妖精を守る……話?⑤
私でもやれないことはなかったでしょうけどあんな馬鹿相手にするなんて絶対に嫌よ。
負けることはないけど、話の通じないモノを相手にするなんて面倒なだけだし、シアンが居なかったら私がやるしかなかったけどね。
「洞窟に入った後は中に居たゴブリンを倒して生徒を助けたわ。 正体がバレるとうるさいからマントで身を隠していたけど」
「ああ、それはフィオレから聞いている。 ”背の低い冒険者が貴族である私を無視して行った、見つけたら罰を与えるわ”って息巻いていたな」
やっぱりくっだらない女ね、感謝しろなんて言うつもりはないけども助けて貰ったのに罰を与えるなんて馬鹿のすることよ。
冒険者をやってる時は誰にも姿を見せるつもりはないけども、マント以外にも仮面とかあったら便利かもしれないわね。
使用者が外さない限りは外れない仮面の魔道具とかあったら便利かもしれないわね、もちろん私は魔力がないからミィにやってもらうしかないけど。
「あんな弱い女に見つかるほど私は愚かじゃないわ。 ……まあ、あの女のことはどうでもいいわね……洞窟を出たら応援を呼びに行ったフィアと男4人組の冒険者が来たわ」
「Aランク冒険者の守護神だ。 丁度良くギルドに居たようで応援に駆け付けたとうだ、しかし、魔族相手になら役不足だったかもしれないな……」
「半分は洞窟の中に入って行ったし……まあ、途中で邪魔になったから上手く追い出したけど」
「……フロレインが本気を出さないからだとは思うが言い方が悪いぞ」
あら、だって本当のことじゃないの、シアンだって帝としての力が出せないでしょうし、私だってミィの力を使うのに邪魔だったし。
応援をって言ったのはこっちだけどもこんなに早く応援が来ることも、魔族が居るなんてことも予想出来なかったわ……。
生徒の救出だけだと思って居たから応援を呼びに行って貰ったのにまさか魔族が居るなんて誰が予想出来たのよ、あれは私の責任ではないんだからね。
経験も積んでて弱いって言えないけども魔族相手には役に立たないわ、それならばどこかに行ってて貰った方がシアンも私も力を使えるわ。
「冒険者が行った後にルシリフル、俺の獣魔であるデスドラを呼び出して一度魔族を拘束することが出来た」
「一度、とは?」
「何らかの能力なのか、魔族の魔力が急に溢れ出してきた。 力も素早さも最初の何倍にも上がっていて妖精様の拘束も解かれてしまった」
魔族特有の能力なのか……それともあの魔族の大男の勇者としての能力なのか、それは私にはわからないわ。
でも、魔族特有の能力であるならば魔族の力を増強させる能力があるってことで迷惑なのよね、魔族と戦うつもりはもうないけども私の邪魔になるなら殺すしかないわ。
魔族であろうが、人間であろうが、私の行く道を邪魔するものには容赦はしない。
「また倒そうとした時に現れたのが風帝よ」
「ん? ああ、そこからあたしが合流したのかい。 あの時はディオに妖精様のことを聞いて急いでいたからね、そんなに強くなかったからシアンの力では森だと気にしなければすぐ終わっていただろうね。 あたしには魔族よりも妖精様の祝福を受けた者に興味があったよ」
「……風帝はそうだろうな」
あれは良いタイミングで現れたわね、私が囮になろうかって思ってた時だったからそうならなくてよかったわ。
私にはあんな馬鹿力だったとしても傷一つ負うわけないけども、囮になるのはなるので面倒だったし、仕方ないからやろうとしてただけだもの。
「魔族を風帝が倒した後は宿に戻ってディオ先生と合流したわ」
「任務の後始末を部下に任せたって話は頭を抱えそうになったがな……。 魔族の詳細はギルド待ちだろうから次の話は妖精様の話だな、セシルト」
「えー、それも私が話さなきゃならないの? ディオ先生~、ちょっと休憩しようよ~」
「早めに共有しなければならないだろう」
妖精の話ってミィやサイスから聞いた魔族道とかそっちの話でしょう?
それもちょっとはディオ先生にも話してるんだからディオ先生が話ながら私が間違えてるとこを補足するのでいいでしょうよ。
それならば、私は面倒なことはあまりしなくてもいいし、話も続けられるんだからお互いにいいでしょう……文句言ってもディオ先生は聞いてくれないから後で高級な食事でも奢って貰うんだからね。
「仕方ないわね……ここから先の話はミィたちから聞いた話だけども、魔族の目的は魔族道を作ること。 魔族道ってのは魔族の住んでる場所からすぐにここに移動出来る転移門、つまりその魔族道が出来たら魔族がぞろぞろとここにやって来るみたい。 魔族道がもう出来てるのか、まだ未完成なのかはわかってないわ」
「魔族の大群がここに来るだと!?」
「それは水帝からまだ聞いてないな。 ここが戦場になってしまうと王国の流通の途切れてしまう……すぐにでも俺様の密偵にこの付近を調べさせなければならないな。 まだ未完成だと嬉しい限りなんだがな」
海の向こうにある同盟国からの物資はここに搬入されるみたいだものね。
私にもまだ必要な物はあるし、ここが潰れてしまったら大変なことになるのはわかるわ。