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連休明け

5月の連休も終わり、益城町や南阿蘇村の避難所も震災時から比べると避難者の数が少なくなってきている。また、スーパーやコンビニなども平常通り営業を再開しており、日常生活そのものは、だいぶ回復している。救援物資なども受け入れはストップされ、食事の配給なども控えめになっている。



しかし、まだ改善されないことがある。やはり、住まいだ。空爆を受けたような町は本当に酷い。寝泊りするくらいなら大丈夫だろうと思う家でも、赤紙が張られてたりして入ることすらできない。すぐにでも避難所から離れ日常生活を取り戻したいと願うあまり、賃貸住宅や市営住宅への移住を希望する人も多く希望する部屋を探していても思うようにはいかないようで落胆している人も見受ける。賃貸住宅や親戚、兄弟の家に移り住むことが出来た人は、ひとまず安心だが、それが出来ない人たちは、まだこの避難所生活から抜け出すことができない。そういう人たちは今後、市はどう対処してくれるのだろうか・・・熊本市は、市営住宅の無償提供を発表したが、抽選となり、その数は250戸に対し、15.8倍にもなる、3949世帯からの申し込みがあった。当然、抽選に外れた世帯も多く、この先も避難所で生活なのか・・・と声を落としている。


南阿蘇村の山が崩れて橋が土砂で埋まった現場でも行方不明だった2人の内、一人は発見されたが、もう1人は見つかっていない。雨も降り続き、2次災害の危険もあるということで捜索は中止。ヘリで空からの捜索に変更になったが、5月9日現在、報道すらされなくなった。新聞もニュースも日に日に、報道が減ってきており、北朝鮮やらアメリカ大統領選挙、それにフィリピンの選挙などに様変わりしている。



そんなとき、避難所へある訪問者が現れた。


(Is it AI? What is that? That black?  アイ? あれ何?あの黒いの・・・)


(kumamon! It is a character of Kumamoto. くまモンよ!熊本県のキャラクターなの。)


(Is it kumamon? クマモン?)


震災後、活動を控えていた、熊本県庁の営業部長こと(くまモン)が避難所に来てくれた。子供たちは大喜びで、年配の方や、医療チームの人たちも心が和んだ。ティファニーも大はしゃぎで、Iphone SEを片手に(くまもん)と一緒の画像を収めている。涙を流しながら(くまモン)と抱き合うおばあちゃんなどを見ると私たちも込み上げてくるものがある。



そんな避難所の人たちともあと数日でお別れだ。 6月に入れば梅雨、それが終われば夏が来る。8月のお盆も迎え、9月になれば秋・・・秋分の日を過ぎればお彼岸・・それが終われば12月の暮れ・・冬の時期になる。 このころになれば今よりかは良くなってるだろうが、でも、この熊本大震災に見舞われた人たちの心の傷は一生、消えることはない。私も、わずか一ヶ月弱の滞在だったけど、結局は何も出来なかったのと一緒だ。 やり残したことはたくさんある。でも、私もティファニーも秋田に戻り、また大学生活を送り、授業を受けなければならない。 人間って本当に勝手なもので他人のことを思いやることはいいが、結局は自分優先になってしまう。 これは、自分自身が(極限状態)になったとき、本当の(自分の姿)というものが出てくるのだろう。情けないがこれが人間というものなのかもしれない。



この5月の連休までに、死者49人、行方不明者1人、負傷者1547人、避難者15000人余りに上がっている。



ドタン!・・・・


何か、大きな音がした?


ティファニーと振り向くと、一人、二人としゃがみ込んでいる・・


(Is it AI? How would you do it? ちょっと、アイ? どうしたんだろう?)


(What's wrong? ? Is it these people? ? ?  どうしたの?この人たち???)


その時、医療チームの医師が、一人に駆け寄った。


(Tsukioka, san! Tiffany are early, and wear a mask! !月岡さん、ティファニー、早くマスクをして!!)



私とティファニーはウェストポーチからマスクを出してすぐに口に当てた。


(A chief, how did you have it? チーフ、どうしたんですか?)


(It may be Tiffany, new influenza. Contact Fukuoka immediately! ティファニー、新型インフルエンザかもしれない。すぐに福岡に連絡して。)


倒れた人たちは、凄い高熱で息がとても苦しそうにしている。また、嘔吐も激しくそれが尋常ではない。


避難所に感染したら大変なことになる。看護師も保健師もすぐに、他の人たちを隔離した。今、倒れてるのは5人。いったいどこで、インフルエンザになんて感染したのか・・・


福岡の高度救命救急医療センターからの連絡で熊本市内にある、総合病院から救急車が到着した。一台に一人しか患者を搬送できないため、5回、往復することとなり私も医師たちと乗車して総合病院に向かった。車内では緊急治療を医師と看護師、救急隊員が懸命にしている。インフルエンザなんて軽く考えていたけど、こんな新型インフルエンザなんてマジであるなんて思っても見なかった。


総合病院に着くと、すぐにICU(集中治療室)へと搬送された。私は入れないため、医師だけが処置をすることになった。 ティファニーもあとの救急車で到着して5回の往復でICUは5人の感染者で満室御礼となり他の緊急患者を受け入れらなくなってしまった。幸いにもこの日は、この5人だけで他の搬送患者はいなかった。



新型インフルエンザ・・・・


(人から人へと感染しうる能力をもった新しいウィルスを病原体とするインフルエンザ。当確感染症に対する免疫を獲得していないことから急速な蔓延により生命及び健康に重大な影響を与える恐れのあると認められているもの。)



ICUから出てくるまではまだ、時間がかかりそうだ。看護師、保健師、それにティファニーと私は少し、待合室で休むことにした。


(月岡さんとティファニーとも、あと少しでお別れね。わずかな期間だったけど、ずいぶん長く仕事をした仲間みたいで、別れるのがちょっと辛いな・・・)


看護師がぽつりと語った・・・


(2人と一緒に過ごしてると、可愛い妹みたいで、私もさびしくなるな・・・)


保健師もつぶやいた・・・



(私、ずっとここにいたい・・でも、大学に戻らなければいけない。だからたくさん勉強して私も先生たちみたいな仕事をしたい!)


ティファニーも言葉を返した・・・


私はティファニーを見てると、どうしても(瞳)と重ねてしまう。(瞳)も母親を見て(医師になり、救命救急でお母さんのようになりたい!)って言っていた。


(アイ? 私・・・医師になりたい。たくさん勉強して医師になりたい!)


驚きだ・・・まさか、ティファニーも瞳と同じことを言うなんて・・・


ICUから医師が出てきて、5人は幸いにも新型インフルエンザではなく、五類感染症、インフルエンザ・・・通常のインフルエンザと判明した。でも、5人は隔離されて入院し一週間ほどで退院できる軽い症状でひとまず安心した。



この熊本大地震では、住宅だけでなく、重要文化財なども数多く被害を受けている。熊本城を始め、神社や歴史保存物なども含めると全体で361にも及ぶ。


政府は、この連休明けに熊本大地震を、(非常災害)という、大規模災害復興法に基づく法令を閣議決定した。3.11 東日本大震災後に施行されたこの法が適用されたのはこの熊本県が初めてとなる。










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