表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/50

六郷 花火大会

8月15日の終戦記念日は、毎年、六郷土手で花火大会がある。大田区だけでなく川崎からも見物客が大勢来て、六郷土手駅は大変なことになる。そんな私たちも早めに行くことにして昼過ぎには、準備にとりかかった。


セギョンも竹内さんも、最低限の持ち物にして身軽にしている。あとは、浴衣を着て花火大会が始まる午後7時を待つだけだ。


(なんだか、ワクワク、ドキドキだよね。)


セギョンも日本の花火大会は初めてのようで落ち着きがない。


(私も金沢では見たことあるけど東京では初めて。関東は花火大会が多いよね。)


竹内さんも楽しみのようだ。



午後4時・・・そろそろ出発とするか・・


まだ始まるまでは時間があるが、早めに行かないと駅から土手まで人が並び、見れなくなってしまう。座ってみれる場所は今の時間ではまずないし、せめて目の前で見たい。


(愛、スリとか多いから気を付けるんだよ。)


祖母の見送りで私たちは京急蒲田駅へと向かった。 駅へ向かう途中でも同じ浴衣姿の人を見かける。これから六郷土手に向かうのだろう。この時期の夕方はまだ明るい。冬だともう暗くなり一日も早く感じるけど、夏ほど一日が長く感じる時期はない。 だから私は夏というのが嫌いなのだ。


京急蒲田駅から各駅に乗車。 やはり車内も浴衣姿の人が多い。早めに行かないと・・・


六郷土手駅を降りると想像通り、凄い人の波。 本当に見ることが出来るか心配になってきた。


するとセギョンが


(月岡さん、この土手の反対側からだと人も少ないんじゃないかな?これで見ると川を挟んで反対側、川崎っていうの?そっちからだといいんじゃない?)


Iphone SEを片手に意見を述べていらっしゃる・・・・そうか!そういう手もあり!だ。ここはセギョンの作戦を受け入れることとし私たちは一駅先の京急川崎駅に向かうこととした。読みは正解で駅から土手に向かう人はいるにはいるが、六郷土手駅ほどではない。 テクテクと歩き土手に到着した。ここからだと座って見れるし、それに川を挟んで目の前は花火大会の会場が見える。まさにベストポジションだ。


(セギョンさん、スゴイ。笑。いい場所だね。)


(よかったね。ここならゆっくりと見れるし。)


私も竹内さんもご満悦。



午後7時・・・・大田区長の挨拶とともに、一番花火が上がった。



ドン・・ドン・・・ドン・・・



凄い振動と音! いいぞ!いいぞ! これぞ、生の花火ってもんだ。 セギョンも竹内さんも私も超興奮!


バチバチバチ・・・ドドン・・ドーン!!!


凄い!スゴイ!すごい! もっと上がれー!!


きらびやかな花火と打ちあがる音、それに体に伝わる振動・・・・日本って最高!!!



(ひゃぁーーーすごい! もう最高!! 日本っていい!!)


セギョンの興奮もMAXになっている。


私も竹内さんと抱き合いながら、飛び上がる。


周りの人たちも大騒ぎで、一緒に連れて来ている犬も大喜びのようでワンワン叫んでる。



約40分ほどの時間だったけど、晴れて夜空もキレイで花火大会としては100点満点だ。まだ興奮も冷め切らない私たちは土手に座ったままで夜空を眺めている。


(私、大学卒業して韓国に帰ったら、警察官になるんだ・・・)


(え?セギョンさん、警察官になりたいの?)


(うん。刑事になり、悪い奴らを片っ端から捕まえてやるんだ。)


夜空を見ながらセギョンは語る・・・


(女刑事になって韓国だけでなく、海外でも活躍できる刑事を目指したいんだ。国際犯罪にも立ち向かえるような・・・)


(セギョンさん、目標があるってことはとてもいいことだと思うよ。私も、なんで工業大学に行ったかというと、ロボットが手術をしているのを見て私もこういうものを作ってみたい・・と思ったからなの。今までにない、もっと精密にさらに細かく手術できるような女性初の医療ロボットを開発したいと思ったんだ。)


竹内さんもセギョンもお互い、熱く語っている・・・それに加えて私は何も目標がない。花火の影響もあるのか語る気力も失っている。


(月岡さんも何か、夢とか目標とかあるんでしょ?)


セギョンに語られても、すぐには答えがでない。


(う・・うん・・まだ今のところは・・・)


(ダメだよ、それじゃ。何となく大学も終わっちゃうよ。)


(そうだよ。今からでも何か自分がやりたいことを見つけるのよ。)


竹内さんとセギョンと私の三者面談になっている。



(ま、まぁ、取りあえず帰ってお風呂にでも入ろうよ。ほこりも凄いし、フフフ・・)


なんとか場を誤魔化し祖母の家へと帰宅を急いだ。



(まぁ、どうだった? 花火は・・・ほら、すぐに湯につかりな。浴衣は洗濯しておくから。人混みとホコリなんかで体も汚れてるだろう? 夕食も準備してあるから。)


(ありがとうございます。とても楽しかったです。)


浴衣を脱ぎ、お風呂に直行。 


お風呂から上がり、夕食を済ませ、少し庭先に座った。セギョンも竹内さんも興奮と疲れからかグッスリと寝てしまった。


さっきのセギョンと竹内さんの話ではないが、私も何か自分の本当にやりたいことを見つけないと大学に進学した意味がない。ましてや、玄さんたちにも義理がある。恩を返したいのだ。でも、私はいったい何をしたいのか?なりたいのか? 全く考えが出ない。これでは高校卒業前の自分と変わらない。担任とも夏休みに話したときからもう一年が経っている。 私はこのままでいいのか・・・いや、いいわけない。何か自分にあるはずだ。その何かが分からない。 


庭先から見上げる夜空には、キレイは星が輝いている・・・


私もセギョンや竹内さんのように輝きたい・・・輝かなければダメなのだ。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ