帰省 3
(私、大学卒業したら韓国に戻り、絶対に警察官になるの。)
セギョンは去年の花火大会でもそう言っていた。
(刑事を目指して、悪いやつらを一人残らず捕まえてやるんだ。)
(でも、セギョンが刑事なんて、かっこいい・・・)
(ほんと、どんな感じになるんだろうね?韓国ドラマに出てくるような女刑事?)
竹内さんもティファニーもセギョンに興味津々。
竹内さんも、
(今年は、色々な資格に挑戦するんだ。)
(どんな資格を?)
私が問うと、
(私の大学は工業大学じゃない?周りの男連中も電気やら何やらと資格を取り始めている人が多いの。だから私も、勉強して資格を取得するんだ。まず、電気工事士っていうのを受けるんだ。)
竹内さんも、将来は、医療ロボットの開発に携わりたいと言っていた。そういう仕事をするには、電気関係の資格も必需となるのだろう。
(自分で開発してそれが形になる・・・そんな仕事をしてみたいんだ。)
2人とも大きな夢があってうらやましい。
ティファニーは、何かしたいことはあるのか?
(今のところ、私は特にこれ!っていうものがないかな・・・でも、留学して環境も違えば、またそこで考えることもあるだろうし・・・アイはどうなの?)
(それが・・・わたしもティファニーと同じでして・・・笑。)
(でも、そうこうしてるうちに大学生活もあっという間に終わってしまうよ。月岡さんもティファニーも、こんなことしてみたい・・・なんてことないの?)
竹内さんにそうは言われても・・・・
(でも、留学して帰国してきたら何か変化があると思うし、またそのときに発見もあるはずよ。)
セギョンもそう言ってくれるとありがたい。
心地よい夜風が、やさしく頬に触れてくる・・・女4人、並んで座り、話してると時間も経つのが早い。
私たちも寝床に入り、就寝した。
布団の中で考えた。セギョンが刑事になり、竹内さんが医療ロボットの開発者になる・・・そのとき、私はどんな生き方をしているのだろう? ただ、人並みに働いてそこそこお給料をもらって・・・2人の話を聞いていると、何だか、取り残されていきそうな気がしてならない。ティファニーだってもしかしたら、2人のように何かなってるかもしれないし。
まだ、大学生一年目が終わっただけじゃないか・・そう言われればそうだが、でも、そんな気持ちでいたら、竹内さんの言うとおり、あっという間に大学生活は終わってしまうだろう。 こう思うと、私が高校生のときを思い出す。
あの時も、今と同じだった。何をしていいのかわからず、担任にも相談したりした。しかし結果、大学進学という一つの夢を持ち、それを叶えた。でも・・・わからない・・・どうしていいか本当にわからない。
翌朝・・・・
私たちは、祖母の家で2泊を過ごした。これからまた秋田に戻り、大学2年生という新しい一年が始まる。
祖母が作ってくれた、朝食も済ませ、羽田空港にいく時間になった。竹内さんとは京急蒲田駅まで一緒に行き、そこで別れることにした。
(みんな、また泊まりにおいで。いろいろ大変だろうけど、しっかりしなきゃ駄目だよ。)
祖母ともしばらく会えなくなる。
(ありがとうございました。おでん、美味しかったです。)
(また、みんなで来ます。ありがとうございました。)
(おばあちゃん、またね。ありがとう。)
祖母の家を後にし、羽田空港へと向かった。
(じゃ、月岡さんも、セギョンも、ティファニーも、また会いましょう。)
京急蒲田駅で、竹内さんも、一人一人、抱き合い、電車に乗り込んだ。
羽田空港に着き、私たちも、JAL、午前11時の便に搭乗し、秋田へと飛び立った。




