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食事会

秋田も2月にもなると雪が多く降る。しかし、東京に降る雪に比べると、サラッとしていて体に残らないので傘を差さなくてもいいくらいだ。周りを見ていても、ほとんど傘を差してる人がいない。 こんな寒い冬の時期はやはり(おでん)など鍋物を食べたくなる。


絵美理さんから、会社に来ないかという連絡が入った。


(職場の人たちと、会社ですき焼きでもしようかってことになって。愛ちゃん、ティファニーとセギョンも連れて来ない?)


(え?ほんとですか? いやぁ、すき焼きなんて・・・こんな寒いときはいいですよね。)



(じゃ、キマリだね。みんなにも伝えておくから。)



絵美理さんから、ご飯の誘いなんて嬉しいではないか。早速、2人にも伝えた。 当然、食べ物ともなると2人とも断る理由もなく、遠慮は無しだ。大学の講義終了後、絵美理さんの会社に向かうことにした。


絵美理さんの会社は、早朝、いや深夜といったほうがいいのか、午前2時に出勤。それから市内のビル、店舗、学校などパッカー車で、不燃ごみや可燃ごみなどを回収する。午前中には大方、目処もつくが昼すぎに仕事が終わるとなると、やはり12時間労働は強いられている。しかし、その分、給料も良く、家庭もある人もいるので活気があり、まさに男の職場という感じだ。 絵美理さんも、出動することもあり、女社長として会社を引っ張っている。



絵美理さんに会ったら、お姉さんのことを話そうかと思っていた。そんなときに連絡が来るとは単なる偶然とは思えないような気がする。 大学の講義も終わり、私たち3人は絵美理さんの会社へ向かった。


会社はプレハブの2階。作業車も敷地内に止まっている。ここで、絵美理さんも男連中をまとめているのかと思うと、なんだか逞しく思う。


(あら、いらっしゃい。みんなも揃ってるから。さっ、中に入って。)


(こんにちわ。)


中に入ると、秋田駅まで送ってくれたお兄さんたちもいた。久しぶりに会うとなんだか懐かしく感じる。


(お、来たな。みんな待ってたぞ。笑。)


(おい、おい、このおなご(女子)たち、めんこいじゃ。)


(野郎はいるのか? 笑。)



なんだか、恥ずかしい・・・・



(さ、全員揃ったところで乾杯と行きますか?みんなグラスにビール入ってる?)


私たちはまだ飲酒はできないので、ジュースをお兄さんたちが注いでくれた。


(じゃ、乾杯!おつかれさん!!)



絵美理さんの音頭で食事会が始まった。


男たちが集まると、食べるのもそうだが呑むのもすごい。ここにいる社員さんだけで14,5人はいるのか・・肉とねぎ、白菜・・・あれよあれよという間になくなっていく・・

私たちも負けじと食べまくった。


(すき焼きって美味しいね。韓国じゃこんなのないよ。)


(この肉は最高!!白菜も美味しい。ライスもらっていい?)


ティファニーの食べっぷりは男に勝る。


こうやって大勢で食べる食事って、楽しい。それにとても美味しくなる。いゃ、賑やかだ。そんな食事の席で、お姉さんのことを話すのもどうかと思ったが、どうしても絵美理さんに話したくなってしまった。 



(お姉さんのこと・・・新聞にも出てたな。小さい記事だけどね。ニュースでもやってた。でも、娘さん、助かったじゃない?)


事件の詳細を私は伝えた。


(え?ティファニーと2人で自宅へ行ったんだ? ニュースっていっても少しの時間だったから。全然、知らなかった。)



(まだ、これから裁判なんかもひかえてるんですけど、娘さんとの今後はどうなるのか・・お姉さんの住まいも、もうダメだし・・・仕事もどうしたらいいのか、心配なんです。)



(うちで働いたらどうかしら? 女は私一人だし、もう一人、いてもいいと思うの。女同士なら何かと助かることもあるし。 )


そばで聞いてたお兄さんも、


(そうしたほうがいいんじゃないか? 寮も一部屋、開いてたよな?)



(社員たちの独身寮としてワンルームを借り上げてるのよ。2人だとちょっと狭いけど、住み込みって感じでうちで働いてみないかしら?)



(え?お姉さんと娘さん、一緒にってことですか?)



(そうよ。だって親子じゃない。)


(でも、あんなことになって・・・娘さんがお姉さんをどう思ってるか・・・)


(まだ、裁判が始まってないしこれからだけど、私、思うの。娘さんもお姉さんのこと決して恨んだりしていないわよ。娘さんなりに家庭がどんな状態だったのか、分かってたはず。それがこんな結果になってしまい一番、苦しんでるのはお姉さん自身よ。裁判で明らかになっていくはずだから、私たちは見守るしかない。だけど、娘さんはお姉さんときっと分かり合える。そう信じたい・・いや、信じなきゃ。)


(月岡さん、私もそう思う。韓国でも日本と同じ、貧困が問題視されてるの。その中で、心中を図り、運良く助かったのもあるんだけど、そのほとんどが悲惨な結果なの。だけど今回のこの事件は、ティファニーと一緒に救ったんじゃない? これも目に見えない何かの助けよ。だから絶対に親子の関係は大丈夫よ。)


セギョンの言う通りかもしれない。ティファニーも、


(お姉さんも娘さんも、きっと元に戻る。私、分かるもん。)



(まだ、結果が出てないけど、今後の経過を見て私の方で生活面はバックアップするから。)



お姉さんと娘さんの件は、絵美理さんが受けることにしてくれた。 あとは裁判の結果を待つだけだ。お姉さんとの接見は今は出来ないが、どのような判決が出るにせよ、私たちはお姉さんと娘さんを待っている。


会社の人たちとの食事会も終わり、後片付けをみんなで始めた。


(お姉ちゃんたち、楽しかったろう? 今度は焼肉を考えているから、またおいで。笑。)


(ありがとうございます。今度は焼肉ですか? 絶対に来ます。笑。)


これが(シゲル)さんとの出会いだった。









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