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ぶりっ子少女の夢は玉の輿  作者: 猫目 しの
異世界の日々
122/123

嵐の前の静けさ④

 


中に居るゴブリンキングは何か怒っているような感じで地団駄を踏んでるように見える。

自分の部下であるゴブリンが急に眠ってしまった理由がわからず、困惑じゃなくて怒りに感情が向いてしまってるんでしょうね。

理解が出来ないことが起こった際は感情を露わにするんじゃなくて冷静にならなきゃいけないのに、やっぱ知能が高いって言っても魔物ね。



「ミィ、まずは私が安全に刺せるようにゴブリンキングを拘束しなさい」


『はーい!』



のんびりしたミィの声に緊張感が抜けそうになってしまうけど、ミィの能力が高いのは私が一番よくわかってるから私がしっかりしなきゃいけないわ。

私がそれで動揺しなければ刺すだけなら簡単なはずだもの。


ミィの魔法で人間の腕くらいある太い茨がゴブリンキングの足、腕に絡みついた。

どこからともなくいきなり拘束されたゴブリンキングは大きな叫び声を上げているが私はそんな声に躊躇せずドアを開けナイフを構えてゴブリンキングに突撃した。


ゴブリンキングは現れた私の姿を見て対応しようとしたみたいだけどミィの茨はゴブリンキングを離さない、大丈夫だと思ってはいるけども念のためにゴブリンキングの背中に回り込み力いっぱい背中にナイフを突き立てる。

予想以上に頑丈なゴブリンキングの体にナイフが深く刺さらない。


思った以上にゴブリンキングの体は硬いけど、私の力は毒。

即効性ではないけども少しでも体内に毒が回ればこっちのものよ。



『人間ッ、家畜ノ分際デッ!』


「こんなに可愛い私を家畜だなんて見る目がないわね。 無駄に硬い体なんていらないんだからさっさと死になさい」



ギロリと私を睨むゴブリンキング、こいつにとって私たち人間は家畜と同じ存在みたいね。

暴れようとする体はミィに抑え込まれていて動かすことが出来ないようで、その姿を見て私は更に深くナイフを押し込んだ。


毒が苦しいのか唸り声が聞えて来たが苦しいだけでまだ体内に毒が回りきらないからしばらくは暴れようとするでしょう。

ミィに任せてるから問題はないでしょうけど、もしもがあるかもしれないから念のためにゴブリンキングから離れておく。



『ウッ、グアアア!』


『リル、だいじょうぶ?』


「問題ないわ、それより気を散らして魔法を解かないでよ」



ミィの魔法が解かれてしまったらゴブリンキングに追いかけられることになるんだからそこはちゃんとして貰わないといけないわ。

あんなウスノロに追いかけられてとしても私なら逃げられるとは思うけどね。



『うん!』


『家畜風情ガ……毒ナンテ卑怯ナ手ヲ使ッタナ!』



体内を巡ってる毒に気が付いているのか苦しそうに唸りながら言っている。

毒なんてあるんだから使って下さいって世界が言ってるようなものじゃない、そんなので卑怯だなんて言われても困っちゃうわ。


魔物にも魔物のやり方があるんでしょうけど、そんなの私の知ったことじゃない。



「卑怯でも何でも勝てればいいのよ、勝てれば。 ルールが決まってる騎士の勝負じゃないんだから冒険者である私と魔物であるアンタのルールのない殺し合いよ」


『妖精ヲ味方ニツケテ何様ツモリダッ』


「あら、だってミィたちは私のことが大好きなのだから当然でしょう? ミィたちが私から離れるまではその力は私のものよ」


『リルからはなれるつもりないもん!』



妖精は波長の合う人間にしか見えないって話だったけど魔物には見えてるのね。


苦しそうにしてるゴブリンキングとは対照的ににこにこと嬉しそうにしてるミィは私にぴたっとくっついてきた。

別にくっつくのはどうでもいいんだけどちゃんと魔法は継続してなさいよ、ゴブリンキングが拘束から逃げた瞬間アンタたち置いて逃げるからね。



『グゥウッ……! コンナコトナラアヤツラニ手ヲ貸してオケバ……』


「……あやつら? 他の魔物と合流する予定でもあったの? ゴブリンが他の魔物と一緒に行動するなんてギルドでも聞いたことないけど……気が合う魔物がいたら一緒にいるのもおかしいことじゃないのかしらね」


『魔族タチダ』



思い掛けないゴブリンキングの言葉に私はびっくりした。

ゴブリンキングが魔族のことを知ってるのもびっくりした一つではあるけど、ゴブリンキングの言葉を信じるなら魔族がゴブリンたちに仲間になれって言ったのか……いや、魔族の考えからしたらゴブリンたちに僕になれってことなのかもしれないけども。


魔族が魔物を仲間に引き入れようとしてる意味は今はまだ分からないし、仲間を増やそうとしてるのが本当ならちょっと面倒なことになるわ。

魔族だけでも面倒なのに数まで揃えられたら人間が勝てる見込みがないもの。



「魔族の目的は知ってるの?」


『知ランナ。 知ッテイタトシテモ家畜に教エルコトハナイッ』


「まあ、魔族の仲間になることを拒否したのなら知らなくても当然かしら。 ……でも、この情報はギルドに渡すことは出来ないわね」


『どうして? 証言として間違っていないならいいんじゃないか?』


「魔物の言葉が分かるのは私だけなのよ? ギルドに伝えたとしても私の頭がおかしいとしか思われないわよ。 ディオ先生なら信じてはくれるでしょうけど、いくら帝が言ってることだとしても証拠もなければ信じられないの」



ゴブリンキングがわざわざ嘘を私に話す必要はないからこの話は本当のことなのでしょう、でも人間って生き物は話だけじゃ信用してくれないわよ。

ただ頭のおかしい人扱いされて終わり。


ここで私が悩んでいても進展はしないでしょうからさっさとゴブリンキングを殺してギルドで捕まってる人の処理を任せて全てをディオ先生に押し付けましょう。

面倒なことは考えるだけでも無駄だわ。



 

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