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勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第1章 学園入学まで
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宴終了

 男達が去ったのを確認すると、エリカはフェイリスの透明状態を元に戻した。


「ふぅ」


 フェイリスはほっとしたのか胸を撫で下ろす。


「エリカ、ありがとう」

「いいのよ。でもフェイリスも大変ね。あの人達、結構しつこいかもしれないわよ」

「ええ!?それは困るよぅ……どうしよう」


 フェイリスは今にも泣きそうな表情でエリカにすがりつく。


「まぁどうせ宴はもうすぐ終わるだろうし、何とかなると思うわ」


 そう言うとエリカはフェイリスに向かって微笑んだ。

 確かに、そろそろ宴も終了の時が近い。皆食事は既に終えていて、今はずっと談笑している状態だ。

 そうして間もなく終了の合図が流れると、皆は帰っていく。騒がしかった会場が、一瞬にして静寂に包まれた。

 俺はこちらの方が落ち着くのでちょうどいい。

 メイド達が後片付けをしている横を通りながら、俺は部屋に戻った。

 

「やっと終わった…」


 俺はベッドにダイブしようとして、風呂へ入っていないことに気づく。

 なので部屋に備え付けられているシャワーを浴びた後、ベッドへダイブした。


「……」


 まだ寝るのには少し早い時間帯だが、俺は妙に眠気を感じていたのですぐに寝ることにする。

 だが、それを阻む者がいた。


「ルイ君、ちょっといいかい」


 勇者だった。手には謎の服を持っている。


「何か用か? 俺はもう今から寝ようと思っていたんだが」

「あぁ、ごめん。でもちょっとだけ話を聞いてくれ」


 そう言うと勇者は一度息を整える。


「君の学園入学についてだけど、明日から入ることに決まったよ」

「え、早くないか?」


 つい数時間程前に決まったのに、もう明日から入るとか。

 尋常じゃない対応の早さだ。


「もう君の服は届いているから、ここに置いておくよ」

「服まで決まってるのか?」

「そりゃ一応学園だからね。

 それも君を討伐するためだけに作られたエリート学園だよ」


 ああそう、エリートね…。

 もう何も言わないでおく。 


「それと、ここからが重要な話なんだけどここの学園はちょっと特殊でね。

 入る前に、君にはまず機械による測定をしてもらうよ」

「測定?」

「うん。と言っても、機械の前でただ立つだけでいい。

 暫くすると、トランプのカードが出てくるから」

「カード?」

「そう。ルイ君。大富豪ってカードゲーム、知ってるかい?」

「ああ……」


 俺の城でも一時期流行ったトランプゲームだ。

 人間界に住み着いた魔族がこっちに戻ってきた時にお土産として買ってきてくれた。

 3が一番弱くてJOKERが一番強い。この単純な要素が人気に火を付けたゲームでもあったな。



「この機械はね、大富豪の要素を一部入れているんだ。

 君にどのカードが出るかはわからないけれどそのカードはとってもいいものでね。魔法や武器を出すときに大いに役立つんだ」

「カードが?」


 一瞬疑いたくなったが、俺はさっきアリサがトランプのJのカードから武器を取り出していたのを思い出した。


「じゃあさっきアリサがカードから武器を取り出していたのは…」

「ん、アリサのをもう見たのかい?それなら話は早い。

 カードの数字が高ければ高いほど、引き出した時の武器や魔法は強い。

 けれど、その分必要とする魔力や精神力も多くなるんだ。

 だから例え自分のカードよりも強いカードを相手から貰ったとしても、使えない場合がほとんどだから気をつけてね」

「へぇ…」


 大富豪と連携したシステムか。中々粋なことを思いつくじゃないか。

 その後、俺は勇者からいくつか学園のシステムについて教えてもらった。

 まずカードの数字関係なくランダムでクラスが分かれているということ、3ヶ月に1度クラス対抗で大会があるということ。そこで順位に応じて王様から様々な褒美がもらえることなど。

 それと、例え相手よりカードの数字が高いからといって必ずしもその人より弱いというわけではないらしい。人によって戦い方、動き方、考え方は異なるため理論上は2のカードを持つ人が3に負けるということもありえなくはないという。よっぽどヘマをしない限り、それはないらしいが。


「一応言っておくと、僕のカードの数字は10。

 一応学園の男子では2番目に数字が高いらしい。アリサとエリカさんはJ(11)、フェイリスは9。最も数字が高いのは、僕達の講師でもあるロイという先生で、K(13)だよ」


 一番高い人でKなのか。というか勇者ですら10?


「A以上の人は今までにいなかったのか?」


 俺がそう言うと、勇者はとんでもない、と首を横に振る。


「Aなんて、多分この世界の何処を探してももしかしたらいないかもしれないよ。

 他の国がどうかは知らないけれど、少なくともこの国で最強はロイ先生だと思う。

 王宮の騎士達は、J以上の精鋭が揃っているけれど、ロイ先生と互角に戦える人は思いつかない。

 だから僕達にとっての最強はロイ先生だよ。

 あの人の強さはまさに次元を1つ超えたといってもいい。

 もし、あの人を超える人が現れたとしたら僕達人間にはもう対抗手段はないだろうね」

「…」


 次元を1つ超えた強さか。

 一度手合わせをしてみたいものだが、今の俺が挑んだところで瞬殺確定だろう。

 ん? ちょっと待て、確か俺も機械の測定をするということは。


「参考までに聞くけど、一般人が測定したとしたら、大体数字で表すとどのぐらいなんだ?」

「そうだね、一般人の平均は大体が3で、たまに4がいるくらいかな。

 僕達の学園の平均はおよそ7.6。つまり、7と8の子が一番多いかな」


 納得しそうになったところで、俺は最後の言葉が気になった。


「世界のどの学園よりも?

 この学園以外にも、その大富豪システムとやらを導入している学園があるってことか?」

「うん。敵国味方国関係なく合計すると全部で400の学園があるよ。僕の国では確か30ぐらいあったんじゃないかな」



 400……。

 そのたくさんの学園のどれもが、魔王(俺)を倒すために日々鍛錬していたのかと思うと、笑いすらこみ上げてくる。何故なら表向きには魔王はもう討伐されたことになっているからな。魔王を倒すために頑張っていた人達は、無駄足を踏んだだけになったというわけだ。

 いや、でも体を鍛えるという意味では無駄足ではなかったのかもしれない。それに、過激派の魔族達が暴れだす可能性も十分にあり得るし。

  

「まあとりあえずこんなところかな」

「1つ腑に落ちないことがある。何故、お前より数値の高い人が勇者じゃなくて、お前が勇者なんだ?」

「それは、数字の高さがそのままその人の実力というわけではないからだよ。

 確かに、秘めた潜在能力は高いかもしれないけど、それを活かすのはものすごく大変なんだ。

 強い力はそれだけ制御するのにも熟練を要する。だから、例えばJという数字を持っていてもうまく力を引き出せないために、実力的には6の人と同等ということもありえるんだ。

 それを鍛えるためには小脳を鍛える必要がある。小脳はそう言った熟練を要する運動を司る器官だからね。

 僕は、王宮の精鋭やロイ先生よりは数字は低い。 

 だけれど、この10という数字の魔力を最大限に引き出せるということで選ばれたんだ」


 はぁ。

 つまり強い武器を持っていてもそれを使いこなせない奴と、そこまで強くない武器だけどその扱いに非常に長けているのとじゃ、後者の方が強いってことか。

 なるほどな。だが……。


「でも、ロイ先生とやらは別なのだろう? 何故そいつに勇者をやらせない」

「うん。それは僕も思ったんだけどね……」


 どうやら勇者にもよくわからないようだった。

 その後、勇者は俺の部屋から去っていく。

 俺は、部屋の明かりを消すと、さっきの話をもう一度考えてみる。


「魔王が学園ね……くく」


 だが、考えているうちにいつの間にか睡魔が来てしまい、それに身を任せているうちに眠っていた。

 

 


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