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Der morgige Wind

作者: 陽詩麗

暗い暗い海の底から這いずり上がった気分

実際そうなのかもしれない

泳げない僕は上手に浮かぶことも上手に沈むこともできなくて

ずっと ただただ中途半端に波に揉まれていて

そうして風が舞う光の向こうに出られることを夢見てた


見れば見るほど臆病になって

見ることをやめると 今度は聴覚が鋭くなる

聴けば聴くほど幻滅して

聴くことをやめると 今度は殺意が芽生える

誰にでもなく芽生えて悶えては 最終的に自分に収まる


嗤う声も煽る声も いつしか聴こえなくなって

何も聴こえなくなって

僕の手のひらに残るものは何だろうって

それを探しては探しては 道を踏み外し

人と生きれなくなり 人として生きれなくなり

普通が分からなくなり

普通だと思っていたことが普通ではなくなり

普通ではないと思っていたことが普通になり

そのうち当たり前のことすらできなくなり

人としても生き物としても機能しなくなった


いつしか 僕だけが取り残されていた

誰の手のひらにも残されず この世界の隅っこに

見つからないよう気づかれないように ただただ隅っこに


隅っこから少し顔を出してみると まるで別世界で

僕の知っていたものは何もなかった

だから僕はしんどい身体を起こして また海に這いずり下りるんだ

変わっていく時代も季節も環境も政治も人種も自然も町も他人も

視ることはせず 聴くことはせず

興味のないふりをして疲れてもいない羽根を休め

妖しく光る画面とにらめっこをし ひたすら胃にものを詰め込み

変わらない僕だけが ずっとただただ中途半端に波に揉まれる


弱い僕にとっては 早すぎる世界だった

もっと強くなってから来るべきだった

嗤うのも煽るのも憎むのも妬むのも僻むのも 僕だけで

壊れた僕は ただそれだけしかできなくて

遅れを取り 置いていかれ 忘れ去られ 取り残され

そうなったことを悔やみもせず または否定もせず

全ては神様のせいと投げ打って 僕はまた逃げるのだろうか


なんのために こんなところにいるのだろう

なんのために こんなことをしているのだろう

なんのために 生きているのだろう

なんのために 風が吹くのだろう

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