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シューシャイン 1

セギョンと学生寮に戻り、一階のラウンジで一息ついた。


(月岡さん、ありがとう、本当に。こんなに遅い時間になってゴメン)


(いいのよ。こんなときはお互いさまよ。でも、授業は居眠りだね。笑)


(フフフ、本当だね。)



部屋に戻り、寝床に着く前に、どうしてもこの安全靴だけはキレイにしたい。磨く寸前にお声がかかってしまったから手つかずだった。 いっちょやるか! 


玄さんなら10分ほどで完璧にするし、私だって20分もあれば十分、仕上がるだろう。よし!スタート!


濡れ雑巾で拭きあげ、油性クリームで栄養を与える。踵とつま先に丸缶ワックスをすり込み、少し時間をおく。片足でここまで約10分だ。もう片方で10分、げっ、20分もかかってるか。でも安全靴は面積が広いからしょうがない。最後にすり込んだワックスに水を米粒くらいたらし、磨き上げる。


上手くいくか・・・?


するとどんどんツヤが出てきて、鏡みたいに光ってきた。 よし、もう少しだ。 何度も繰り返しワックス、水と磨いていくと玄さんが磨き上げたように、ピカピカになった。なんだかんだで約一時間もかかってしまった。 しかし、たかが安全靴、されど安全靴だ。あんなに汚かった、安全靴がこんなにもきれいに蘇った。 ついに私も(鏡面磨き)が出来るようになったのだ。 キャッキャッ・・・嬉しい。 


玄さんにも見せてあげたいな・・・


時刻はすでに深夜2時を周っていた。ヤバイ! 寝なきゃ。


布団の中に入り私は爆睡した。


翌朝、なぜか、6時には目覚めてしまい、不思議と体調もいい。お腹もすいて朝食が食べたくてたまらない。セギョンはまだ寝てるようだし、ティファニーも夢の中だろう。あ、そうだ、まだ昨日のお弁当を食べてなかった。冷蔵庫に入れておいたお弁当をだし、電子レンジで温めた。どんなお弁当なんだろう。

ハンバーグとエビフライ、卵焼きなど豪華だ。食堂の人が作ってくれたお弁当は本当に美味しい。朝からこんな贅沢が出来るなんて私は幸せだ。


セギョンもティファニーもクラスが違うため、授業は別々になる。お互い、会うには休憩時間か授業終了後しかない。授業が終わったら、ティファニーに会いに行くか。


と、思ったら、ティファニーから着信。


(Good morning. Are you up?  おはよう、起きてる?)


(Yes, I am up. I eat a lunch. うん、起きてるよ。お弁当食べてる。)


(Oh? I eat a lunch now, too. I have slept immediately yesterday. え?わたしも今、食べてるよ。昨日はすぐに寝ちゃった。)


(アイ?あとで行ってもいい?)


(いいよ。あ、あと安全靴、もってきてよ。)


(安全靴? 何でこんな汚い靴を?)


(いいから、必ずよ。)


ティファニーにも私の靴磨きを見せてやろうではないか。そう思うと、ワクワクしてくる。



お弁当も食べ終わり、ティファニーがくるまでに準備。 


(An AI, good morning. I brought shoes アイ、おはよう。靴、持ってきたよ。)


(Thank you very much for your advice. Because I polish it a little ありがとう。ちょっと磨いてあげるから。)


(Do you polish shoes? 靴を磨くの?)


ティファニーは不思議がっている。 ヨシヨシ、早速、磨いてやるぞよ。フフフ・・・



靴を手に取り磨き上げてる姿を見てティファニーは目を丸くしている。


(すごい。アイ、なんでこんなことできる?)


(東京にいるときに教わったの。鏡みたいにピカピカになるよ。)


仕上がった安全靴を見てティファニーは絶叫!


(Great! Great! It is the same as a mirror. I shine. スゴイ!スゴイ!鏡みたいに光ってるよ。)


(How about Tiffany? どう?ティファニー? フフフ・・・)


ティファニーもご満悦だ。 そろそろ授業も始まる時間か・・


(アイ、また終わったら来るから。)


私もティファニーも、自分のクラスに向かった。 


クラスの授業は英会話で受けることになる。会話は理解できなくても辞書や書籍などを駆使し自分自身で身に付けていくしかない。初めは言葉が分からないから苦労するが、日に日に慣れてくると少しづつわかるようになり話せるようにもなってくる。英語は学ぶことも大切だが、実践がなにより上達の近道なのだ。それにこの大学に来て思ったのだけど、英語のフレーズは決まった言葉がよく出てくる。先生やティファニーとの会話でも、同じフレーズが幾度となく出てくる。 益城町に行く前はほとんど話せなかったのに、帰ってきたらなんとなく話せるようにもなってきたしわかるようになった。


これはティファニーも同じだろう。 日本語はほとんど理解できなかったようだけど、やはりこちらに戻ってみると話し方も格段に違う。 この調子なら、一年後は、私も日常会話程度なら話せるようになってるかもしれない。 


そうだ、セギョンの靴も磨かせてもらおうか。 靴磨きも実践なのだ。まだまだ仕上げには時間がかかってるが、幾度も繰り返していけば時間も短縮できるはずだ。授業が終わったらセギョンの部屋にお邪魔しよう。


一日の授業も終了。 生徒たちはそれぞれの自由行動となる。私も自分の部屋に戻り、セギョンの帰りを待った。そろそろ戻ったかな?と思い、扉を開けるとセギョンが立っている。


(あ?今、行こうと思ったのよ。どうしたの?)


(ちょっと月岡さんと話したいなって思って・・・)


やはり、小野さんがいなくて寂しいんだ。今まで一緒に部屋で過ごしてた人が今は入院している。夜になれば一人で過ごすしかない。


私はセギョンに革靴なんかあるか?と聞いた。


(パンプスならあるよ。これなら本革だし。)


(ちょっと貸してくれる?磨いてあげる。)


(え?これを磨くの?)


私は早速、セギョンのパンプスを磨き始めた。 やはり珍しいのかセギョンも食い入るように見ている。


(驚いた・・・月岡さんがこんな技をもってるなんて。)


安全靴に比べるとパンプスは小さいし磨く面積も少ない。1足2足と磨いたせいもあるのか幾分、手の動きも、早くなっている。


(セギョン、どう? 光ってきてるでしょ?)


(うん、すごい。鏡みたい。なんで?)


(これ。丸缶。ポリッシュっていうの。)


(KIWI? パレードグロス?)


時間にして30分ほどだ。ティファニーの安全靴より20分ほど早い。


(わー、ピカピカで光ってる。顔が映るよ。すごい!)


セギョンもご満悦。 


(月岡さん、わたしにも教えて。お願い!)


(いいよ。休みの日にゆっくり教えてあげるから。)


(ありがと!月岡さん好き!!)


靴磨きでこんなにも人を嬉しくさせるなんて、玄さんにも感謝だ。









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