いざ、妖精の国⑧
『まあ、多分大丈夫でしょ。 リトの物はちゃんと妖精王様が保管してるだろうしね』
「多分って……全く、食べなくてもいい妖精は気楽でいいわね。 仕方ないから戻って実物を見て決めることにするわ。 今度からここに来る時はちゃんと調理器具も持って来なきゃね」
こんな所でずっとご飯のことで言い合いしても仕方ないし、後回しにするしかないもの。
ミィたちが普通にご飯を食べてるからもちろんある物だと思っていたからこんなことになるなんて考えなかったわ。
『それがいいな!』
「それより、他に薬草以外の素材はあるのかしら?」
『どんなのがいいー? リトはそざいのほうこっていってたからいっぱいあるよ』
「そうね、そんなにたくさんあっても大きいのは持ち運びが大変……でも、ローが居たら私が運ばなくてもいいわね。 帰りは私の部屋に帰ればそこまで大変じゃないし」
それなら部屋に保管してて少しずつギルドに持って行けばいいだけだから楽かもしれないわ。
採取した場所は秘密にしてても問題はないし、ちょっと面倒なことを言ってくる人たちがいるでしょうけども冒険者のことを深く詮索することは規約で禁止されてるしね。
『おう、俺に任せてくれよ!』
「じゃあ、鉱石がある場所に行きましょう。 これで欲しかった服がオーダーメイドで買えるわ」
お金のない貴族もいるらしいけど、見え張るから良い服買って借金してる人たちもいるみたいだし。
まあ、私くらい可愛い女の子だったら自分で買わなかったとしても貢いでくれる男なんていっぱい居るんだからね。
森の中を歩くのが面倒だからさっきみたいにローに運んでもらう、ふわふわと楽に移動している間に辺りを見回してるけども周りは相変からず森ばかり。
ランクの魔物もたまに見かけるのに襲われないのはミィたちのおかげかもしれないわね。
『ここだよー』
『そうそう、今は居ないけどここにはウィリアムが居たんだよな』
『今はウィリアムは留守にしてるんだ、珍しいね』
『ちょっと前に出掛けてくるって言ってどこかに行ったんだよ。 それからまだ帰って来てないと思うぞ』
『ざんねん』
きゃいきゃいと楽しそうにしてる三人、多分そのウィリアムもどの属性か分からないけど妖精なのは確実でしょうね。
予想だけすればこんな洞窟に好き好んで住んでるのなら陰キャっぽいけど……属性が岩とか石なら頑固おやじっぽい感じもするし、予想するのは中々難しいわ。
「そのウィリアムって妖精が住んでるんでしょ? 勝手に鉱石採掘して良いの?」
『うん、だいじょうぶだよ! ウィルはいくらでもこうせきをつくることができるもん、リルがちょっともらうことぐらいなんともないよ!』
『ウィリアムは鉱石に執着してるわけじゃないしね。 僕らの巫女なら大丈夫だよ』
「巫女って言い方は止めなさいよ」
まあ、問題ないなら鉱石を取って行こうかしらね。
重いものは持てないから小さめのアクセに出来そうなものなら持って帰れるからそうしましょう。
「ここは魔物は居ないの?」
『ここはいないよー』
何でここにいないのかよくはわからないけどミィが言うならそうなのかしらね、魔物がいないなら警戒する必要はないわ。
それにもし私が探索してる間に魔物が入って来たら流石にミィたちが教えてくれるでしょう。
洞窟とか魔物を探すのが本当に面倒なのよね……コウモリみたいな魔物も居るし、岩に擬態してる魔物も居るし、常に辺りを気にしてないといけないから疲れるのよ。
ミィたちと居たらうるさいのは欠点だけど辺りを気にしなくていいのは私的には楽できるからありがたいわ。
「ま、何でもいいわ。 それより早く案内しなさいよ、そんなに大きい鉱石は持って帰るの大変だから小さいので構わないけど高く売れそうなものがいいわね」
『わかったよ、リトならたくさん持って帰って居たのにリルディアは謙虚だね』
『今の私がそんな大量に持って帰っても売れないでしょ、売れたとしても面倒な人間が近寄ってくるのは嫌よ。 もう少しランクを上げてからなら大丈夫でしょうけど』
一気に売れないなら部屋に置いて置くのも邪魔になるだけだし、せめて後6年は経たないと難しい気もするわ。
その頃になったら私も一人前の女になっているだろうからこんな自分で稼ぐなんて馬鹿みたいな真似をしなくても結婚して玉の輿を目指すのもいいかもしれないわね。
それならここに鉱石を取りに来る必要もなくなるでしょうし、こんなに可愛い私が戦ったりすることもしないで済むもの。
でも、6年後ってことは同級生たちはまだ貴族でも当主にはなれないし、未婚の貴族だったとしても結婚してないのには何か隠したい理由があるかもしれないし。
この世界って男女ともに結婚するのって早いのよね。
その時になって考えても考えるのもありかもしれないけどね、私ってばこんなに可愛いんだからすぐに結婚相手なんて見つかるだろうしね。
もしくは結婚して縛られるよりは愛人として生活するのもありかもしれないわ。
日本と違ってここは一夫一妻じゃなくて一夫多妻の国もあるみたいだし、愛人が居ても浮気にはならないみたいだから慰謝料も請求されないもの。
『リル、ここだよ!』
「ここ? 何もないただの行き止まりみたいだけど……」