瞳とは・・・
しかし、いくらダイヤルしても、瞳は一向にでてくれない。本当にどうしたんだろう。
気になるので、ここから近いし直接、瞳のマンションへといくことにした。管理人のおじさんもいるだろうしその後のことも知りたい。
夏はマジで堪える。私は冬生まれのせいか、夏だけは苦手。なぜかというと汗をビッショリとかいてしまうし、また着替えも頻繁にしなければ気持ち悪くなってしまう。それに夜は寝苦しいし、蚊とかゴキなんかも出てくるし、私にとっては心霊写真よりも恐怖なのだ。
久しぶりに来た、瞳のマンションも、何処となく懐かしく感じる。あの事件から約一年か・・・
管理人室におじさんはいるのか? コンコン・・
(はい?何でしょう?)
あれ?おじさんではない。ご年配のおばさんがいる・・・夏休みなのか?
(あ、すいません。おじさんは休みなのですか?)
(あの、先月、辞めましたよ。)
(え? ここ、辞めたんですか?)
(ええ・・たしか、定年で退職したと思うんですけど。)
そうなのか・・久しぶりに会えて話でも出来ると思ったのだけど。
(あの、こちらに真行寺さんってお部屋があるんですけど、ちょっと行きたいのですが。)
(真行寺さん?ちょっと待ってね。今、お部屋調べるから。えっと・・・あ、あったわ。あ、でも、退去してるようね。)
(え?退去?引っ越してるんですか?)
(そうみたいね。先月だから、おじさんがまだいた時かしら?)
まさか、瞳が引っ越していたなんて。何で私には連絡の一つもないのだろう? 私を避けてるのか?それとも何か意味ありなのか? こうなったら、あの女の刑事さんに聞くしかない。
すぐに連絡をした。
(あれ?月岡さん?どうしたの?)
(今、夏休みで蒲田に帰省してるんです。それで真行寺さんに会いに行こうといったら、引越していないんです。)
(あ、そっか。まだ、話してなかったわね。)
刑事さんによると、瞳は、覚せい剤や危険ドラックなど薬物犯罪で服役した人たちを更生させる施設に入居しているようだ。女子刑務所を出たといってもまだ仮釈放の身で完全に刑期を終えたわけではない。その日がくるまでこの更生施設に入って完全に薬物を断ち切る気持ちでいるらしい。
(でも、家まで引っ越すなんて・・今後はどこに住むんですか?)
(まだ、はっきりとは聞いてないのだけど、施設を出たらお父さんのところに身を寄せるようなことをいってたかな。)
たしか、瞳のお父さんは海外で仕事をしていて、お母さんと同じ医師だったっけ。でもお母さんはどうしてるのだろう。
(真行寺さんのお母さんは、救命救急の医師でしょ?家にも帰れないことが多いし、それに真行寺さんを一人にしていたら、やはり心配なんじゃないかしら?だから、病院の近くに自分だけの部屋を借りて、マンションは引き払ったようね。だから、施設を出たら、お父さんに預け、そこから再出発・・っていうのかな・・たぶん。)
瞳も自分なりに思うところがあるのだろう。でも、性格がストイックな分、上手く行くはずだ。ここは、そっとしておいたほうがお互いのためでもあるのかもしれない。
(刑事さん、少し、真行寺さんとも距離を置いてみます。恐らく、真行寺さんから私にへと何かくるはずですから。)
(そうね。その方がいいかもね。また、何かあったら連絡しなさいよ。毎日、暑いから体には気をつけるのよ。)
(はい。ありがとうございました。)
瞳との関係も、一旦、休止というとこか。
竹内さんも京急蒲田駅に到着、キネマ通りまで来ているとLINEに入った。
瞳のマンションからキネマ通りに入ったとこで竹内さんとバッタリ。
(月岡さん、しばらくね。元気だった?)
(本当、何だか懐かしいね。笑)
(もう一人、同級生が来てるの。韓国から留学してるだけどね。)
(へぇ、韓国の子がいるんだ。)
(うちの大学は、結構、外国からの留学生が多いの。授業も英会話が公用語になってるし。)
(そうなんだ・・・私の大学は、男連中ばかりだから・・笑)
(いいじゃん!オトコ連中なんてさ!笑)
(良くないよ。汗臭いし。笑)
そんな話をしながら祖母の家にと到着。
(こんにちは。初めまして。竹内と申します。)
(あらあら、暑かったろう?さ、上がんなさい。 ちょっと三人とも、お風呂に入って、それから夕飯にしようか。)
祖母の勧めもあり、竹内さんにも浴衣を用意してくれ、着ていたものは洗濯機に入った。
(こんにちは。セギョンっていいます。よろしくね。)
(こちらこそ。急に来てしまって。竹内といいます。)
セギョンも竹内さんも気が合うようで安心だ。女3人、バスタイム!
お風呂上りに浴衣を着て、涼しい部屋で、夕ご飯なんて、もう言葉がでない。竹内さんの浴衣は、薄いピンクと濃いピンクの花柄で可愛くなっている。
(この浴衣、すごく着心地がいい。それに可愛い。)
竹内さんもお気に入りのようで良かった。さぁ、セギョンとも一緒にみんなでディナーといこうじゃないか!
祖母が作ってくれた夕食は、ちらし寿司と、マグロやえびが入った太巻き、それにお味噌汁だ。それに、白菜の漬物もある。私もセギョンも竹内さんも、すでに戦闘体制に入っている。
(さ、みんなで食べようか。ご飯は、賑やかに食べるのが一番、美味しいからね。)
(いただきまーす!)
ちらし寿司は、うなぎや卵焼き、マグロ、いくら・・・色々、入っている。太巻きもマグロ、海老、卵焼き、アナゴ、かんぴょう・・・ボリュームがあって食べ応えがある。
祖母も箸が進むようでよく食べている。
(美味しいね。)
(マグロが美味しい!)
(お味噌汁も最高だよ!)
私たちもご満悦だ。みんなで食べる夕食は本当に美味しい。こんなに楽しく食べるのも私の記憶からして今までない。まして、親戚でも家族でもない、大学の同級生となんて初めてのことだ。祖母もしばらくぶりの賑やかさに喜んでいる。
食事も終わり、みんなでお皿やお椀など洗い、片付けをした。
(そうだ。明日は六郷土手で花火大会があるよ。行ってきたらどうだい?)
毎年8月15日の終戦記念日には、六郷土手で花火大会がある。私も小さいときに行った記憶があるがはっきりと覚えていない。
(おばあちゃんも一緒に行く?)
(いやいや、わたしはテレビで見れるからいいよ。それに足と腰が痛くなるからね。笑)
大田区専門のチャンネルで、この花火大会は生中継される。それに花火の打ち上げの音が大きくここにも聞こえるのだ。
私たち3人は、明日の花火大会に行くことを決めた。