嵐の前の静けさ②
私が冗談を言ってると思っているのかアリアは笑って居るけども、私は本気なのにね。
もし、捕まってる女たちが居たらちょっと面倒ではある、でもゴブリンを倒すくらいなら私一人でも問題はないもの。
捕まってるのが長期だったら心を壊してる可能性が高いし、一人だったらまだしも数人居たら無防備な女たちを私一人で守るのも大変だし、繁殖目的な女たちじゃなくて遊び道具の人間が居たらもっと厄介よ。
一度街に戻って来てから案内する為にまた行かないといけないし、それが終わって街に戻ったとしてもギルドからの事情聴取もあるだろうし。
だーれも居なかったらゴブリンの巣に毒を流し込んでそれで終了。
事情聴取とか無駄な時間も使わないし、討伐の証拠の右耳を切るのがちょっと面倒なくらいね。
死体はそのまま置いていたら勝手に魔物が食べてなくなるでしょう。
「はい、受付完了しました。 どうぞ、気をつけて頑張って下さい」
アリアからギルドカードを受け取ればそのままギルドを後にする。
街から出て森の中を進んで歩く、夕方なのもあり森の中は薄暗いけども私にはサイス達が居るので迷わずに進めるわ。
「ロー、近くに魔物はいるかしら?」
『少し遠くにはいるけど近くには居ないな! でも、ゴブリンじゃない』
「じゃあ、もう少し奥に進んでみましょう。 ……遅くなるのは面倒だけど仕方ないわよね」
風の妖精であるローは偵察に向いてるから狙ってる魔物を探すには丁度良いわ、洞窟の中でも迷うことはないし、意外と便利なのよね。
人間でも妖精でも私の為に働くなんて当たり前よ。
まあ、ちゃんと働いた分のお菓子は作ってあげてるから問題ないでしょ。
しばらくうるさいミィたちの話声が聞きながらもしばらく進むと漸くローがゴブリンを見つけたみたい、道なき道を進んだから大変だったわよ。
『この洞窟の中だな!』
「洞窟の中ね……中の広さにもよるけど巣が出来てたら大変だわ。 ロー、中にゴブリンが何体いるか、人間が何人いるか調べてきて」
『お、パパっと確認してくるぜ!』
ひゅーんと洞窟の中に入って行くロー、ローならすぐに戻って来るでしょうから私たちは周りを警戒しながらも少し休憩することにした。
とは言っても疲れたのは歩いてる私だけであって、ミィやサイスはただついて来ただけだから疲れることなんてないでしょうけどね。
『リルー、おやつあるー?』
「どうせ、ローはすぐ戻ってくるんだからおやつなんて食べてる暇ないでしょう」
『えぇー、だってリルのおやつだいすきなんだもん』
最近のミィは私の作るお菓子にハマっているのか隙あらばお菓子を狙ってくるけども、そんな毎回毎回作ってられないわ。
私自身も運動はしてるけども太ってはいけないからあまりお菓子は食べないもの。
もちろん、男を落とす為に料理の腕は磨いてるからたまには腕が鈍らないように作ってるけどね。
『俺に内緒でお菓子なんてずるいぞ!』
いつの間に戻って来ていたのか少し怒っているような様子でローがミィに文句を言っている。
たまにふらっと居なくなるけど、居る時はちゃんとローにも渡してるからミィだけじゃなくてサイスやローもお菓子が好きみたい。
「そんなことより中の様子はどう?」
『そんなことじゃなくてすっごい大事なことなんだからな! ……まあ、中にはゴブリンが68匹と人間が5人くらいいるぞ』
私がそんな事って言ったから少しショックを受けたようなローだったけど、頼んだことはちゃんとやってくれてたみたいで調べた中の様子を教えてくれる。
5人ってことは捕まってるのが男なのか女なのか、大人なのか子供なのか、わからないけども毒の風を洞窟中に流してゴブリンを殺すことは出来ないわね。
そっちの方が楽だったんだけど……中に居る人間まで殺しちゃったら法律上は討伐中の事故として処理されるから問題はないけど非難はされる。
関係ない奴にぎゃーぎゃー騒がれるのもうるさいし、私の玉の輿計画にも支障が出るから止めとくわ。
「じゃあ、他の方法としてはネムリソウを使った方がいいわね。 中のゴブリンを全部殺したら生きてる人間の様子だけ確認してから一度ギルドに帰りましょう。 ミィ、この洞窟に居る人間も魔物も全てが眠るくらいにネムリソウを流して、ローはそれを隅々までいきわたるようにしなさい」
『はーい!』
ミィの魔法によりネムリソウを咲かせローの魔法により奥まで届かせようとしてるのを感じながら、私は私のナイフを取り出した。
このナイフも鉄じゃなくてもう少し殺傷能力が高い素材で作られているのならちょっとは楽なんだけどね。
まあ、でもミスリルのナイフとかも一応売ってるそうだけど馬鹿みたいな値段がするようだし、眠ってる魔物を殺す
だけなら鉄でも十分かもしれないわ。
でも、ランクも上がったらネムリソウが効かない魔物も居るかもしれないし……金持ちそうな奴に貢いでもらおうかしら。
『リル、いいよー』
『奥まで届くように風を送ったから多分寝てると思うぞ!』
「了解。 じゃあ、行くわよ」
ミィとローの合図が来たので洞窟の中にネムリソウを充満させることが出来たのでしょうね。
入口の見張りであったでしょうゴブリン2匹の頸動脈をさくっとナイフで切って奥に奥に進んで行く、途中で寝てるゴブリンも同じようにさくさくと殺す。