将来の夢
「はい、賢也くんの将来の夢でした。 次は愛華ちゃんにお願いしようかな」
ここはとある小学校の1年生の教室。
発表が終わった男の子は原稿用紙をくるりと丸めて席に座る。
カタリ、と音を立てて立ち上がったのかふわっと軽くウェーブがかかっている長い黒髪の小さく可愛い女の子。
女の子は立ち上がると手元にある原稿用紙に視線を移す。
「1ねん3くみ、やましなあいか。 あいかのしょうらいのゆめは、おかねもちのおとこの人をつかまえてたまのこしにのることです」
「えっ、愛華ちゃん?」
ビックリしたような先生の声も気にせずに無邪気な子供らしく高い声で原稿用紙を読んでいく。
「あいかのいえにはとんでもないろくでなしのパパがいます。 はたらかないくせにまいにちまいにちおさけばかりのんでいます。 ママはパパのかわりにまいにちまいにちはたらいてつかれています。 だから、あいかはたまのこしにのってママをパパからたすけだします。 それが、あいかのゆめです」
にぱっと可愛らしい笑顔を浮かべられれば先生は何も言えずに着席させた。
席に着くと先ほどの可愛らしい笑顔から一転にやりと口元に怪しい笑みを浮かべる。
「(あんなくそばばあなんてどうでもいいし。 あいかはたまのこしにのったらひとりででていくもん)」
山科愛華、小学1年生。
賢くてちょっと黒い小学生だった。