反撃の狼煙
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「なっ!? どうして貴方たちが……? 私は確かにバイラスに殺されるのを見たはず……」
ネネコは思わず目を丸くし、震える指で3人を指す。
「ああ。俺たちも最初は死んだと思ったよ。だけどな、そこにいる未来のネネコが助けてくれたんだ。ほら、ネネコもさ、思い当たる節はないか?」
「確かに私も殺される直前、視界が眩しくなったかと思ったらこっちに飛ばされましたが……まさか」
ネネコが白ネネコを見る。
白ネネコはまるでその通りと言わんばかりに微笑んだ。
「ルイ様を封印したせいであなたたちが死んでしまっては意味がありませんからね。
特に、ネネコに死なれると私は存在そのものが消滅しますから。
ですから私はあの3人を助け、治療したあとに事情を説明し、穏便派の魔族たちをここに極秘裏に避難させたのです」
そういうことだったのか……。
ここまでお膳立てされておいて、もはや信じないなどとは言ってられないだろう。現に死んだと思われていた3人が生きていたのだから。
「ルイ様。敵はもう人間界への侵攻を始めております。
我々も早く行きましょう」
「ルシエル……。そうだな、俺達も出動するぞ!!」
再会の時を喜ぶのは後でもいいだろう。
今は一刻も時を争う。
そう言うと、俺はゴルゴレイクの蓋を取り外した。
すると、そこから莫大な量の魔力が俺に流れ込んでくる。
「ああああああああああ……!!」
俺はその魔力のあまりの多さに思わず卒倒しそうになるもなんとかこらえ、全ての魔力をうけおえる。まるで、力がみなぎってくるようだ。
今なら、どんな禁止級魔法も乱発したところで魔力が尽きることはないだろう……。
俺の周囲から、黒いオーラが溢れ始めた。
そして同時に、俺の内ポケットに入っているJOKERのカードが薄く光り始める。
どうやら、JOKERが使えるようになったらしい。
俺は心の中でほくそ笑んだ。
「ルイ様……それは……」
「ああ。俺の半永久型ダークオーラだ。並みの魔族なら俺に近寄るだけで死ぬぞ」
これで完全に準備は整った。後は……。
俺は後ろに続く魔族達に向けてこう叫んだ。
「お前達、準備はいいか!これよりはじめるは過激派との徹底抗戦だ。
殺すことをためらった瞬間、棺桶に全身を突っ込むことになるのを覚悟しろよ!」
「オオオオオオオォォォッ!」
魔族特有の野太い声が響き渡る。
人間のような姿をしている者から、完全な化物のような姿をしている魔族まで様々だが、皆俺と志を同じとする良き仲間だ。
その数はざっと見る限り数万はいる。
これだけの数を避難させた白ネネコには頭が上がらない。
(進行する前にまずは……)
俺は、透視の魔法を唱えるとアリサの位置を割り出す。
「皆、少しだけ待っていろ!」
そう言うと、俺は瞬間移動の魔法を使い、一瞬でアリサの元へと行った。
アリサは学園生たちと共に、魔族達と交戦中だった。
「アリサ!」
「な、ル、ルイ!? 何よそのへんなオーラは!」
「そんなことはどうでもいい。皆お前を待っているぞ。向こうのホールに行け!!」
そう言って俺は指差す。
「そうは言ったって、こいつが――――!!」
アリサは近くにいた生徒達とカードの階段の恩恵を使い魔族と戦っていた。その中にはアネットや、コウヤもいる。
コウヤは、俺を見て眉をひそめた。
「ルイ、お前なんだってそんなオーラをまとって……」
「聞いていなかったのか? 俺が魔王だからだ」
「は――――」
その言葉にコウヤは目を丸くし、一瞬隙が現れたところを魔族に魔法弾で攻撃されてしまう。
しかし、俺はコウヤに攻撃が当たる直前、指をクイッ、と曲げ素早く詠唱するとその魔法弾の軌道をそらし、そのままホーミングさせて魔族にぶち当てた。
「油断するな! 一瞬の隙が死をもたらすぞ!」
「ちぃっ!」
コウヤは踏ん張ると、その大きな斧を魔族に向かってぶち当てる。魔族の腕から血しぶきが上がり、コウヤがその返り血を浴びた。
「はぁ、はぁ……」
コウヤの額から大粒の汗が流れ出る。
俺はゆっくりとアリサの元へと近づいた。
アリサは、3人の巨大な魔族に囲まれかなり苦戦しているようだった。
「どけ、アリサ。こいつらは俺が片付ける」
「はぁ!?……なんであんたに命令されなきゃ……。
っ! わ、わかったわ」
俺がすごい形相をしていたためか、アリサが思わずたじろいだ。
俺はゆっくりと、その巨大な魔族達の元へ。
やがて、その魔族が俺に気づくと、表情を凍らせた。
『いいいいぃ……!? ル、ルイ様だぁああああ』
『お、落ち着け! 今のルイ様にもうあの力は残っていないとヴァルグレイド様も言っていた! 案ずることはない!』
『そうだった!』
そう言うと、凍ってた表情から一変、にやりとまるで悪魔のような笑みを浮かべると、アリサを無視してこちらに突っ込んできた。
俺は嘆息し、思わず失笑する。
時間もないので俺はその巨大な魔族達に向けて手を向けるとそのまま握りつぶす動作をし、
「圧縮せよ――――ブラックホール」
そう言った。すると、魔族達のすぐ近くに丸くて黒い空間ができ、それに向かって魔族達が引き寄せられていく。
それは俺が相手にしている魔族だけでなく、アネットや他の学園生たちが相手にしている魔族までも同じだった。
魔族だけを引き寄せる特殊なブラックホール……。まさか使うことになるとは思わなかった。
『おおおおおああああああっっ!?』
その吸い込む強さに耐えられず、次々と魔族達がその空間の中に入っていく。
やがて周囲の魔族全てが吸い込まれたことを確認すると、俺は手を叩いた。
間もなくして、ブラックホールはなくなる。
「ふぅ……」
その様子を、周囲の誰もが信じられてないといった様子で見ていた。
だがしかし、これでもう後戻りはできない。
アリサ達がやってくる。
「あんた、その力……もしかして」
「ああ、戻った。それも一層パワーアップしてな」
「ル、ルイ君!? 私まだ全然状況がつかめないんだけど……」
「お、俺もだ……。気がついたらルイが使って魔法で周囲一帯の魔族が消えてしまったからな……」
今更隠したところで無駄だろう。
俺は、全て打ち明けた。
「今まで騙していたことは謝る。しかし、俺は本当に人間達と争うつもりはなかったんだ」
「……」
コウヤは腕を組み、目を瞑りながら何かを考えているようだった。
「わ、私は信じるよ! だってルイ君は本来なら敵である私を鍛えてくれたんだもの!
それにルイ君がいなかったら、この惨劇はもうとっくの昔に起きてたんだよね?」
「そうよ。実質ルイのおかげで私達はなんとか平穏を保っていられたといっても過言ではないわね」
珍しくアリサまでもが俺を庇ってくれた。
あの不機嫌な様子はいつの間にかなりを潜めている。
恐らく、自己解決できたのだろう。
「なら、私はルイ君を信じる!今も、私達を庇ってくれたんだし……ね、コウヤくん?」
「うーむ……まさかルイが魔王だったとは……。
しかし気づけなかった俺にも問題あるし……」
コウヤは葛藤している様子だった。
無理もない、今まで味方だと思っていた者から実は魔王でしたーなんてことを突然告げられたのだ。
しかし、今は問答をしている場合ではない。
俺はアネットに、
「アネット。コウヤを頼む。
俺は今から、過激派魔族のリーダーを倒してくる」
「ル、ルイ君……。わかった、コウヤくんは私に任せて!
ルイ君、死なないでね」
「当たり前だ、俺を誰だと思っている」
そう言うとアネットから離れて、俺はアリサの元へ。
ダークオーラをいったん引っ込めると、
「アリサ、俺に掴まれ」
「どうして?」
「いいから早く!」
「わ、わかったから大声出さないでよ……」
そう言うと、俺の肩にアリサの手が載せられる。
俺は、アリサと共に瞬間移動でホールへと戻った。
「アリサ!」
「え、リュート達……それに魔族!?」
数万もの魔族の兵を見て、思わずおののくアリサ。
「よし、これで全員揃ったな。では皆、今から過激派狩りと行こうではないか!!」
俺が剣を高く上げ、そう叫ぶと魔族達の野太い声がホール内に響き渡った。
「え、ちょ、な……どういうことよーーーーー!!」
アリサの叫びがもむなしく、俺達は行動を開始した――――




