いざ、妖精の国⑦
『そうなのー?』
「そうよ、私が劣化しないように処理する能力があったら話は別だったかもしれないわね」
妖精王なら空間弄ったりしてちょいちょいっとそんなバッグ作れないのかな?
結構この世界って勇者たちが使う力も様々なものがあるみたいだし、作れるのであれば妖精王に対するお願いはそれがいいかもしれないわ。
それがあれば採取するものも無駄にならないから私のお小遣いも増えるわね。
『でも、リルディアはいつでもここに来てもいいんだから問題ないんじゃないか?』
『そうだねぇ、むしろ人間の街よりこっちで僕らと暮らした方がいいよ』
「こんな森しかないとこに住めるわけないじゃない。 欲の深い人間がずっとこんな森だけのとこで住むなんて無理な話だからね」
妖精は美醜なんて関係ないみたいだし、私の可愛さが発揮できないじゃないの。
まだ子供だからロリコンの変態しか近寄って来ないけどももう少し大人になったら貢物もたくさん欲しいし、ランクの高い冒険者なら結構お金も持ってるでしょうしね。
日本みたいにオシャレな物がお手頃価格で売ってるわけもないし、お金はたくさん欲しいわ。
『それは残念だな』
『まあ、僕らの寿命は長いから気軽に待ってるよ』
のんびりと余生を過ごしたいならここはまだありかもしれないけど、私はそんな年を取ってまで生きたくはないわね。
見つけた素材を鞄にしまいながらも私たちは森の中を進んでいく。
大きい木々に日が遮られ暗いと思っていた森の中も水色に光るキノコがあったりして思ったよりも暗くはない。
見たこともないキノコだから売れそうだし、これもちょっと貰って行こう。
「本当にここって色んな素材があるのね。 このキノコも見たことないし、他にも私の知らない素材がありそうだわ」
『妖精王様が住んでるんだから当たり前だろ!』
『まあ、僕らからしたらそこに生きてるものたちってだけだからね。 人間からしたら嬉しいみたいだけど』
「妖精って普段何食べてるの? お菓子とか食べてるから普通の食事をしてるのかと思っていたんだけど……でも、あの家には調理器具はなかったわよね?」
キノコを生きものって認識してるならキノコは食べないのかしら?
でも、普通に私が作ったご飯も食べてるから生きてたものが食べられないってことはないでしょうし……自分で作ってるのか、それとも果物や木の実でも食べてるのかもしれないわね。
『僕らは食事はしなくても問題がないから食べないよ』
「……いつも私のお菓子食べてない?」
『リルのごはんおいしいよー』
いや、味の感想を聞いてるわけじゃないわよ。
食事をする必要がないなら食べる必要ないじゃない、いつも私が食べてる時食べたいって言うから一緒に作った上げてるのに。
「食べる必要ないなら食べなくていいんじゃないの?」
『食べる必要な派いけどあれだよ。 えーと、リトが言ってた嗜好品?ってやつだよ。 リトと一緒に食べるようになって僕たちも”美味しい”ってことがわかったんだ』
『あの時はリトが作ってたからな』
『ねー、リトがつくってくれなきゃおいしくなかったもん』
料理をしたことがない人が作ってもレシピがなければ作れないものね。
自分で作ったモノが美味しくなかったら元々食べなくても生きていける妖精からしたら食べなくてもいいって思うのかしら?
でも、私が作った料理は最初っから食べていたような気もするけど……。
『ミィ、リルがだいすきだもん! リトとリルいがいのにんげんにきょうみもないけど』
『僕もリルディアには興味あるよ。 だから、こうして一緒に居るんだからね』
『ん-、俺も人間嫌いのミィフォレントとサイスシアが気に入った人間ならいいと思ってるぜ。 人間は弱いからすぐに居なくなっちまうもんな』
まあ、好かれて鬱陶しい時はあるけども、今は私にはない力を貸してくれてるからこの私の近くに居ることは許してあげるわ。
空を飛べることも水の魔法が使えることも魔物を楽に殺せることも、私には必要なことだわ。
「私を裏切ったら許さないからね。 それだけはちゃんと覚えておきなさいよ」
『うん!』
ミィはずっと嬉しそうにしてるけども、本当に分かってるのかしらね。
この間抜けそうな顔を見てると何も考えていないんじゃないかと思うわよ。
「そう言えばあの家にちゃんと調理出来る場所はあるんでしょうね? ご飯が果物だけなんて私は嫌だからね」
『あー、多分あったと思うよ。 リトがいなくなってからどこかに置いたはず……』
「そのリトが居た日って何十年前のことよ。 そんな昔の調理器具なんて錆びて使い物にならないんじゃないの?」
そんな錆びついた調理器具でご飯なんて作ったらか弱い私なんてすぐ体調を崩してしまうわ。
調理器具が使えないとなるとしっかりしたご飯が食べられないからやっぱ果物を食べるしかないのかしらね……でも、私はまだ成長期なんだからちゃんと食べないといけないし……。
でも、丸焼きとかは流石に出来ないわね。