年越しそば
2016年も、大晦日を迎え避難所でも年末年始の予定が被災者の方たちに伝えられ、被災した家族の子供や兄弟たちも地方から続々、避難所に到着し着替えや当面の生活費などを渡していた。 年明けからの住まいをすぐにでも・・・と役所や不動産会社などに出向く人も多く、何かと忙しい大晦日になった。
自衛隊や建設会社などの協力もあり、瓦礫や燃え殻の撤去作業も迅速に進んでおり、また国も動き、被災者の方たちに、災害支援金として一時金も支給されることになり、年明け早々にも、復興に向けて大きく進むことになりそうだ。
そんな中、避難所でも、(年越しそば)が振舞われることになった。近隣のお店や住民たちの協力もあって、お蕎麦や、てんぷらなど運ばれて来た。 私たちもお母さんたちも率先して準備に取り掛かり、配給のスタンバイとなった。
温かいお蕎麦の上に、サクッとしたかき揚げがのって、おつゆの香りがとても食欲をそそる。
(お姉ちゃんたち、どこから来たの?)
(秋田県から来ました。)
(何か、ウルトラマンみたいな服だね。)
(ハハハ・・そうですか?笑。)
一人一人にお蕎麦を渡しながら、被災者の人も語りかけてくる。 大晦日に、年越しそばが食べれるって本当にありがたい。そんな気持ちが受けてとれる。
大方、お蕎麦も行き渡り、私たちも頂くことになった。
(日本では、年末の大晦日に(年越しそば)を食べるの。セギョンやティファニーの国でも似たようなのあるでしょ?)
(韓国は、旧暦だから年末に何か食べるってことはないかな・・・カウントダウンで花火などはあるけど。)
(私の国では、日本が冬なら季節が逆になり夏になるの。だから12月のクリスマスの時期は真夏よ。笑。)
韓国もニュージーランドも日本とは習慣が異なるのか・・・・
(私、初めて(お蕎麦)なんて食べたけど、すごく美味しい。この揚げたのが特に・・)
ティファニーも初めての(お蕎麦)にご満悦。
(韓国でも冷麺っていうのはあるけど、こういうのはないよ。温かくて美味しい。このスープも。)
セギョンも、年越しそばに喜んでいる。
私も(年越しそば)を食べながら、ふと、益城町の人たちを思い出した。 あれから10ヶ月ほど経ったが、町の復興はどれほど進んだのだろう・・・避難所の人たちも、仮設住宅や賃貸住宅に住まいも移しているはず。元気に過ごしているのだろうか・・・年越しそばを食べてお正月の支度は出来ているんだろうか・・・
食べ終えた容器など、ゴミの回収もし後片付けを始めた。お母さんたちも手際よく片付け、掃除などもして、(年越しそば)は終わった。
(お姉ちゃんたち、本当によく手伝ってくれてありがとう。まだ、お名前、聞いてなかったわね。)
セギョン、ティファニー、そして私と、紹介した。 臨時に設置されているTVを見ると年末の各地が出ていた。 東京の上野、御徒町のアメヤ横丁の映像。人がこれでもかってくらいギュウギュウになっていて大晦日の賑やかさが映し出されている。それを見てる避難所の人たちは、どことなく寂しさが見えるのは私だけだろうか・・・
夜になれば、紅白歌合戦やカウントダウンライブ、ゆく年くる年など、一年の締めくくりが始まる。 私たちもあと数日で秋田に戻らなければならない。残されたわずかな時間、精一杯、尽くつもりだ。




