私も・・・
ゴールデンウィークも近くなり、私の渡米も煮詰まってきた。
(月岡さん、(カンファレンス 2 )まで来てくれるかしら?)
留学担当の講師が私を会議室へと招いた。
(月岡さんの出発は・・・)
私の出発の日は5月2日。ちょうど、海外旅行などにいく人と、もろにぶつかる。私もティファニーと同じ、秋田空港から羽田で乗り継ぎ、アメリカへと向かうこととなったが、出来れば、渡米する前に祖母には会っておきたい。その旨を講師に伝えてみた。
(そっか。そういうことなら、蒲田から羽田で直接、乗ったほうがいいわね。まだちょっと、時間があるし、じゃ、そのように手配するわ。)
良かった・・・話してみるもんだ。
これで、私は、4月の末に、祖母の家に行き、2日の出発に合わせることが出来た。早速、準備に取り掛かった。
なんだかんだとコンパクトにまとめたつもりでも、大型スーツケース2個、それに大きなバック1個とけっこうなお荷物になってしまった。それでも足りないものは現地で購入なりすることにした。アメリカなら、日本で売ってるものも結構、手に入ると聞いているし・・・
準備も整ったとこで、絵美理さんの会社に向かった。日本を離れる前にやはり会っておきたかった。
(愛ちゃん、いよいよね。向こうにいっても連絡はしてよ。ちょうどお昼だからみんなと食べていきなさいよ。)
仕出し弁当をご馳走なり、作業員のお兄さんたちとお昼を一緒にすることになった。
(海外なんてすごいな。アメリカだろ? )
(でも、中東の方面じゃなくて良かったよな。)
(アメリカって、日本とは違い、危険なことも多いからな。気をつけろ。)
お兄さんたちと色々、話ながらお昼の時間は過ぎていく・・・
(そうだ。みんなで撮ろうよ。お、集まれ。)
お兄さんたちの音頭で、私と絵美理さんを真ん中にお兄さんたちを囲んでパチリ。
(愛ちゃん、この画像、あとで送るから。)
(ありがとうございます。大切にします。)
(私も、メールなり連絡するから愛ちゃんもお願いね。一年って長そうだけどすぐよ。無事に帰ってくるの待ってるから。)
(よーし! みんなで5本〆でいくか!)
お兄さんがそう言うと、
(よぉーー)
パパパン!!!パパパン!!!パパパンパン!!!
(ほら、もう一丁!!)
手締めをしてくれた。
(愛ちゃん、元気でな。)
(ありがとうございました。行ってきます。)
もう一人、会っておきたい人がいる。 片瀬さんだ。 絵美理さんが車で送ってくれるようで秋田駅まで一緒にいくことになった。
絵美理さんと二人きりになったとこで、どうしても聞きたかったことがあった。それは、食堂のお姉さんのことだ。判決後はどうしたのだろうか・・・
(娘さんは、もう、だいぶ気持ちも落ち着き、この4月から中学にも行ってる。ただお姉さんは、メンタルな部分でまだ、ダメージがあって病院でリハビリしてるわよ。でも、娘さんはもう私の会社の寮に住んでるし、お姉さんも連休あとくらいには戻れるようにはなってる。)
それを聞いて安心した。
(でも、本当に絵美理さんがいて良かったです。お姉さんも安心すると思います。)
(大丈夫よ。仕事も生活も用意してあるから。)
私もこれで安心して留学に行ける。
秋田駅に着き、絵美理さんともこれで、一年間、会えなくなる。
(アメリカに行って、しっかりと勉強して、いい女になって帰っておいで。笑。)
絵美理さんらしく、最後は笑顔で(さよなら)だ。)
(はい・・あり・・・が・・とう・・・)
(何、泣いてるの。待ってるから。ね。)
私は本当に駄目な女だ。絵美理さんは、私をしっかりと抱きしめてくれ車に乗り込んだ。
片瀬さんも今の時間は、作業中かもしれないが駅長室にいき面会に来たことを伝え控え室に通してもらった。
控え室には誰もおらず、まだ作業中のようだ。 こうして控え室に入ると、とても懐かしく感じる。ティファニーとセギョンとわずかな日を仕事しただけなのに、不思議と居心地がいい。
片瀬さんたちも作業を終え、戻ってきた。
(愛ちゃんも、アメリカにいっちゃうのよね・・・もう近いの?)
(はい・・5月2日に決まりました。)
(一年っていうけど、セギョンもティファニーもいないし、それに愛ちゃんまでなんて、寂しくなっちゃうじゃない。)
(これ、セギョンの見送りときに撮った写真、愛ちゃんにも渡そうって思って。)
画像を収めてくれた、お姉さんが渡してくれた。
(ちょっと、一緒に休んで行きなさいよ。)
清掃スタッフの人たちとお茶の時間を過ごした。
(みんな、愛ちゃんが帰ってくるの待ってるからな。)
(おみやげ、お願いね。笑。)
(あまり、食べ過ぎるなよ。アメリカの食事はカロリーが高いから。笑。)
清掃スタッフの人たちともお別れだ。
(お別れね・・・・帰ってくるの・・待ってるから。)
第二の母でもある、片瀬さんから最後の言葉・・・ぎゅっと抱きしめてくれた。
私は絶対に泣かない・・・・と決めていたが、こういうのはどうしてもダメだ。
(ほら、ちゃんと拭いて・・・)
片瀬さんのハンカチが涙でビッショリ。
私は頭を下げて、控え室を出た。
大学の寮に戻り、スーツケースとバッグは宅配便で祖母の家に送り、私はウェストバッグ一つで帰ることにした。事務局の人と留学担当の講師にも最後の挨拶だ。
(月岡さん、何かあったら、いつでも大学に連絡ちょうだいね。)
(大学も留学先には、ちゃんとサポートするシステムが完備してあるから安心していってらっしゃい。)
大学の講義は、4月28日まで受講し、29日には、蒲田に帰省して2日に羽田空港にと日程を決めた。大学側もこれを受理してくれ、後は渡米を待つだけとなった。祖母にも連絡をして28日の金曜日、夕方の新幹線で帰ることを伝えた。
セギョンもティファニーも既に現地に着いてる。共に留学先の学生寮で過ごすことになるが、新しい人たちと会い、どんな思いでいるのだろう。そんな私も、あと一週間ほどで日本を離れる。自分の新天地ではどのようなアメリカ人がいるのだろうか? 不安と期待がいっぱいだ。




