愛さはやっぱ罪だよね。
でも、私の為なのに30万ぐらいで迷うなんてもう悟は用済み。
もっと自由にお金を使えるお金持ちを探さなきゃ。
「ありがとぉ!」
男なんてやっぱり馬鹿ばっかり。
だから、暁以外の男は大嫌い……暁は親友として大好きだけど。
「愛華ちゃんっ、危ない!」
はぁ?
…っ…!!!!
な……に……?
「愛華、お前が悪いんだ! お前が散々貢がせた挙げ句俺を捨てるからっ!」
ああ、背中が痛い……刺されたんだ……。
まだ私は自由になってないのに……死ぬなんて嫌っ。
暁っ、暁っ、暁っ、暁っ、あかつきぃっ!