表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第3章 フェイリス
43/52

勇者の秘密

「おいこら2人共っそれ以上はやりすぎだ!!」


 そう言って俺は2人の間に割り込んだ。

 まさか、ここまでヒートアップするとは…。


「くっ…命拾いしましたね」

「うー…」


 そう言って短剣をしまうネネコと尚も威嚇するフェイリス。

 フェイリスにネネコの服を貸してもらおうと思ったがこの分だと無理そうだな…。

 どうしたものかと悩んでいるところへ、エリカがやってくる。


「3人して何やってるのよ…」

「エリカか。ちょうどいいところに来た。助けてくれ…」


 そうして俺はエリカとフェイリスに簡単な事情を説明する。


「なるほど…。今のネネコさんの服ボロボロだものね。ネネコさん、替えの服はないのよね?」

「ありません。気がついたらこの世界に飛ばされましたので」

「そうよね…。でも、ネネコさんって私より1回り小さいから私の服を着ても大きすぎるだろうし…」


 そう言ってエリカがネネコの方を振り返る際、胸が大きく揺れる。ネネコはその胸を見て、


「そうですね…私が貴女の服を着たとしても大きすぎるでしょうね…」


 揺れる胸を恨めしそうに見ながら、そんなことを呟くネネコ。そんなネネコに気づくことなくエリカはこう言った。


「フェイリスとネネコさんはちょうど同じぐらいの背丈だし、フェイリスの服を借りたらいいんじゃないかしら?」

「俺もそう思う。フェイリス、ネネコに服を貸してやってくれないか?」


 俺がそう言うと、フェイリスは一瞬ためらった後、


「ルイさんの頼みなら……」


 そう言って引き受けてくれた。

 流石にネネコもボロボロの服は替えたかったようで、ここで文句を言ったりすることはなかった。

 このままフェイリスとネネコを行かせてもよかったものの、また喧嘩されるとも限らないので、俺はエリカに2人の付き添いを頼むことにした。

 エリカもこっちに来たのはフェイリスに用事があったかららしいので、快く引き受けてくれた。


「では、ルイ様少しの間失礼します。もし何かあったらすぐにこれでお知らせください」


 そう言われて俺はネネコからガーゴイルの翼を受け取る。

 ネネコは俺と離れるのを名残惜しそうにしながらも、エリカとフェイリスと共に女子寮へと戻っていった。

 ネネコの猫耳と尻尾がもしバレればまずいが、まあネネコなら見つからずに行動することは容易だろう。

 それにもし学園に通うことになれば、猫耳と尻尾を隠せるように服を調整すればいいし。

 俺は先に寮へと戻ることに。



 そうして帰っている途中、俺はさっきのアリサの態度について考えていた。結局ネネコには謝らずに逃げてしまったものの、何故あんなにカリカ


リしてたのか。

 見つけたらぜひ問い詰めたいところだが――。


「ん…?」


 ふと、近くの木に人影が写ったような気がして、俺は目を凝らした。

 暗がりでよく見えないが、誰かがいる。

 俺は少しずつ近づいていくと、そいつは今まさに俺が頭の中で話題にしていた人物だった。


「アリサ」

「わひゃあぁあ!?」


 飛び上がって驚くアリサ。こちらに振り向くと、嘆息した。


「な、なんだあんたか……もう、びっくりさせないでよ」

「いや、まさかそんなに驚くとは思ってなかったからな。

 それで、こんなところで一体何をしてる? まさか、野ションか? それははしたないからやめたほうが――」


 俺がそう言おうとするとアリサに頭を叩かれる。


「そんなわけあるか! 隠れてたのよ、リュートからね」

「いつつ……。思い切り叩きやがって。で、なんで勇者から隠れる必要がある」


 俺は叩かれた頭をさすりながら、少し睨むようにしてアリサを見る。

 アリサは、周囲に誰もいないことを確認すると、


「あいつが謝れ謝れってうるさいからよ」

「お前な…」


 というか勇者にむかってあいつって……。俺も人のこと言えないけど。

 今日のアリサはよっぽど虫の居所が悪いようだな。


「ネネコはもう別に気にしてないからいちいち謝る必要はないが…、今日のお前、なんか変だぞ?

 どうしてそんなにカリカリしてるんだ」

「…っ」


 俺の言葉が図星だったのか、アリサは押し黙る。


「うっさいわね。別になんでもないわよ」


 その表情からしてとてもそうは思えない。

 それぐらい、今のアリサは苛立っているように感じられた。


「なんでもないなら別に勇者から逃げる必要もないだろ」

「それとこれとは別なの!

 …もう、うざいわね、どっか行きなさいよ。リュートに見つかるでしょ」


 その言葉に少しカチンと来たが、俺は抑える。

 やれやれ…取り付く島もないな。

 今のアリサに何を聞いたところでまともな答えは帰ってこないだろう。

 これ以上話しても喧嘩になりそうな気がした俺は、


「嫌な事を先延ばしにするのは、あまり褒められたことではないぞ」


 そう言って、アリサの元を去っていく。

 そのまま寮へと戻ると、自身の部屋へ。


「はぁ~……」


 部屋についたとたん、どっと疲労感に襲われた俺は風呂に入るのも億劫になってそのままベッドに寝転んだ。

 今日は本当に疲れた。

 ヴァルに襲われたのを皮切りに、バイラスとの死闘、そしてフェイリスやネネコとの眷属の誓い…。

 特にバイラスとの戦いに関しては本当に死を覚悟した。しかし俺の魔力を供給したフェイリスがバイラスをなんなく撃破したのは本当に驚きだっ


た。


「……」


 俺はポケットからカードを取り出す。3と書かれたシンプルなカードと陽気なピエロが描かれたJOKER。

 俺は頭の中でイメージを浮かべると、すぐに3のカードから禍々しい剣が出てくる。

 しかしJOKERの方は全く反応がない。

 やっぱだめか……。

 でもこのJOKERって今まで出たことがないんだよな…。あのロイ先生とやらでKらしいし。

 このJOKERを使ったとき、一体何が起こるのか…。


「ふあぁ……」


 その時、俺は猛烈な眠気に襲われる。

 風呂にも入らなければならないのに、体がまるで鉛のように重い。

 次第にまぶたも開かなくなり俺はそのまま意識を沈めていった―――。




















「ルイ様、大丈夫かな……」


 私は、フェイリスとかいう娘から服を授かったあとそのまま女子寮を後にする。

 エリカ…というあの巨乳の人はその娘に話があるということでそのまま残った。少し匂うからと、風呂に入れられた後エリカに色々と服を着せられ遊ばれたせいで、随分と時間がかかってしまった。急がないと…。

 男子寮に着くと、私は自身に気配を悟られないようにする魔法…消去の魔法をかけ、ルイ様の部屋(腐れ勇者の部屋でもある)の前に。

 部屋の扉を数度ノックすると、 


「ルイ様、ネネコです。今、戻りました…」


 そう言ってしばらく待つものの、全く返事がない。

 もう一度、ノックしてみるが結果は同じだった。

 私は扉に耳をつけてみる。


「中から何も聞こえない…?」


 試しに、扉のドアを開けようとすると鍵がかかっていないようで、普通に開いた。

 ゆっくりと中へ入る。


「ルイ様ー、まだ帰ってきて……あっ」


 そこで、私はベッドの上で気持ちよさそうに寝息を立てているルイ様を見つけて、慌てて口を塞いだ。

 どうやらお休みになられているようだ。

 私は起こさないよう、ゆっくりとルイ様の横に立った。そしてルイ様の寝顔を見つめる。

 普段は凛々しくてかっこいいルイ様だが、その寝顔はとても愛らしい。いつまでも見ていたくなる。


「……」


 ルイ様の寝顔を見ているうち、視線はふと唇の方へと吸い寄せられる。

 そっか、私さっきルイ様と……。思い出すだけでニヤケが止まらなくなる。

 腕には、ルイ様の眷属の証である紋章がくっきりと刻まれてある。これで私はもうルイ様のモノになった。

 ただあの娘に先を越されたのだけは本当に恨めしい。ルイ様と最初に誓いを結ぶのは私だとずっと思っていたのに…。あの娘の汚らわしい唇によってルイ様が汚されたかと思うと…思わず耳と尻尾が逆サカだってしまう。


「ルイ様は私のものです…。誰にも渡したりはしません」


 それが例え誰であったとしても髪の毛の一本までくれてやるものですか。


「はぁ~…ったくアリサは……、ん、あれネネコさん」


 そこへ、勇者が帰ってきた。

 せっかくルイ様と2人で過ごせると思ったのにとんだ邪魔者だ。

 私は勇者を思い切り睨みつけると、声を落とせと小さく言った。

 勇者は、ルイ様が寝ているのを見て合点がいったようだ。


「ごめん、ルイ君寝てたんだね」

「そうです。ですからルイ様の睡眠の妨害をするのであれば……」


 私が短剣を鞘から取り出そうとしたところで、勇者は慌てて、


「しないしない! それで、ネネコさんはルイ君の付き添い?」

「当たり前です。私はルイ様の護衛ですから」


 それに、今のルイ様は目の前にいる勇者のせいで力を封印されてしまっている。

 本当なら今すぐにでも斬り捨てたいところだけど、こいつを殺せば封印を解除する手がかりを完全になくしてしまう。

 そしてなにより、ルイ様自身がそれを望んでおられない。

 だから私は渋々こいつを殺していない。命令があれば、すぐにでも殺してやるのに…。

 それに、私がこいつを気に入らない理由はもう1つあった。


「一つ聞きたいのですが」

「何かな?」


 私は目を細め、まるで何かを見定めるかのように勇者を見ながらこう言った。


「貴方………女性ですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ